マオの大冒険
どうもルシオです
ルシオとして第二の人生を始めて色々あったけど
俺も父になりました
自分ではまだまだ若いつもり、というか実際まだまだ若いのだけれど
マヤとの間に生まれ、早いものでもう4歳になった男の子マオと
シシルとの間に生まれもうすぐ3歳になる女の子シオン
そしてサラとの間にできた、生まれたばかりの男の子ジルオラ
若くして三人の子供を授かれた
誰もが羨む美人妻三人と、可愛い可愛い我が子達に囲まれて
毎日が充実していて、毎日が楽しくてしょうがない
ルシオとしての年齢はまだ20とちょっと
やり直しの力があったから体感時間ではもっと経っているが
第二の人生が始まってから今まで、それはそれは濃い時間だったと思う
もっとも今ではそれも思い出話になるのだけど
死神の気まぐれで最後にもう一度だけチャンスを貰えた俺に、あとどれだけの時間が残っているのかはわからない
死神が言っていたように、もう一度100年間の時間を与えてもらえたのか
もしくはそこから過去に経験した7回のContinue回数×10年分を引いた30歳までしか生きられないのか
はたまたすでにタイムリミットはもう目前なのか
だが人間いつまで生きられるかなんてわからないものだ
どれだけ健康に気をつけていても病気もすれば事故にも巻き込まれる
やり直しの力があった頃なら事故くらい回避できただろうが
力を失った今ではそうもいかない
なら生きていられる今を精一杯生きていくしかない
とまあ辛気臭い話はこの辺にしておいて
子供達は毎日すくすくと成長してくれている
シオンもとっくにハイハイを卒業して一人で歩き回り、屋敷内を探検していて
マオなんかは既に英才教育が始まっているし
ジルオラも日に日に大きくなっている
マオとシオン二人とも物心が付き始めたのか、ジルオラが産まれたことでお兄ちゃんとお姉ちゃんとしての自覚が生まれたようで、急にしっかりしてきたように思う
そこでマヤ達とも相談した結果
マオにはじめてのおつかいの任務を与えることになった
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「それじゃぁマオ、この書類をウィルに届けるのと、このメモに書いてある食材を買って来てくれるか?」
「はい!パパ」
マオへのミッションは二つ
『お買い物だけだと簡単じゃない?』というマヤの意見があったが、買い物以外のお使いが思いつかなかったので
特に意味のないウィルへの届け物を追加することにした
なので『書類を届けろ』と言ってもこの書類に意味はない、ウィルにも事情を説明済みで今日マオが行くことは知っている
マオは俺からお使いを頼まれて、背筋をピンと伸ばして右手を挙げている
(張り切ってるマオ可愛いなぁ。カメラが無いのが本当に残念だ・・・)
この世界には写真を撮るという技術がない
カメラのような機械も無ければ似たような魔道具も無い
なので自分で作ってやろうかと思っているのだが
カメラの原理をいまいち理解できていないので魔道具の発明に苦労しているところだ
光魔法を使えるのでその応用でできないかと模索中なのだけど
出来る事ならマオ達がまだ小さいうちに完成させたいのだが、完成はいつになる事やら
「気をつけるのよマオ」
「はい!ママ」
「知らない人に付いて行ったりしたら駄目ですよ?」
「はい!シシルママ」
「頑張って。マオ君ならきっと出来ますから」
「はい!サラママ」
「いってあっしゃい」
「シーちゃん、ジル君、行ってきます」
皆に返事をした後、シオンとジルオラに手を振ってマオは出て行った
「さてと・・・」
「それじゃ後はよろしくね、ルシオ」
「ああ。マオの雄姿を目に焼き付けてくるよ」
いくら世界が平和になったと言っても、人間同士の小さな小競り合いや事件はどうしても起こってしまうものだ
