一年目三月 全部一緒がいい
小春は意外と人の話を聞きません。
今日、というか今まさに、終業式の真っ最中。
もうすぐ一年が終わる。なんか凄くあっという間だった気がする。でもうん、確かに色んなことあったなあ。色々……。そう、色々……。
海に行ったりクリスマスデートしたり、梅雨時期は勝手にみんなで長靴登校始めたり、体育祭ではカラアゲ作ってるだけだったり。あれ、意外と無茶苦茶してる?
だいたい恭子のせいというかおかげというか、そんな気はするけど、まあでも凄い助かったよね。色んなところで助けられてばっかりだったなあ。
来年もおんなじクラスだったらいいなあ。違ったらやだなあ。学校ではそんなに絡みとかないから、別に何かってするわけじゃないけど、でも一緒がいい。別のクラスになったのが切っ掛けで疎遠になったりしたら嫌だし。
ううん、違う。何にもなくても一緒がいい。何でも全部一緒がいい。
まあこればっかりは私がどうしたってどうしようもないんだけどさ。どうやってクラス分け決めてるのかも知らないし。くじでも引くのかな。
落ち込むばっかりだし、あんまり考えないでおこ。
話は何にも聞いてなかったけど、ひとまず終わったみたい。これから教室に帰ってホームルーム。それが終わったらすぐ帰る。優秀な帰宅部員だよね。
うーん、気分晴れないや。こんな日は何か凄く手間のかかる料理でも作ろうかな。お料理してるのが一番気が紛れるし。
何にしよう。お魚がいいかな。お母さんに車出してもらお。
そんなわけで、丸のサワラとメバル買っちゃった。結構大きいやつ。これだけあればもう色々作れちゃう。お刺身に西京焼きに、煮付けにカラアゲに。やっぱり春ならサワラとメバルは食べたいよね。
副菜とかもどうしようかな。春キャベツに新タマネギに菜の花とかもあるし。グリーンピースあるから豆ご飯も作ろ。
うん、色々作っちゃおう。
しばらくしてからふと気付いた。作りすぎた。何人前あるんだろ、これ。
……呼ぼっかな。
『今日うちでご飯食べてくれないかな?』
『作りすぎたん?』
さすがよくわかってること。まあこんなこと、今まで何回もあったし。
『作りすぎた』
『今から行くよ』
『待ってる』
時間はちょっと早いけど、お腹空いてるしもうご飯でもいいかな。よく考えたらお昼ご飯食べてなかったや。お腹空いてるわけだ。
恭子はすぐに来てくれた。メールしてから五分もかかってない。暇だったのかな?
「お待たせ」
「待つどころか本当に早かったよ」
「今日ちょっとお腹空いとって。メニュー何?」
「サワラとメバル」
「最高。手伝うことある?」
「盛っていくから運んで」
「ほいほい」
どんどん盛り付けてどんどん運んでもらう。恭子がいてもちょっとおおいなあ。おかず十種類ぐらいあるや。リメイクできるのは残しといて明日使おうかな。
「ほんまなかなかの量作ったねえ」
なにか言いたそうな顔で見てくる。なんだろ。ああいう顔の時は大抵言わない気がする。詮索まではしないけど。
「時間あったからついね」
「そっかそっか。まあ、うちは有難いけどね。大御馳走じゃねえ。これで全部かな?」
「うん、これでおしまい」
「ほいじゃあ食べようや」
「うん。いただきます」
「いただきます」
うまいうまいと言いながら、恭子は凄い勢いで食べていく。逆に私はどうしても箸の進みが良くない。悩んだって仕方がないことなのに、どうしても気にしちゃって駄目だね。
「どしたん? 食欲ないん?」
「そんなことないんだけどね」
うーん、何もないとかいうのも不自然かな。ちょっとぼかして言ってみようかな。
「まあ学年も上がるしさ。クラスも変わるしさ。なんとなくなんだけどね、ちょっとプレッシャーかなって」
「あー、苦手なもんねえ。そういうん」
頷きながらそう言うと、恭子はバリバリ音を立てて骨煎餅を齧った。
「まあまあ、知っとる顔も何人もおろうし、うちもおるし、そこまで気にせんでええぐらいにしか変わらんとは思うけどねえ」
「え、そうなの?」
「選択科目、文系で家庭科と音楽じゃろ?」
「うん、そうだけど」
「うちもそれにしたけえほぼおんなじクラスになるって聞いとるよ。特に家庭科あんまし人気ないらしいし」
そうだったんだ。何と言うか、自分が恥ずかしくなってくる。何て無駄な悩みだったんだろう。元々無駄な悩みなんだけどさ、最初から。
「そっか、そうなんだね」
「ほいでもまあまだ確定じゃあないらしいけどね。春休み中に教えてもらえるらしいよ」
「じゃあ面談の時とかかな?」
「多分」
面談は面談でちょっと抵抗あるけど。進路とか全然決めれてないし。でもこれに比べたら全然。
まあ食欲ちょっと戻ってきたし食べようかな。
「来年もさ」
ちまちまと食べながら、私は口にする。
「恭子とおんなじクラスがいいな」




