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第10話 実は格ゲーってよく知らないんだよね

 パルクールが完成した2日後、


「社長、来客ですよ。新山電機の方がお二人お見えです。中西さんという方ですが……」

 受付兼、秘書兼、経理部長兼、監査役兼、社長の妻である中谷政子が少し疲れた顔で伝えに来た。

「ああ、応接に通してくれ」


「初めまして新山の営業担当をしています中西です。こちらは同じく西中と申します」

「初めまして中谷です、本来なら此方から伺うところを御足労頂きまして申し訳ありません」


 オレと榎本課長が応接室に呼ばれた。


「早速ですが、当社が開発した世界で初めてのフルダイブVRゲームをご紹介しましょう」

 全部うちで作ったんだというと、身が縮む思いだが、会社として世に出す事には違いない。

 ノートパソコンを準備し、中西さんの前にセットする。

「パルクールはご存じですか、そうですそうです飛んだり跳ねたりするやつです、ゲームがスタートするとインストラクターが案内しますから、一緒に遊んでみてください、走るのもジャンプも生身の2倍以上できると思います」

「ほう、このままの恰好でよろしいんですか?」

「はいフルダイブVRですので。体は椅子に寄りかかって楽にしておいてください。途中もう無理だと思ったら上を見上げてください、非常口があります。ゲームの内容はモニタに表示されますから、えーと西中さん?が確認してもらっていいですか」


 ではいきますよ、とドアアイコンをクリックする。

 中西さんの瞼が落ち、動きが止まる。

 モニターには、パルクールのスタート画面、今回はドロシーちゃんだ。

『準備はよろしくて?行きますわよ、ハイドーン!』

 ドロシーが走り出す。中西アバターも追いかけて走り出す。

 え、なんで今日はドレスなんだ、動きは良いけど、あーそんなにジャンプするとドロワーズが丸見えだよ。

 中西さんがドアアウトしてきた。

「はぁはぁはぁ、は?はあああああ?」

『今日はちょっとだけサービスしといたわよ、はあと』


 なんか、全体的にだが、段々キャラがお茶目になってきている気がする。

 あとでMayaさんにやり過ぎ注意と言っておくか。


 中西西中さんたちは興奮気味に中谷社長と握手し、是非コンテンツ提供お願いしますと言って帰っていった

 翌日、本決まりの連絡があり一段落、順調だ。


   ☆   ☆   ☆


 近頃みんな格ゲーにハマっている。


 格ゲー、格ゲー言ってるけど、対人格闘技ゲームを本格的に知っている人が開発チームにいなかったりする。


「格ゲー?知ってるぜ、つかやってるぜゲーセンだけど」

 高縞さんがやってるみたいだ。

 でもなーどこまで知っている事やら、テストプレイヤーくらいにでもなればいいのだが。


 あと意外にも話を聞きつけた尾崎2課長が、うちの子が使ってたんですけど良ければ使ってくださいと、Pステと鉄拳のソフトを持ってきてくれた。

 富山さんが、「尾崎課長、ありがとうございます。だけどお子さんのでしょう?いいんですか?」

「いいのよ、受験生にはこんなモノいりません!」

「そ、そうですか……有難くお借りします」


「なにこれーかっこいー」

(リン・シャオユウ / 凌暁雨)の鳳凰の構え、を速攻スケッチする森さん

 そのうち絶対チャイナドレスを着てくるな。


 高縞さんがTGフェス対策室に入り浸るようになった。

 自前でストリートファイターを持ち込んで遊んでいる。

「遊んでいる訳じゃないぞ、森っちが見せて見せてゆーから」


 フェスを1か月後に控え全社挙げての協力体制だ、通常業務も2課の一部を除きストップしている

 高縞さんが、昇龍拳(しょうりゅうけん)とかやってるけど、ただのジャンプ&アッパーになってますよ!ヒザ上げて身体ヒネってください。


 数日後、森さんがヘロヘロになっている。

「格ゲーの背景画できましたよお」

 ラスベガスっぽい夜景のストリート、ごろつきみたいなヤジウマに囲まれてる絵面、

 中国風寺院の庭や石畳の広場や建物、

 もう一つは超高層ビルの屋上、ヘリポートが白ペンキで書いてあったりする。

 ストリートファイターと鉄拳のイメージからだね、どっちも有名。


「うーん森さん、力作だなあ、すごいCGだ、こんな背景世界にフルダイブできるなんてちょっとワクワクするよ」

「とみとみに貰った資料から作ったんだけど、めちゃ細かすぎ、もうだめ」

「格ゲーのNPCこの前送っといたからわたしもう終了ね、ぐだあー」

「お疲れ様」


 次の日、榎本課長から、話があった。

「R-15ですか?」

「そう、フェスには子供も来る。対人暴力シーンの可能性があるとかで、運営からクレームではないが事前に注意が出ている確かにコンシューマーゲームでは露骨な流血シーンとかはないな」

 事前審査ってやっぱりあるんだな、意外に厳しいみたいだ、

 Mayaさんに、エロ、グロ、流血シーンはなしで、と言っておこう。


 なんとか予定していた背景画像とキャラクター画像が揃ったので、ノートパソコンに保存して持って帰る事にした。


 自宅に帰りNVRにドアインする。

「なにやってんの」

「これ、いいでしょう?」

 Mayaさんが、シャオユウのコスプレしていた。

 あんまりやると、鉄拳ファンに怒られるぞ。


「なんか、シャオユウ流行ってんな。じゃMayaさん格ゲーについて色々検索して理解が深まったと思うので、ここに入っているデータで、フルダイブVR格闘ゲームを作ってください。設定集も入ってるから、今日中にね、よろしく!」

 と一息で言って丸投げする。


「えー!AI使いが荒いですよーっ」


 ドアアウトして、Mayaさんがせっせと働いている間に、本当に久しぶりにテレビを点けてごろりと横になる。

 ふっふっふっ、女に働かせてヒモの生活みたいだぜー。


 リビングでゴロゴロしていると、ピンポ~ン

「はーい空いてるよー」

 どうせ

「こんにちわ、来たわよ」

 ほらね

「とみとみ、いらっしゃーい」

「なにゴロゴロしてんのよ」

「うーん、快適なヒモ生活?差し入れは?」

「はあ?ないわよ」

 十三子は、ちょっと荷物を置かせてねといって、上着を脱ぎスポーツウェア姿になると

「ちょっと走ってくるわ」

 と出て行った。


 30分くらいして、NVRパソコンから


【できたー】と聞こえた。

 十三子が、「ただいまー」と帰ってきた。


「どこいってたんだ?」

「多摩川べりをランニング。いいランニングコースね、体を動かすとパルクールとか動きが良くなるのよ、たぶん格ゲーも、脳内でやれるってイメージができてくるのね」

 シャワー借りるわねといって荷物を抱えてバスルームに入っていく。

 なんか近頃の十三子って遠慮がなくなってきてね?

「ま、いいけどさ」


【マスターできてますよっいい加減に来てくださいっ】

 ドアインもしていないのに、Mayaさんに呼ばれた。

 こっちも遠慮ないなー。


次回「狂乱の東京ゲームフェスティバル(前編)」

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