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鍵の異常者-盗屋ラックの哀喪  作者: 轟号剛


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賞金稼ぎ

ルールオブを出て、二十分。


アインは、不意に足を止めた。


「……ここ」


視線の先。


そこには、古びた公園が広がっていた。


「やっぱり、潰されてるね……」


ぽつり、と零す。


どこか寂しげな横顔。


「ここに、私の家があったんだ」


ゆっくりと、公園へ足を踏み入れようとした――その時。


「よぉ」


背後から声がかかる。


「賞金首の男と、脱獄者アイン・キャシー……で間違いねぇな?」


振り返る。


そこにいたのは、男女の二人組。


「賞金稼ぎ、デルタ夫婦よ」


ローラ・デルタが気だるげに笑う。


「明日の飯代のために――大人しく捕まってくれる?」


二人は背中合わせに立ち、指を一本立てる。


どこかふざけた、決めポーズ。


「……テメェら」


アインの空気が変わる。


さっきまでの感傷は、完全に消えた。


「タダで済むと思うなよ」


ぞくり、と。


その場の全員が、本能的に身を震わせる。


(……やべぇな)


ラックは一歩前に出る。


「ここでやるのはマズいだろ」


一般人も通る場所だ。


「場所、変えねぇか?」


アインの前に手を出し、静かに制する。


「あぁ、いいぜ」


男――パナマが帽子を押さえ、笑う。


「乗ってやるよ」


「ついて来い。いい場所を知ってる」


ラックは背を向け、歩き出す。


背後の気配を警戒しながら。


アインも、何も言わずに続いた。


⸻


十分後。


辿り着いたのは、打ち捨てられた学校だった。


黒ずんだ校舎。


雑草に覆われた校庭。


人の気配はない。


「廃校、か……いいねぇ」


「あぁ、ここなら遠慮はいらねぇ」


四人は、校庭の中央で向き合う。


――その瞬間。


バンッ!!


乾いた銃声。


(速ぇ……!)


ラックの思考が追いつくより早く――


弾丸は、アインの額へ。


いつの間にか、パナマの手には“バナナ”。


その先端から、黄色の弾丸が撃ち出されていた。


完全な不意打ち。


だが――


「――ッ」


アインの体が沈む。


紙一重で回避。


その瞳は、確かに弾丸を捉えていた。


次の瞬間。


地面に手をつく。


――四足。


一気に距離を詰める。


(なんだ……!?)


その姿は、すでに人ではなかった。


白い毛並み。


鋭い爪。


耳と、尾。


まるで――


「猫かよ……」


「――猫爪(ビョウソウ)」


アインは跳んだ。


空中で回転しながら、パナマへ叩き込む一撃。


だが――


ぐにゃり、と。


二人の間に、緑の壁。


スライム。


衝撃は吸収され――


「っ!?」


そのまま、弾き返される。


アインの体が、ラックのいた位置へ吹き飛ぶ。


だが――そこに、ラックはいない。


地面に突き刺さった一本の鍵。


それが、天へと伸びていた。


「――っと」


空中。


押し上げられたラックは、その鍵を元の大きさに戻す。


重力に従い、落下。


「伸びろ!」


振り向きざま、鍵を突き出す。


一直線。


鍵が、パナマへと伸びる。


「ちょろいぜ」


キィン!!


パナマは、剣状に変化させたバナナでそれを弾いた。


「だよな」


ラックは軽く笑う。


鍵を引き戻し、着地――


その瞬間。


「――っ!?」


足元に、ぬめる感触。


視線を落とす。


地面一帯を覆う、スライム。


「終わりだぜ」


パナマの声と同時。


銃口が向く。


(マズ――)


バンッ!!


弾丸が放たれる。


「――爪衝、ソウショウ」


衝撃波。


弾丸が、軌道を逸らされる。


「ナイスだ、アイン」


ラックは即座に鍵を地面へ突き刺す。


「オープン」


捻る。


すると――


スライムが、円を描くように裂けた。


足場が開く。


そのまま鍵を伸ばし、後方へ退避。


安全圏へと降り立つ。


「どうする?あいつら、強いよ」


隣にアイン。


四足のまま、低く構えている。


ラックは顎に手を当てる。


「このままじゃジリ貧だ」


一瞬で判断。


「分断する」


「りょーかい」


アインは迷わない。


そのまま外側へ大きく回り――


校舎へと駆ける。


「行かせるか!」


パナマが連射。


だが――


速い。


弾丸はすべて空を切る。


アインはそのまま校舎内へ消えた。


「……どうする?」


ローラが問う。


「二人でこの男をやる?」


パナマは首を振り視線を校舎へ向ける。


「奇襲されたら面倒だ。一人でやれるか?」


「当然」


ローラは笑う。


そのまま、校舎へ。


「乗ってくれたか」


ラックが呟く。


「当然だろ」


パナマが帽子を押さえる。


「男なら、タイマンだ」


その手に――バナナが集まる。


形状変化。


機関銃。


「乱射(ファイヤ)」


次の瞬間。


弾幕。


逃げ場はない。


「オープン」


ラックは鍵で空間を裂く。


黒い裂け目が現れ弾丸が吸い込まれていく。


その隙に――踏み込む。


一気に距離を詰め、鍵を振り下ろす。


「甘い」


パナマのバナナが再び剣へと変形。


「甘蔗剣(バナナソード)」


ガキィン!!


弾かれる。


そして――


剣を持つ反対の手に握られたバナナから弾丸が飛び出す。


「――ッ」


バンッ!!


腹部に直撃。


「ぐっ……!」


血が弾ける。


ラックは即座に後退。


「クローズ」


鍵を、自身の腹に突き刺す。


捻る。


傷口が閉じていき完全ではないが、塞がる。


「サレンダーか?」


パナマが笑う。


銃口を向けたまま。


「バカ言うな」


ラックは笑い返す。


額に汗。


それでも――余裕は崩さない。


「ここからだろ」


(……最悪、アレを使うか)


思考を巡らせる。


そして――


再び、踏み込んだ。


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