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第33話 竜蛇討伐

今回もお読みいただきありがとうございます!

第33話、いよいよ竜蛇の群れとの戦闘です。カーツを加えた四人の連携に注目してください!

どうぞお楽しみください!

 翌朝、四人でシルヴァンの南の牧草地帯へ向かった。


 竜蛇の初戦だ。


 出発前にカーツへの役割説明を改めて行った。


「カーツさんには、ブルスさんと一緒に前衛をお願いします。竜蛇は素早く、一体一体の攻撃力は高くないですが毒を使ってきます。接近戦でも、絶対に噛まれないように」


「了解だ。毒の対策は?」


 俺は昨夜作っておいた解毒薬を四本渡した。


「念のため、各自一本持っておいてください。噛まれた直後に使えば、神経毒の進行を止められます」


「用意がいいな」


「当然のことですよ」


 カーツがにっと笑った。


   ◇


 牧草地帯に入ると、すぐに気配があった。


 魔力感知で確認すると——五体。草の中に潜んでいる。


「前方の草むらに五体います。左から二、右から三の散開です」


「見えないのによく分かるな」


カーツが低く言った。


「感知スキルです。ブルスさん、カーツさんは正面中央へ。ミレイさんは右側の三体を牽制。俺が左の二体を固定します」


「任せろ」


 ブルスが踏み込んだ。カーツが並走する。


 二人の息が、思った以上に合っていた。


ブルスが右の竜蛇を盾で押さえ、カーツが剣で間合いを取りながら左の竜蛇を捌く。


 俺は左の二体に向けて土縛を発動した。


 草の中から飛び出してきた竜蛇二体の動きが止まる。


「ミレイさん!」


「任せて! 氷槍(こおりやり)!」


 三本の氷の槍が右側の竜蛇を貫いた。


 残る前衛の二体を、ブルスとカーツが各一体ずつ仕留める。


 固定した二体は、俺が雷魔法で仕留めた。


 五体、一分もかからなかった。


「……速い」


カーツが荒い息をつきながら言った。


「アキトの感知があれば、奇襲がほぼ無効化されるな」


「二人の前衛の連携もよかったです。即席にしては十分でした」


ブルスがカーツの肩を叩いた。


「お前、動きが読みやすい。俺に合わせてくれてたか?」


「逆だ。お前に合わせたというより、自然に合った」


 ブルスが少し驚いた顔をして、それから笑った。


「そういう奴と組むのは久しぶりだ」


   ◇


 午後は東の採掘場ルートへ向かった。


 こちらは七体——一か所では今回最大数だ。


 採掘場への狭い山道に竜蛇が群れをなしているため、散開作戦が取りにくい。


「狭い場所での七体か。前衛が押さえられる数に限界があるな」


カーツが状況を確認しながら言った。


「地形を使います。山道の入り口は幅が狭い。そこで一体ずつ引き出して処理する——蛇口戦法です」


「蛇口戦法?」


「俺が命名しました。流れを絞る、ということです」


ミレイが「センスないわね」と笑った。


「機能すれば問題ありません」


 実際、作戦は機能した。


 俺が魔力感知で群れの配置を読みながら、ブルスが入り口で一体ずつ引き出す。

 カーツが補助しながら各個撃破、ミレイが遠距離から援護射撃。


 七体を、三十分かけて順番に処理した。


「綺麗に決まったな」


カーツが感心したように言う。


「アキトの戦術指示がなければ、正面突破で強引にやるところだった」


「正面突破でも勝てると思いますが、被弾リスクが跳ね上がります。毒は怖いので」


「堅実だな」


「アキトはいつもそうよ」とミレイ。「絶対に無駄な被弾をしない」


「俺も見習いたいが……俺は考えるより先に体が動くんだよな」


カーツが苦笑した。


「その反射神経が前衛としての強みですよ」


 カーツが「そうだといいが」と笑った。


   ◇


 シルヴァンに戻り、ギルドに報告すると、担当者が安堵の顔をした。


「二か所、今日中に討伐完了ですか! 残り一か所の北街道も、できれば早めにお願いできますか? 霧の件もあり、北街道が完全に封鎖されかけています」


「明日、向かいます。ただ——北街道の先に、霧の発生源がある可能性があります。竜蛇の後、そちらの調査も行っていいですか?」


 担当者が少し驚いた顔をしながらも、頷いた。


「問題ありません。霧の件も解決していただけるなら、追加報酬を出せます」


「ありがとうございます」


 宿に戻り、四人で夕食を取った。


