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プライベートカウンセラー  作者: Ohtori
第10章「外資系コンサルタント・橘直人(35歳)」
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第5話「理想の未来への第一歩」

都心のホテルラウンジ。シャンデリアの光が柔らかく揺れ、低く流れるピアノの旋律が穏やかな空間を演出している。


香坂美月は、目の前に座る橘直人の表情を観察した。初回のカウンセリングでは、疲れ切った表情を浮かべていた彼だったが、今ではどこか落ち着きがあり、余裕すら感じられる。


「橘さん、今日で一区切りですね。この数回のカウンセリングを通じて、ご自身の変化をどう感じていますか?」


美月が穏やかに問いかけると、直人はゆっくりとコーヒーを口に運び、考えるように視線を落とした。


「そうですね……最初に相談したときは、とにかく仕事に追われるばかりで、自分の時間を持つことなんて考えもしなかった。でも、カウンセリングを通して、仕事とプライベートのバランスを取ることの大切さを学べました。」


「それは大きな変化ですね。」


「ええ。最初は、仕事を優先しすぎていたせいで、趣味もなくて何をすればいいのか分からなかった。でも、フットサルを始めたことで、仕事以外の時間を楽しめるようになりました。」


「それは素晴らしいですね。」


直人は少し微笑みながら続けた。


「それだけじゃなくて、仕事の進め方も変わりました。無駄な時間を削ることで、以前よりも効率よく業務をこなせるようになった気がします。」


美月は頷きながらメモを取り、次の質問を投げかけた。


「では、今後のキャリアについてはどうお考えですか?」


直人は少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。


「……正直、まだ明確な答えは出ていません。でも、以前のように『この働き方しかない』と思い込むことはなくなりました。今は、『自分で選択できる』という感覚があります。」


「それは大きな進歩ですね。今までの直人さんは、『働き方に縛られている』感覚が強かった。でも、今は『自分のライフスタイルに合わせた働き方を選ぶ』という意識が芽生えてきたのではないでしょうか?」


「そうかもしれません。」


直人は少し笑いながら、背もたれに寄りかかった。


「最近、友人と話していて気づいたんですが、僕の周りにはポストコンサルのキャリアを選んだ人が結構いるんです。独立したり、スタートアップに転職したり、投資の道に進んだり……。」


「なるほど。」


「以前は、そういう選択肢は考えもしませんでした。でも、今は少しだけ興味が湧いてきました。『もっと自由な働き方ができるのでは?』と。」


美月は、満足そうに頷いた。


「それは素晴らしい気づきですね。」


「ただ、今すぐに決断するわけではありません。でも、この働き方を続けることだけが正解ではない、ということに気づけたのは大きいです。」


「大切なのは、選択肢を持っていることです。『この道しかない』と思うと、人は不安になります。でも、他にも道があると知るだけで、未来への考え方が変わりますよね。」


「ええ。今はまだ考え始めたばかりですが、いずれは自分なりの働き方を見つけていきたいと思います。」


美月は微笑みながら、封筒を取り出し、テーブルの上に置いた。


「では、最後にカウンセリングの領収書をお渡しします。総額をご確認ください。」


直人は封筒を開き、中の明細を確認した。


カウンセリング料金明細

・第1回(120分):20,000円

・第2回(120分):20,000円

・第3回(120分):20,000円

・第4回(120分):20,000円

・第5回(120分):20,000円

合計:100,000円


直人は少し驚いたように顔を上げた。


「……結構な金額ですね。」


「そうですね。でも、期待していた効果と比べていかがですか?」


美月は真っ直ぐな目で直人を見つめた。


直人はしばらく領収書を見つめた後、小さく笑った。


「うん……十分、価値のある投資だったと思います。もし、これを受けずにいたら、今も仕事だけに縛られて、息苦しいままだったかもしれない。」


「そう言っていただけると嬉しいです。」


「美月さんには、本当に感謝しています。もしまた迷ったら、相談させてもらってもいいですか?」


「もちろんです。橘さんの人生が、より充実したものになるよう、またいつでもお手伝いします。」


直人は頷きながら、最後にコーヒーを一口飲んだ。


「……仕事とプライベートのバランスが取れてきたら、ポストコンサルも考えてみてはいかがですか?」


美月が最後にそう問いかけると、直人は少し驚いた表情を見せた後、ゆっくりと笑った。


「……それも、悪くない選択かもしれませんね。」


夜の街の灯りが、窓の向こうで静かに瞬いていた。

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