30、結ばれる2人。そしてプロジェクトX
「ちょっと疲れたな。座るか?」とレオン様が言ったので近くにあったベンチへ一緒に座った。結構古いベンチのようだがしっかりと手が入っていてペンキでおめかししてあった。赤いベンチって何だかとっても可愛いわ。
レオン様は、座るなり上を向きふぅっと深呼吸するとゆっくりと話し出した。
「なぁ、エリス。俺どうして今日ここへ来たか分かるか?」とレオン様が体をこちらへ向け聞いて来た。
「すいません、・・・・本当に全然わかりません」
「うん、良かったよ。それで」と何となくホッとした表情を見せるレオン様。
「えっ、良かったのですか?」
「あぁ、俺はお前がこの国に行くのを知った時、俺のそばから離れるんだと思った」と言い出した。なぜだろう?どうしてそんな事を言うのか?あの騎士団の試合の時の自信満々の笑顔はどこ行った?
「・・・・エリスの学校の同じクラスにダグラスって居ただろ?」
「ええ、友達ですけど?それが何か?」ん?どうしてここにダグラスの名前が?
「やはり知らなかったんだな。あいつここの国の第3王子だぞ。」
「ーーーーへっ、嘘?」
「嘘じゃないよ。俺、学食でたまたまお前と一緒にランチを取っている姿を見て調べたんだ。王子って分かった時にはびっくりしたぞ。」
「言ってくれたら良かったのに。あーあ、ダグラスに仕事の便宜を図ってもらうんだった」
「そんなこと言うなよ。俺はお前がダグラスの元へ行くんじゃないかと気が気じゃなかった」
「えっ、それはないと思うよ。だって彼は友達だもの」
「エリス、俺は同じ男だから分かるがあいつはお前に惚れてるぞ」
「またまたぁ~。ご冗談を。」と笑ったがレオンは真剣な顔をしてじぃっと私を見つめていた。
「なぁ、エリス聞いて欲しい。俺はもうこんな事考えたくない。卒業したら直ぐに結婚しよう」と言い出した。
エリスはそんなレオンを真剣な目で見つめ返して「いつも思ってたんですが本当に本当に私で良いんでしょうか?私、大してスタイルも良くないですし美しくも無いですよ?社交だってあんまり得意じゃないです」
「はっきり言ってーーーー自分に自信がないんです」と酔っていたのかいつも心に抱えていた心情を吐露した。
でもレオンはそんなエリスの気持ちを吹き飛ばすかの様に
「俺はいつも明るい君が好きだ。どんなに苦しい時も努力を重ね切り抜けて行く姿が好きだ。俺は君と結婚出来ないなら、この先もう誰とも結婚しないよ」とエリスの目を見てはっきり言い切った。
「エリス、好きだ。俺と結婚してくれ。」ともう一度真っ正面から言われた。
この時エリスは何故かとても冷静だった。時間がゆっくりと流れていてスローモーションのよう、レオン様の瞳がライトアップされた公園の光に反射して凄く綺麗。キラキラしてまるでビー玉みたい。
あぁ、私はこんなにも、もうこの人に囚われていたんだ。
もう自分の気持ちに気が付いてしまった。「はい、私も好きです。一緒になって下さい。」と返事をした瞬間、強く肩を抱かれ口づけをされた。
口づけは徐々に深くなりお互いがひと時も離れがたいと言う気持ちが溢れ出ていた。
その夜、エリスの宿泊先のホテルで2人はとうとう結ばれた。
◇◇◇◇◇◇
ここで話は遡り、エリスとレオンが婚約した直後。まだエリザベス王女がいた頃だ。
「ステラちゃん、そこは立体刺繍の方がいいんじゃないの?」
「いやいや、ここはシンプルにステッチを重ねましょう。」
ここはこの国の虎の穴。通称「刺繍の会」
この会の最高顧問は、すでに隠居された上皇妃。
会員約10名からなるこの会は、この国の公爵家夫人、侯爵家夫人、元宰相夫人などそうそうたる顔ぶれだ。
今回は最高顧問から招集がかかり、久しぶりに集められた。名目は極秘任務の為だ。
「我々が神の領域と称えていたアンナ様のお嬢さんがいよいよ結婚よ。皆さんその時が来たわ。」と上皇妃がメンバーに招集をかけたのだ。
「図案はこれよ!」と会員の目の前にどーんと大きなパネルが出された。
おぉ~。と歓声があがった。「今回はステラちゃんの発案でパターンを起こしたのよ。久しぶりね。本当に腕が鳴るわ。どこに出しても誰に見せても恥ずかしくないウエディングドレスを作るわよ!!」ここで上皇妃の使い込まれた右手が大きく突き上げられた。
「さぁ皆様、布も糸もお金に糸目は付けないわ。存分にここから持って帰ってちょうだい。足りなかったら私にどんどん言いなさい。」
ここにこの国の最強の女性達による
「エリスちゃんのウエディングドレスを作ろう委員会(仮)」が爆誕したのだった。
・・・・尚、ステラに与えられた影の極秘任務はエリスを絶対に太らせない事だった。




