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エピローグ
紅い月を見ると思い出す。
彼と出逢った日のことを。
彼と過ごしたあの日々を。
彼を、殺した日のことを。
これは、罪だろうか、罰だろうか。
彼はぼくに呪いをかけてこの世を去った。
永遠に解けることのない、呪いを。
――君は面白いね。
彼はこれを何回言った?
――にこり、
彼はあの作り笑いを何回よこした?
ああ、君は愚かで滑稽、そして、残酷だ。きっと君ほどの死にたがりや、それも他人に殺されたいなんていう他殺願望者はいないだろうね。
ぼくなんかより、君のほうがよっぽど面白かったよ。他人に関わろうとしなかったぼくが、興味を持ったくらいだからね。
今夜は紅い月だ。
あの日の追憶を胸に、ぼくは今日も人を殺す。
(快楽と血を、求めて)