そんなことに巻き込まれないとも言い切れないし
それだけじゃなくマオみたいな可愛い子供が一人で歩いていると誘拐されないわけがない
アリスだって一度誘拐されかけたのだから
やり直しの力を失い心配性になった俺が
そんな状況でマオを一人っきりにさせるわけがなかった
だがマオの成長の為にも試練は必要だとも思う
なのでバレないように陰から見守ることにした
光魔法を使って光学迷彩を施し
マオにバレないように後を追いかけた
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姿を見えなくしているのでマオのすぐ後ろをついて歩いた
マオは俺に気付く様子もない
足音にさえ気をつけていれば問題ないだろう
ウィルの家にはマオを連れて何度も遊びに行ったことがあるし
買い物もマヤと一緒に何度も行っている
お金のやり取りもマヤが何度か練習させているようなので
今回のお使いミッションはハッキリ言ってマオには簡単だろう
実際マオは緊張する様子もなく
真っ直ぐ第一の目的地であるウィルの家へと足を進めていた
「あら、マオ君一人かい?」
「うん。おつかい」
「一人でかい?凄いねえ」
「えへへ」
近所に住む奥さんがマオに声を掛けてきた
マヤ達とよく井戸端会議している奥さんで俺も何度か顔を合わせている
「気をつけてね」
「うん。ばいばい」
邪魔をしちゃ悪いと思ってくれたのか、おしゃべり好きの奥さんはあっさりマオを見送った
マオも気をとられず、挨拶すると再び歩き出す
(マオはあんまり人見知りもしないんだな)
マオは頭が良く、教えたことをどんどん吸収していくし
本当に4歳とは思えないくらいしっかりしている
(俺と同じ転生者じゃないよな?)
なんてことをふと思う
だが赤ん坊の頃は夜泣きもしていたし
教えてもいないことを知っているようなこともない
単純に賢い子というだけだろう
(手がかからないのは嬉しいことだけど、ちょっと物足りなさもあるな)
アリシアとディルクも子供の頃の俺に同じような気持ちを抱いていたのだろうか?
そうこうしているうちにマオはあっという間にウィルの住む借家へと到着した
「ウィ~ル~!いる~?」
玄関をバシバシ叩きながら大きな声でウィルを呼ぶマオ
「はいは~い。お?マオ一人で来たの?」
「うん。はいこれ、パパから」
「ありがとう!偉いねマオ」
「ウィル、おしごとはおやすみ?」
「そうだよ。パパも今日お休みでしょ?」
「うん」
赤ん坊の頃から知っているからかウィルとはまるで友達のように喋っている
前世で俺が子供の頃は、父親の仕事仲間が家に来た時なんか顔も会わせたくなかった程だ
父親の知り合いなんて自分にとってはただの知らないおじさんだから
だが人懐っこい人間というのは誰からも愛されるもので
マオのそういう所はマヤに似ている
「上がっていく?お菓子あるよ?」
「ううん、いい」
「そう?まだお使いがあるの?」
「うん。つぎはおかいもの」
「そっか。頑張ってね」
「うん。ばいばい」
お菓子という誘惑にも負けずマオはすぐに次のミッションへと移る
(うちの子偉い)
「親バカ」(ボソッ)
「うるせえ」(ボソッ)
光魔法で姿を見えなくしていても魔力を感知されたのかウィルには近くに居ることがバレているようだ
一言だけ言葉を交わしマオの後を追いかけた
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その後マオは寄り道もせず我が家行きつけのお店へとやって来た
買い物の内容は今晩マオにご褒美の為に振舞う予定のお肉
「いらっしゃい!あれ?坊や確かルシオさんとこの・・」
「マオ」
「マオ君か、一人でお使いかい?」
「うん、これください」
「あいよ」
マオはメモに書いてある物を難なく購入してみせた
(やっぱりマオには簡単すぎたかな?)
