二年目五月 あなたと過ごす時間
更新頻度を落とすと言ったな。あれは嘘だ。
夏に向けたフラグ立て。
なんか回を重ねる事に小春の料理の腕が上がってってる。
こどもの日の昼下がり。ゴールデンウィークもそろそろ終わりを迎える頃。私たちは二人で、高速道路が何十キロ渋滞、なんてニュースを眺めていた。
「凄いよね、これ。家に帰るまで何時間かかるんだろ?」
「うーん、どうなんじゃろ。五時間とか十時間とかかかるんかねえ?」
「やっぱりそのぐらいはかかるよね、これ。私こんなの巻き込まれたら体調悪くなりそう」
見てるだけでうんざりしてくる。長時間車に乗ってるって凄く嫌。私ちょっと車って酔いやすいからなあ。コンディション整えとかないとだけど、五時間とか十時間になると途中でコンディション悪くなって酔いそう。
「小春でのうてもトイレとかの問題もあるし、しんどいじゃろうねえ」
「そうだね。やっぱりこういう時期は私ちょっと旅行とかしない方がよさそう。下手したら吐いちゃったりしそう」
「車酔いばっかしはねえ。うちも待つんやら混雑やら嫌いなし、出掛けるんなら時期ずらしたいねえ」
「やっぱりそうだよね」
二人で顔を合わせて頷きあっていると、台所からオーブンのタイマーの音がした。
「あ、焼けた」
「おお。待ってました」
「ちょっと作ってくるね」
今日は恭子のリクエストで、シュークリームを手作り。何でも、テレビで見た焼きたてのシュークリームが食べたいとか何とか。全部で三十個。恭子の分が二十個。
とりあえず自分の分二個と恭子の分を十個作って持っていく。焼きたてが良いならクリーム挟むの、なるべく直前の方がいいよね。
「うおお、凄っ」
山盛りのシュークリームを見て彼女は目を輝かせてる。確かに見た目のインパクト凄い。私はちょっと、さすがに多いを通り越して恐ろしいなあって思っちゃうけど。まあ作ったご本人様だし。あれに砂糖とバターと生クリームどれだけぶち込んでるか知ってるし。
「いただきます」
そんな事を知らないからか、それとも摂ったカロリーを使い切る自信があるからか、彼女は何のためらいもなく齧りつく。
「うまっ!」
一言だけ発してからもう一口。
「うまい。そう、そうなんよ、この焼きたてのあったかいシュークリーム食べてみたかったんよ」
「ほんとは冷ましてからクリーム挟むんだけどね」
「なんでなん?」
「味が変わっちゃうのと傷んじゃうから」
「すぐ食べればええんじゃね」
「うん。だからほんと今だけだよ」
「やっぱ小春に頼んで正解じゃったねえ」
言いながらも彼女は二つ、三つと食べ進めていく。早いなあ。私まだ一個目も食べ終わってないのに。
「まあこのぐらいなら。いつでも言ってくれれば何でも作るよ」
「うん、また何か食べたいんとかあったらお願いするよ」
あったかい紅茶を飲みながら、私が一個目を食べ終わる頃、恭子は十個を完食した。
「おかわり」
本当に早いなあ。私の十倍のペースで食べてるや。
「待ってて、今作ってくるから」
「うん。お願い。なんかね、気付いたら消えとったんよ。怪盗にでも盗まれたんかねえ」
思わず私は苦笑いした。物凄いこと言うなあ。
「ちゃんと食べてたけどね」
「まあそうよねえ」
恭子が笑って答える。まあ食べてる時にいちいち個数なんて数えないと思うけど。それにしても早かったもんね。
「とりあえず私の分食べながら待ってて」
「うん、わかった」
台所に行ってすぐにもう十個追加で作る。さすがに二十個あればお腹もいっぱいになるよね?
「お待たせ」
追加で作った分を恭子の前に置く。
「ありがとー」
早速一つ手に取り齧りつく。本当によくそんなに入るなあ。そんなに食べてくれるのは見てて気持ちいいしうれしいけどね。ただちょっと、わんぱく過ぎないかな? ほんと凄い勢い……。
「あ、ほうじゃ小春」
「うん?」
「夏休みさ、旅行行かん?」
「えっ、夏休み?」
「うん。夏休み。広島に。今年は年末年始残るつもりなけえ夏休みぐらいは顔出してこようか思うてね。ほいでよかったら一緒にどうかな思うて」
「うん、そっか。うーん、さすがに即決はできないけど、行けるなら行きたいかなあ」
「そっかそっか。ほいじゃあちょい考えといて」
「わかった」
多分、大学、推薦狙いなんだろうな。それで年末年始は勉強のために。恭子、ずっと前だけ見てるや。
それに比べて私は何なんだろ。何も見てない気がする。縋りつこうとしてるだけで、今も未来もまともに見れてない。
あなたと過ごす時間があんまりにも心地良いから。
私はいつになったら、正しく今を見て、きちんと前を見れるんだろう。




