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恋愛トラウマ持ち令嬢は逆境に負けない 〜婚約者を正ヒロインに奪われましたが、隠し攻略対象に愛されながら真エンドで世界を救います〜  作者: 遠 都衣
第二部 花継ぎの乙女編

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第46話 見張りと首輪付きの身代わりヒロイン



(……とりあえず、見張りと首輪つきだけれど、牢からは出してもらえたわ)


 監視付きでリリーの部屋まで送られてきたチェリエは、ひとまず牢屋から出られたという事実にホッとしていた。

 牢屋に閉じ込められたままでは何もできない。

 それよりは、行動に制限がついていても、外で何かしら情報を得られることにまだ救いがある。

 しかし――。


(これから、どうすればいいのかしら)


 何もせず黙って過ごしていたら、このままリリーの代わりに人柱ひとばしらとして生贄にされてしまう。

 ゲームの最終局面までもう2ヶ月ない。

 花継ぎの乙女が人柱にされるのはその時だ。

 それまでになんとかしなくては、とチェリエは頭を巡らせる。


(サリュート様……、が一番信頼できるけれど……)


 どうしたら、この状況を説明できるのかとチェリエは頭を悩ませる。

 それでなくても、サリュートはリリーのことを普段から『ゴミ』と呼んではばからないのだ。

 そんな相手が、いくら中身がチェリエになったからと言って、おいそれと話を聞いてくれるだろうか?


『は? 自分は実はチェリエです、だって? 寝言は寝てから言った方がいいんじゃないかな?』


 にこやかに――しかし冷ややかに、サリュートから拒絶される未来が想像ができてしまった。


(だったら……、手紙を書いてみる? でも……)


 試しにペンを取ってみたチェリエは、即座にそのアイディアを捨てた。

 不思議なことに、真実を書こうとすると手が震えてしまってまったく文字が書けないのだ。

 関係のないことを書こうとすると、問題なくさらさらかける。

 どうやら、何かしらの制限がかけられているのだろうとチェリエは理解した。

 おそらく口頭で伝えることもできないだろう。

 思い返してみると、入れ替わりが行われたばかりの時、咄嗟に説明しようとすると喉の奥が詰まって声が出なくなった感覚があった。


(……自分で直接的に真実を伝えることはできないということね……)


 最後に見た、サリュートに抱き抱えられていた自分の姿を思い出す。

 あの時の――、驚愕している自分を見つめる、歪んだ笑顔。

 チェリエはその光景を思い返して、はあ、とため息をつく。

 まず間違いなく、自分の体の中に入っているのはリリーだと思って間違いないだろう。


 自分は、まんまとしてやられたのだ。

 リリーは自分と彼女の体を入れ替えることで、花継ぎの乙女として人柱となる役割をチェリエに押し付け、自分はチェリエに成り代わり逃げおおせることを。


(だから最近、あんなに自分の評判を自分で落とすような行動ばかりしていたのね……)


 入れ替わった後のチェリエが立ち回りにくくなるよう、あえて周囲からの評価を落としまくっていたのだ。

 事前に逃亡したのも、このことを見越してのことだったのだろう。

 やり方は悪辣だけれど、悪知恵の働かせ方はさすがすぎる。


 そうして――、ふと気になったチェリエは、机に座ったまま目の前の自分の手を見つめた。


 ――リリーの体に入ったということは。つまり、今は自分が花継ぎの乙女の力を使えるのでは?


 そう思ったチェリエは、がさごそと机の中を漁り、あるものがないかを探した。


(――あった)


 引き出しの奥深くに仕舞い込まれていた、何かの花の種子。

 チェリエはそれを掌の上に一粒取ると、力を行使すべく意識を集中した。


 すると、『ぱああああああああっ――』と手のひらとその中の種子がまばゆく輝き出し、みるみるうちに目が出て蕾ができ、白い花が咲いた。


 ――エーデルワイスだ。


 花言葉は『困難を乗り越える勇気』。

 偶然かもしれないけれど、チェリエはそれで、なんだかこれからのことを頑張れそうな勇気を貰えた。


 同時に。

 声ともつかないごく小さな笑い声が、チェリエの周囲を飛び交う。


(……花の精霊だわ)


 花継ぎの乙女しか感じることのできない、精霊たちの声。

 そして、はっきりとした姿ではないけれど、その存在を感じさせる光。

 それが今、リリーの体に入ったことで感じ取れるようになっているのだ。


 色とりどりの光たちは、チェリエに構ってもらいたそうにまとわりついてはふわふわと周囲を飛び交っている。


 チェリエは、その中の一つに手を差し出し、慈しむように優しく撫でるように手を添えると、その光は一層嬉しそうに大きくなったり小さくなったりして輝いた。


(……かわいい)


 その様子に、チェリエは思わず、ふふっと顔を綻ばせる。

 そうしてふと、とあることにも気づいた。


(これだけ花の精霊たちに好かれているなら。もしかしたら、バッドエンドを回避できるかもしれない)


 原作ゲームでは花の精霊たちの力を借りて人柱になるエンドを回避できたのだ。

 実際にリリーの体に入ってみるまでわからなかったが、これだけ好かれているのなら、今からでもトゥルーエンドに行けるかもしれない。


 そう思ったチェリエは決めた。

 このまま、タイミングを見てサリュートに相談できる隙を伺いながら地道に花継ぎの乙女の務めをこなし、最悪体の入れ替えが元に戻せなかった場合に備えて、トゥルーエンドまでいけるか努力してみようと。


 チェリエは知らなかった。

 いや――、知る由もなかった。

 今、このリリーが精霊に好かれているのは、リリーだからではなく中身がチェリエだからだということを。


 チェリエが、これまでコツコツとリリーの仕事の後始末をしながら花を慈しんできたからこそ、この結果が出ているということを。


 室内で、黙ってチェリエを見張っていた使用人にも見えていた。

 これまでとは人の変わったようなリリーの振る舞い。

 そして、精霊と戯れている姿。


 本来、普通の人間にはみることのできない精霊の姿は今、チェリエがリリーの体に入り、正しく花継ぎの乙女の能力を生かしきれるようになって、顕現けんげんできるようになったのだった。

週末にまとめて投稿しますとかいいながら、

昨日この46話を投稿するの忘れてました!!!!汗!!!!

申し訳ありません!


次は第二部を6月27日(土)に投稿します。

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