ウィルの言うように親バカだという自覚はあるが
それでもマオは天才だと思う
年の割にしっかりしているし
「はいこれ!サービス」
「いいの!?」
「お使い頑張ってるマオ君にご褒美だよ」
「ありがとう!」
肉屋の店主はマオに串焼きを手渡した
(あ~あ~あんなに嬉しそうに、可愛いなぁ)
マオだけでなく子供達が嬉しそうにしているとついつい顔が緩んでしまう
(ウィルの誘いは断ったのに串焼きはちゃんと貰うのか)
人からの好意は笑顔で受け取る方が施す側も気持ちがいい
だが他に目的がある状況でまで施しを受けていると本来の目的を見失いかねない
まだお使いが残っている状況だからウィルからの誘いは断り
串焼き程度なら帰り道で歩きながら食べられるので喜んで受け取ったのか
もっともマオがそこまで計算しているとは思えないが
天性の物だとしたら将来大物になるかもしれない
買い物を済ませたマオは家へと向けて真っ直ぐ歩き出す
「おいし~」
帰り道、串焼きを一口頬張り笑顔のマオ
そこに不穏な影が近づいた
「ウウゥゥ・・・」
路地から野良犬が顔を出しマオを見て威嚇している
「あ、わんわん」
痩せた野良犬はマオを、というよりマオが手にしている串焼きを狙っているようだ
腹を空かせているところにいい匂いのする肉が現れたら仕方ないだろう
すぐに野良犬はマオへと飛び掛かってきた
「わっ!?」
しかし俺がマオを魔法障壁で包むように野良犬から守った
都合が良い事にマオは飛び掛かって来た野良犬にビックリして目を瞑っている
その間に野良犬を風魔法で元居た路地へと怪我しない程度に吹き飛ばした
「キャン!・・・・ウウゥ」
野良犬は立ち上がり、相変わらずマオを見て威嚇しているが
訳も分からず吹き飛ばされたことに警戒してかその場から動かない
「・・・・」
マオはそんな野良犬の様子をチラリと見た後、俺の方を見た
「・・・パパ?」
(っ!?)
バレたと思いドキッとした
しかし俺とマオの視線は合っていない
マオは俺の居る方を見ながら首を傾げている
姿は見えていないはずだ
試しにゆっくりと移動してみてもマオの視線は変わることはなく
相変わらず俺が元居た場所を怪しそうに見ている
俺が魔法障壁と風魔法を使った時の魔力を感知したのだろうか?
(やだ、うちの子天才かも)
『パパ?』と口にしたという事は、先程のウィルと同じように“俺”の魔力を認識しているということだ
マオに魔法を見せることはよくあるが、俺が4歳の時は自分以外の魔力を感知することなんてできなかった
これから訓練を続けるとどれほどの実力者になるのか楽しみだ
(それはそれとして、いつまでも俺を探してないで目の前の問題に目を向けろ~)
いくら周りを見ても俺の姿が無いのでマオは諦めたようだ
そして相変わらず静かに威嚇を続けている野良犬の方へと視線を戻した
お買い物程度マオには朝飯前だった
だが買い物よりは難易度の高い問題が目の前に現れた
この問題をマオがどう対処するのか俺の好奇心をくすぐる
勿論先程のように野良犬が飛び掛かってきたら俺が退治するつもりだが
(さて、どうする?マオ)
「ウウゥゥ・・・」
「おなかすいてるの?」
「ウウゥ」
「・・・はい、これあげる」
威嚇してくる野良犬にあまり怯えた様子もなく
マオは自分が持っている串焼きを野良犬へと差し出した
やはりお腹が空いているだけだったのか、野良犬は差し出された串焼きに勢いよくかぶりついた
(おお、偉い・・・でも)
串焼きを食べた野良犬は餌をくれたマオへ威嚇するのを止めた
しかしまだ足りないのか今度はマオが持っているお肉の入った袋へと鼻を近づけてくる
「あ!こっちはだめだよ!」
中途半端な施しはかえって逆効果になってしまう事もある
「だめ!」
「ハッハッ」
「わっ!?」
マオは野良犬に押されて尻餅をついてしまった
マオはまだ4歳
立てば野良犬の方が全然大きいので当然だ
野良犬の方はさっきまでと違って尻尾を振っているので既に敵意は無いのだろうが
人通りもある道だが、傍から見れば犬とじゃれ合う子供といった微笑ましい状況に見えるのか助けに入る人は居ない
「フンフン」
「う~・・・」
野良犬はマオから無理矢理お肉を奪い取ることまではしないが
食欲を抑えられないのかマオが大事に抱えるお肉の入った袋へ鼻を押し付けて臭いを嗅いでいる
「・・・・ちょっとだけだよ?」
「フンフン」
「まって!」
「ワンッ!」
元々飼い犬だったのか涎を垂らしながらもちゃんと待っている
(へぇ~、意外と賢いな)
首輪もしていないので捨てられたのかもしれないが
野良犬だとしても元々賢い犬なのだろう
尻尾が千切れそうな程激しく振っている様子が先程とのギャップもあり可笑しい
マオは先程買ったお肉の一切れを野良犬へと差し出した
一切れと言ってもマオの小さな手よりは全然大きなサイズで、それを差し出すことで買ったお肉の2割ほどが無くなることになる
我が家御用達の良いお店の良いお肉なので野良犬に分けてやるのはもったいない気もするが
まぁそれはいいだろう
マオの成長を見られた方が何十倍も価値がある
「もうおなかいっぱいでしょ?じゃあね」
(さて、この後マオはどうするのかな?)
