表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/77

第32話 シルヴァンの街

今回もお読みいただきありがとうございます!

第32話、いよいよシルヴァンに到着です。竜蛇の情報を集める中で、予想外の人物との再会が待っていました……!

どうぞお楽しみください!

 エルザを出て八日目、シルヴァン(しるゔぁん)の街が見えてきた。


 竜骨山脈の南麓に位置する交易の街で、人口はエルザの倍ほどある。

 山脈からの鉱石と木材を扱う商人が多く、冒険者ギルドも大きいと聞いていた。


「大きい街ね」


ミレイが目を輝かせながら言う。


「エルザより活気がある。露店も多い」


 ブルスが周囲を見回した。


「山の街って感じだな。空気が違う」


 確かに、エルザより気温が低く、空気が澄んでいた。

 北風に乗って、かすかに山の匂いがする。


「まずギルドに顔を出して、依頼の確認と情報収集です。宿はその後に」


「了解」


 三人でシルヴァンの目抜き通りを歩いた。


   ◇


 ギルドは街の中心部にあり、建物はエルザの倍以上の広さだった。

 掲示板には依頼票が所狭しと並んでいる。


 受付に向かうと、担当の若い男性が対応してくれた。


「エルザからの広域依頼で来ました。竜蛇の群れ討伐です」


「ありがとうございます! お待ちしていました。三名様ですね」


 男性が手際よく書類を用意した。


「竜蛇の群れは現在、山脈南麓の街道を三か所で塞いでいます。一週間前から確認されていて、被害が出始めています」


「規模と種類は?」


「一か所あたり五〜八体。山竜蛇(やまりゅうじゃ)と呼ばれる種類で、体長二〜三メートル、毒を持ちます。単体ではBランク下位相当ですが、群れで行動するため厄介です」


「毒の種類は?」


「神経毒です。即死ではありませんが、痺れが二〜三日続きます」


「解毒薬の備蓄はありますか?」


「ギルドに二十本あります。ご持参の場合は追加報酬を出せますが……」


「俺が作れます。素材を分けてもらえれば、追加で作っておきます」


 担当者が少し驚いた顔をした。


「錬金術師の方でしたか。それは助かります。素材はギルドで手配できます」


「では出発前日に受け取りに来ます」


「よろしくお願いします」


 書類を受け取り、宿の紹介もしてもらった。


   ◇


 ギルドを出て、紹介された宿に向かおうとした時——


「アキト?」


 聞き覚えのある声が、後ろから飛んできた。


 俺は足を止めた。


 振り返ると、そこに立っていたのは——


「……カーツさん」


 Bランク昇格試験で同席した、赤毛の冒険者だった。


 カーツが少し驚いた顔で近づいてきた。


「やっぱりアキトか! こんなところで会うとは。お前ら、シルヴァンに何の用で?」


「竜蛇の討伐依頼です。エルザから広域依頼を受けて」


「あー、あの依頼か! 俺も同じだ。受けたのはいいが、一人じゃきつくて情報収集中でな」


カーツが三人を見回した。


「よかったら、一緒に動かないか? 俺一人より三人のパーティーと組んだ方が確実だ」


ブルスがカーツを見た。


「昇格試験ぶりだな」


「ああ。俺はBランクに上がってすぐ、移動依頼でこの辺りに来ることになって。エルザには結局戻れなかった」


ミレイが少し嬉しそうに言った。


「カーツさんも合格したのよね? よかった」


「おかげさまで。あの時は俺、お前らの連携見てかなり刺激になったぞ」


 俺はカーツを見た。


 試験の時から感じていたが、実直で信頼できそうな人物だ。

 腕も、ソロでBランク依頼を受ける程度には確かなはず。


「合流しましょう。情報を共有しながら動いた方がいい」


「助かる!」


 カーツが笑顔になった。


   ◇


 その夜、四人で食堂に集まり、情報を整理した。


カーツが地図を広げる。


「竜蛇の出没地点は三か所。北街道の入り口、東の採掘場へのルート、そして南の牧草地帯」


