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一年目一月 せめて夢の中で

クリスマスの反動ってわけじゃないけど短め。

恭子がいないと小春はこうなる。

三日会えないとヘラり始めるよ。

『新年あけましておめでとうございます』

 零時零分を過ぎたぐらいに、そのメールを恭子に送信した。彼女のことだからきっとまだ起きてるだろうけど、私はもう眠いし、これだけ送ったら寝ようかな、と思っていた。

『あけましておめでとう。今年も一年宜しくね』

 携帯電話を置く前に、返事が届いた。それかもしかして、ほぼ同時に送ったのかな?

 まあこれは、例年のことなんだけどさ。何となく年明け早々に送りたいから。恭子もそう思ってるのか、新年一番に送られてくる。

『今年も一番乗りじゃねえ』

『一番に送ってるからね。けど初日の出が出るまで明けた感じあんまりしないよね』

『ほうじゃねえ。なんかそんな感じする』

『わかってもらえて嬉しい』

 送ってから私はあくびをした。そろそろ眠い。いつもならとっくに寝てる時間だし。

『まあこういうんは気分ってことでええんでない?』

『そうだね。ところで私そろそろ寝るよ』

『ああ、うちもぼちぼち寝ようかねえ』

『うん、おやすみ』

『おやすみ』

 もう一度大きなあくびをしてから、携帯電話を置いて布団に潜り込んだ。

 気付いた時には朝だった。いつ寝たのかすら覚えていなかった。

 携帯電話を取ると、海をバックに初日の出らしきものと一緒に写っている恭子の写真が届いていた。お正月早々元気だなあ。この海は広島のどこかなのかな。さすがにわからないや。

 一応外を見ると、陽はとっくに昇っていた。時計を見る。少し寝過ぎたみたい。


 その日は朝から帰省して、その日のうちに家に帰った。まあ近いしね。行く時って、一泊しないことも多いし。

 恭子は四日に帰ってくるって聞いてるから、帰ってきたら一緒に初詣にでも行こうかな。

『四日って何時ぐらいに帰ってくるの?』

『多分朝かな。いっつもそんぐらいなし』

『そっか。夜中に移動なんだね』

『そう。寝とる間に家に帰れるんよ。運転してくれるお父さんには悪いけど楽なよ』

 うーん、ちょっと私にはよくわかんない感覚。遠いと色々あるんだなあ、なんて思うしかなかった。

『ほいで四日がどうかしたん?』

『初詣でも行く?』

『ええね。行こうか。ほいじゃったらお願いしたいんじゃけど、四日朝ごはんと昼ごはん作って』

『いいよ』

『助かる。小春のごはんが一番うまい』

「うんうん、そうだよねー」

 声出たや。でもそうだよね。料理の勉強頑張ってるし。

『ありがと』

『ほんと中毒になる。やばいもん入れとらんよね?』

『愛情なら入れてる』

『やばすぎて草』

 なんだこいつ。叩いてやろうか。

『愛情だけで中毒にするとか下手なヤンデレの料理とかよりヤバくない?』

『それは腕の問題だよ。愛情っていうのは例えで、恭子の好みの味付けにしてるから』

『はー、すご。そんなんしとったんじゃ』

 気付いてなかったんだ。そっちの方が凄い。なんて鈍感なんだろ。

『人によって味付け変えたりしてるんだけどね。ちょくちょく私の分あげたりしてるのに気付いてなかったのが凄いよ』

『あー、ほいでなんじゃ。誤差の範囲かと思いよったんよ』

『違うのはわかってたんだ』

『さすがにわかるよ、小春のはちょい薄いし辛うないし臭うないけえね』

 結構しっかり気付いてはいるんだね、調味料とか香辛料とか増やしてるの。

『 あ、そこまでわかってるんだ。なんでそこまでわかってて誤差だと思うのさ』

『そこまでしとると思わんけえよ』

 そういうのって、普通しないのかな?

『それが愛情の正体だよ。だから知らない人には愛情込められないんだよ。好み知らないと何にもできないしね』

『そういうもんなんじゃねえ』

『私はまあそれくらいはするけど、他の人とかってどうなんだろうね』

『うちはしたことない』

 恭子の場合は腕の問題だと思うけどなあ。そこまでできるほどではないというか。まあ恭子は日常的に料理してないしね。

『やっぱりそこまでしないものなのかな? それか自分でやってもらうとか? それなら多いんじゃないかな?』

『あー。お店とかみたいな』

『今度から私も全部自分でやってもらおうかな』

『やめて』

 実に早かった。これもう餌付けされてるんじゃない?  ご飯と引き換えに迫ればいけるんじゃない?

 いや、さすがに馬鹿にし過ぎか。動物じゃあるまいしね。

『多分うちが自分でやるより小春がやる方が美味しいと思うんよ』

 うん、正直私もそう思う。というか恭子が私の使ってる調味料とかみたら困惑すると思う。胡椒だけでも五種類あるし。

『まあ別に手間っていう訳じゃないし、これからもするよ』

『ありがと』

『素直でよろしい』

 食事って偉大だなあ。


 翌日、朝ご飯を作ってて思った。

 いつものことなんだけど、恭子が何日もいないと暇で仕方がなくなる。

 趣味のはずの料理も、一番食べてくれる人がいないと張り合いないし。恭子、最低でも三日に一回は私のご飯食べてるからなあ。一番喜んで食べてくれるのが本当に嬉しい。

 そうじゃないんだよね。単に寂しいだけ。料理がどうなんて、ただの言い訳。

 皆楽しいと思ってるのかな。私、あんまり楽しくないよ。お正月って。恭子いないんだもん。

 ふう、と大きな溜め息を吐く。つまんない。退屈。

 いたらいたで色々考えたり悩んだりすることもおおいけど、いてくれないとそれはそれで困っちゃう。

 ううん、違う。いてくれないとやだ。

 うん、そう。いないとかせいぜい二日ぐらいにしといてもらいたいなあ。寂しいなあ。会いたいなあ。

 仕方ないからメールを送ってみる。本当はせめて電話したいなあ。嫌だね、こういうの。私のダメダメな部分がグイグイ前に出て来ちゃってる。

 恭子だって色々あるだろうし、ずっと暇な訳でもないもんね。

 そんなことわかってても、寂しいものは寂しい。会いたい。恭子がいないとずっと独りぼっちみたい。

 時刻は午後九時。起きててもしょうがないし、もう寝ちゃおうかな。そうだね、寝よ。

 せめて、夢の中で会えますように。

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