「明日が本番だな」


ブルスが静かに言った。


「ええ。北街道の竜蛇を片付けたら、山脈の奥へ向かいます。カーツさん、覚悟はいいですか?」


「当然だ。途中で逃げたら男が廃る」


カーツが迷いなく言った。


「何があるか分からない場所ですよ」


「だから面白い。お前みたいに落ち着いてたら俺の速さが要らなくなるかもしれないが、それでも連れていってくれ」


 俺は少し笑った。


「カーツさんの速さ、明日も頼りにしています」


「よし!」


 カーツが力強く頷いた。


 明日——北街道を越え、竜骨山脈の奥へ。


 第二の封印が、待っている。


 俺は静かに、その覚悟を固めた。


   ◇


 夜、カーツが俺に話しかけてきた。


 食堂に残って水を飲んでいると、隣に座った。


「一つ聞いていいか」


「何でしょう」


「お前、竜蛇の件だけじゃなく、山脈の奥に何かある、って最初から分かって来たんだよな?」


 俺は少し考えてから、正直に答えた。


「そうです。個人的な目的があって、竜蛇の依頼はその名目でした」


「だろうと思った。……危険か?」


「正直、分かりません。霧の湖ではうまくいきましたが、今回は未踏の領域が多い」


「そうか」


カーツが少し黙ってから言った。


「俺には詳しく話さなくていい。お前が信頼できる人間だというのは、昇格試験の時から分かってる」


「ありがとうございます」


「ただ——一つだけ言わせてくれ」


カーツが正面を向いたまま言った。


「お前は色々一人で抱えすぎる。顔には出ないが、目に出る」


 俺は少し驚いた。


「……そうですか」


「ブルスもミレイも、お前に引っ張られて動いてる。でもお前自身が、誰かに引っ張ってもらうことって、あるか?」


 俺は答えられなかった。


「別に無理に頼れとは言わない。ただ——俺も今日から仲間だ。荷物が重くなったら、少し分けてくれ」


 カーツが立ち上がり、階段へ向かいながらひらひらと手を振った。


「じゃあ、おやすみ。明日は早いぞ」


 足音が遠ざかった。


 俺は水を一口飲んだ。


 ——一人で抱えすぎる、か。


 自分では気づいていなかった。

 いや、気づいていたのかもしれない。


 でも、誰かに頼ることへの怖さが、まだ残っている。

 追放されてから——一人で何でもやらなければ生き延びられなかった時代の癖が。


 俺はゆっくりと息を吐いた。


 仲間が増えた。


 それは、荷物を分けられる人間が増えた、ということだ。


「……ありがとう、カーツさん」


 誰もいない食堂で、俺はひとり呟いた。


 ランプの炎が揺れ、外では夜風が窓を叩いた。


 明日、北街道へ。


 その先に、竜骨山脈が待っている。


 俺は席を立ち、ゆっくりと階段を上った。


   ◇


 翌朝出発前、ミレイが解毒薬の在庫を確認していた。


「追加で作っておいてよかった。全部で十二本あるわ」


「北街道の竜蛇が八体ですから、念のための備蓄も含めて十分です」


「アキトって、どのくらいのスピードで薬を作れるの?」


「上位回復薬なら一時間半。解毒薬はもっと簡単なので、一本三十分ほどです」


「じゃあ昨夜だけで六時間以上作業したってこと?」


「五本だったので、二時間半ほどです」


「それでも十分に少ない……」


 ミレイが目を丸くした。


「通常の錬金術師なら、一本二時間はかかります。全属性同調で火力と精度が上がったので、時間が短縮できています」


「チートが更にチートになってる」


「褒め言葉として受け取ります」


 ミレイが苦笑した。


カーツが荷物を担ぎながら言った。


「さあ行くか。北街道を越えて、山脈へ」


ブルスが頷いた。


「俺たちの最初の大仕事だ」


「三人じゃなくて四人です」


カーツが笑顔で言った。


「そうだ。四人の最初の大仕事だ」


 四人で宿の扉を開けた。


 シルヴァンの朝は冷たく澄んでいた。


 北の空に、竜骨山脈の頂が朝日を受けて白く輝いていた。


 俺は一歩踏み出した。


 全属性同調が、かすかに反応している。


 近い。


 第二の封印が、もうすぐそこにある。

第33話、お読みいただきありがとうございました!

四人の連携、決まりましたね!

次回第34話、ついに北街道へ——竜骨山脈が迫ります!お楽しみに!

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