「一番数が多いのは?」


「北街道だ。ここだけで八体いるという目撃情報がある。しかも最近、行動が活発化していて……」


カーツが少し声を落とした。


「二日前から、北街道の奥から黒い霧が流れてきているという報告もある」


 俺は静かに頷いた。


「その霧——実は旅の途中でも遭遇しました。魔力を吸収する現象です」


「対処できるのか?」


「できます。ただ、竜骨山脈から発生しているとしたら、源を断たないと根本的な解決にならない」


 カーツが少し複雑な顔をした。


「源、というのは?」


 俺はどこまで話すか少し考えてから、必要な部分だけ答えた。


「山脈の奥に、魔力の異常収束点があると思われます。そこが安定すれば、霧は消えるはずです」


「……お前、竜蛇の討伐だけじゃなく、その収束点まで向かうつもりか?」


「そのつもりです」


カーツがしばらく黙って、それから静かに言った。


「……俺も連れていってくれるか」


「危険が増すかもしれません」


「それでも。なんとなく、お前についていったら面白いことが起きる気がする」


ブルスが苦笑した。


「俺もそれで仲間になったんだよなあ」


ミレイが笑う。


「アキトは人を引き寄せる才能があるのよ」


 俺は少し照れながら、カーツに言った。


「……よろしくお願いします、カーツさん」


「こちらこそ!」


 四人になった。


 竜骨山脈への旅が、一人分厚くなった。


   ◇


 宿に引き上げた後、ブルスが俺に話しかけた。


「カーツ、信頼できそうか?」


「昇格試験の時の動きを見た限り、前衛としての腕は確かです。性格も正直な人だと思います」


「四人で動くのは初めてだな」


「ええ。ただ、竜骨山脈の奥は未知の領域が多い。人数が多い方が安全です」


ブルスが頷いた。


「分かった。俺はカーツと前衛を組む。お前とミレイは後方支援で」


「その方が安定しますね」


 ミレイが地図を眺めながら言った。


「竜蛇の三か所、どこから先に片付ける?」


「南の牧草地帯から順番に。北街道は最後に、その後山脈奥へ進む段取りで」


「規模が小さい方から慣らしていくわけね」


「カーツさんとの連携を確認する意味もあります」


 ミレイが「なるほど」と頷いた。


「相変わらず段取りがいいわね、アキトは」


「準備しておかないと、いざという時に動けないので」


 ブルスが苦笑した。


「俺にはその細かさが真似できない」


「ブルスさんは前衛で全部吸収してくれるので、そっちの方が難しいですよ」


「……そう言われると悪くない気分だな」


 三人で少し笑った。


   ◇


 その夜、俺は一人で宿の窓から山脈を眺めた。


 暗闇の中に、竜骨山脈のシルエットが黒く浮かんでいる。


 空気の冷たさが増していた。


 魔力感知を静かに広げてみると——山脈の奥から、微かな引力のようなものを感じた。


 第一の封印を解いた時とは違う。

 もっと強く、もっと切迫した感覚だ。


 ——来い、と言っている気がした。


 俺は手のひらを見た。


 全属性同調のスキルが、かすかに光っている。


 封印が近い。


 急いではいけない。

 でも、迷ってもいけない。


 竜蛇を片付けて、山脈へ踏み込む。


 そこに、何が待っていても——


 俺は静かに息を吐いた。


 四人で、立ち向かう。


 それだけだ。


 山脈の稜線が、星空に黒く刻まれていた。


 夜が深まるにつれ、遠くで風の音がした。


 まるで山脈が、こちらを呼んでいるように。


 俺はランプを吹き消し、静かに目を閉じた。


 明日から、始まる。

第32話、お読みいただきありがとうございました!

まさかの再会——次回第33話で、その関係がさらに動きます!お楽しみに!

ブックマーク・評価いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