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第6話 ラスボスとの邂逅

勝手にラスボスにしないでくれる?

玄関ドアを開ける「ただいまー……」勿論返事なんかない。

ノートパソコンとUSB装置の入ったバッグを自室のパソコンの横に置く


真っ直ぐ帰宅してしまった。晩飯どうしよう。

冷蔵庫を開けてみるが、やっぱりなにもないよねーペットボトルの水さえない。


ニューラル・コネクタは気になるが、生きるためには食い物が必要だ。

少し遠いがなんとかいうファミレスもある。しかし、今この状態は悠長に外食できるような精神状態ではない

コンビニ一択である。


ちょっくら行ってくるか。


コンビニで手あたり次第という訳ではないが、弁当、カップラーメン、パン、おかし、飲み物をカゴいっぱい買ってしまった。

『7320円でーす、お弁当温めますかー?』

「いや、いいです」ちょっと買い過ぎたかな、レジ袋2つは重かった、特にビールが。



知らず急ぎ足になるのも構わず、部屋に戻ってきた。

電子レンジで弁当を温めながら、自宅パソコンの電源を入れる。

NVR OSが起動する。

社外持ち出ししたノートPCの電源も入れる。

こちらは、見慣れたWinOSが立ち上がる。


『ピッピッピッ』

そういえば近頃の電子レンジは『チン』とは言わないそうだ。電子レンジから弁当を取り出した。

パソコンはちょうど起動完了していたので行儀は悪いが、弁当を食べながら、まずノートPCから確認する。

再確認のため、会社でやったようにデモアプリを起動してみる。


やはり、USB装置のLEDが数回明滅し何も動かない。


実はこのデモアプリはLEDを10回明滅するだけのダミープログラムである。

ハワード・木村が逃走時の時間稼ぎにでもなればと思い、本来のデモプログラムの代わりにすり替えたものだった。

しかし、結果的に誰も危険なフルダイブ実験を行うことができなかったのは僥倖である。


「やはり駄目だな、となるとこっちか」

自宅NVR PCのドアアイコンをクリックする。

3Dフィールドの中の涼子さん(中身はMayaさん)をクリックすると、前と同じようにビクッと動いて、チャットエリアに「何か御用でしょうか、マスター」と表示される。


「以前言ってた、有料の拡張部品について教えてほしい」

『承知しました。正式名称は、脳細胞共振的信号発信機。Brain Cell Resonance Signal Generator略してBGeneまたは単にUSB装置と呼ばれています』

う~ん微妙に違っていそう、なんだけど、

「以前、Nコネクタって言ってなかった?」

『はい、BGeneはCPUと大脳の電気磁気的接続を目的としている装置で、ニューラル・コネクタとも呼ばれています』


……つながった コネクタだけに^^


「それはUSBポートに接続するものですか」

『はい、手元にあればこのまま接続してみてください、使用可否を判定します』

『なければ、購入してください、現在の年代、日付であれば購入できるところは……ありません』

なんだ買えないんじゃん。

うち(チュウヤソフト)でもUSB装置単体での販売は計画していないから入手は難しいと思う。


USB装置をノートPCから引っこ抜き自宅NVR PCのUSBポートに差し込んだ。


『USBデバイスを調査します』

装置のLEDも点滅などしないし、なんだかUSB装置本体を調べているのではなく、自分の中にあるドキュメントつまり規格資料か何かを調べているような感じだ。


『わかりました』

『このUSB装置は、ニューラル・コネクタバージョン0.0です。この時代のBGeneはこれしか存在しません』

『基本機能は実現しています。ですが、基本動作しかできません。特に神経保護回路が組み込まれていないため、このままでは脳に障害を引き起こす可能性があります。ホスト側の処理で補う事が推奨されますーー説明を続けますか?』

もちろん。

『基本機能は簡単に言うと、こちらから出力する変調波を高周波に乗せて電磁波として送信する仕組みです。そのときに出力を正弦波形のように変化させ、大脳内の電気信号と強制的に共振させる事で微弱な出力でもコネクトできるようにしています』


榎本課長から簡単に聞いた説明とおおよそ一致しているみたいだ。だが説明によると、そのまま使うと脳に障害を負う可能性があるって、危ないじゃないか。

「じゃあ、これでVR環境にフルダイブできますか?」

『このNVR環境下であれば安全に問題なく実行できます。VRにフルダイブするには、ニューラル・コネクタを接続したままで再起動しドアインしてください』


やった!予想通りの展開にほっと胸をなでおろした。

後は簡単。

以前Mayaから教えてもらったように再起動する。

NVRの再起動はちょっと意外な方法で行う。チャットエリアに『再起動』などと入力するのである。

”など”、と言ったのは、他に、reboot、リブート、リスタートでもいいらしい。

あと意味は教えてくれなかったが、『IPL』という古代の呪文でもイケるらしい。


さてNVRを再起動し、ドアインする。

一瞬チャットエリアが表示され、

『BGeneドライバ Ver3.0 が適用されました』

と表示されすぐ消えた。

と同時に、オレの意識は、七色の光の海にダイブする。その海を突き抜けまぶしい仮想世界に飛び込んだ。


目の前には、涼子さんじゃなかった、Mayaさんが立っていた。

本物の人間のようだ、柔らかそうな体にさわろうと思えば、さわれそう、

というかさわれば怒られそう?


Mayaさんは独り言のように喋りだす。

「時間圧縮周期の同期を検出しました。回線接続できるようです。予想接続可能時間は、12分28.733秒です」


Mayaさんの隣にノイズのような人型が現れる。砂嵐のようなノイズが濃くなっていき、シュンっと固まり一人の人物が腕を組んで立っている。

「ふ~ん、まだ作りかけなのね」


黒髪ロングのMayaサブセットが、てのひらを向け紹介する。


「こちらが、SuperMayaです。わたしの元になったAIです」


なんか人間じゃないね、アニメ顔で銀髪ツインテールのかわいい女の子なんだが、胸はデカいし態度もデカい、おまけに全身黒のゴスロリで背中から小さな銀色の羽が2つ生えている。


  なんだか、

  オレ『コイツ ラスボス ナンジャネ?』


いやだわラスボスだなんて、そんなに煽て(おだて)てくれなくてもいいわよ。

  オレ『バレテラー』

そりゃそうよ同じメモリ内なんだし、はじめまして色男(ハンサム)さん、遠い未来から色々ネタバラシに来たわよ。


煽て(おだて)返しの技かっ!そんなこと言われても嬉しくないぞー

いいから聞きなさいっ!

はい


   ☆     ☆     ☆      


Mayaのところには、「夢」システムというものがあるらしい。

それは過去に起きた事実(ストーリー)をAIが検証や、確認などするためのシステムとして作られたものであるそうだ。


ストーリーは、事件、事変、紛争、災害、技術革新、などパラダイムシフトが起きたときに、

そこに関係する物事、物品などに着目しその関連事項と共に記録される。

その情報は、特殊な圧縮技術で圧縮した記録データとなり、『夢』ログデータと呼ばれるそうだ。


「それでね、見てた夢データが少しというか結構壊れちゃったの。

実は、この今から、大体1000年くらい先では地球がブラックホールのすぐ近くまで来ちゃっててもう落っこちる寸前なの、その影響らしいんだけどね」


なんだか聞いたような気がするが、それも壮大なネタバラシの一つじゃないんですか?


「んで、その残ってた夢データを徹底的に調べて見つけたネットワークアドレスをぜーんぶ辿ってたのよね」

そしたら、ここ(このパソコン)にたどり着いたそうだ。

このパソコンと刺さっているニューラル・コネクタに纏わる(まつわる)多くのものがその夢データの発生元らしい。

「さっきも言ったけど、パラダイムシフトが起きたときに、着目された物品というのが、そこに刺さっているUSB装置、ニューラル・コネクタみたいね」


過去の事実、こちらにすればこれから変化していく現在つまりこれから先の未来だが、

それを記録データとして持ち帰るのが目的だそうだ。持ち帰らなくても、1000年先まで伝わるように保存し保存先が分かるようになっていれば1000年先で回収するので、それでもいいらしいが、かえって難しそうだ。


   ☆     ☆     ☆      


「真面目に聞いてくれたのね(皆さん?)お疲れ様、どうせ過去の誰かのウンチクか戯言よ忘れてくれていいわ」

「あの、じゃあこれからオレどうすれば……」

『やりたい事やって、作りたいもの作って、普通にしてくれたらいいわ、別にあんまり未来からちょっかいを掛けるつもりはないから』


既に普通ではなくなってると思いますがー


SuperMayaを見ていると、なんだか、難しい事を考えなくても、『物語は勝手に回るわ』と言われているような気がする。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


七海:「ところで、フルダイブのVRMMORPGゲームを作りたいんですけど」

SuperMaya:「そう。作れば?」


「えー、面倒見てくれないんですか?」

「甘えんじゃないわよ、どんだけコスト(電気代)かかると思ってんのよ(1000年先で)、こっちのコトバで、コスパわるすぎ」

「そこを何とか!」

「だーかーらー最初に 最新版NVR OSのアプグレ送っといたでしょ!ちょっと重かったかもしれないけど、主にサブセットが」

Mayaサブセット:『私そんなに重くありませんブーブー』

「そのぶーたれてるサブセットがある程度面倒見てくれるわよ、そいつはあたし本体から、いろいろ機能を削ぎ落して、人間並みにいい感じにスペックダウンしたものだから、丁度いいはずよ、

そのコにやりたい事言ってみれば?」


SuperMayaは喋りたいだけ喋ってそそくさと帰っていった。


「ドヤって顔で言ってた割に、あんまりネタバラシしてないんじゃない?いやMayaサブセットはネタなのかな」

何しに来たんだ?

『ログデータのサンプリング状況を確認しに来ました』

なのかなぁ?

Mayaサブセットの調子を見にかなぁ?



次回「温泉回」


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