マオはお肉を袋に戻して速足で逃げるように家へと歩き出した
しかしお肉を食べ終わった野良犬がピッタリマオの横にくっついてくる
「もうだめ!おにくはあげないよ」
「ヘッヘッ」
野良犬はお腹いっぱいになったのか舌を出し満足気な表情でマオの隣を歩いている
まるで盲導犬を思わせるような、訓練された犬のようにピッタリと真横に付いて
「ついてきちゃだめだよ!」
野良犬はもうお肉を狙っている訳では無く
単純にマオに懐き、離れたくない様子だ
(やっぱこうなったか~)
動物だって学習する
餌を与えてくれる人間の事は覚えてしまう
それが人間に一番近い動物である犬ならば尚更だ
マオは優しいからか乱暴に追い払ったりはせず
困った顔で何度も『付いてきちゃダメ!』と言いながら
あっという間に家へと到着してしまった
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「む~・・・」
「ヘッヘッ」
マオは家のすぐ近くで座り込み途方に暮れている
その隣で先程の野良犬もお行儀良くお座りしていた
そしてその反対側には姿を消した俺も座っている
マオが家に到着して、でも付いてきた野良犬のせいで中に入れず
家から少し離れた場所に座り込んでから30分は経っただろうか
おそらくマオは今この犬をどうするかで葛藤しているのだろう
俺が家から出てきたふりをして『その犬どうした?』と助け船を出してもいいのだが
マオが一人でどういう決断をするのかが見たいのでもう少し様子を見るつもりだ
「おまえおうちにかえらないの?」
「ヘッヘッ」
「おうちがないの?」
「ヘッヘッ」
「・・・・」
「ワン!ヘッヘッ」
「あはっ、くすぐったいよ」
(家族がまた増えるな)
「パパたちおこるかな・・・」
「クゥーン・・」
(怒らないから勇気を出してみな)
「おにくもへっちゃったし・・・」
「ワゥ?」
「おまえがぼくのおにくもたべちゃうし・・・」
「ヘッヘッ」
「わかってるの?」
マオが犬の顔の横の皮を掴んでグリグリしてもどこ吹く風
犬はすっかりマオの事を信頼しているようだ
「あはは、ぶさいく」
「ワンッ!」
「・・・よし!」
(さてと)
意を決したのかマオが立ち上がったので
先に家の中へと入った
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「・・・ただいま」
「おかえりマオ!・・・って、どしたのその犬?」
俺は先回りして中に入りはしたが、皆に事情を説明する時間は無かったので
出迎えたマヤが犬を見て驚いている
「あらあら」
「野良犬・・ですか?」
シシルもサラも犬を見て少し驚きながら、事情を説明して欲しそうに俺を見る
「おかえりマオ。お使いはできたのか?」
「・・・・」
「ん?何があったのかちゃんと説明してくれないと皆わからないぞ?」
「えっと・・・」
まだまだ言葉を知らないマオなりに今日起こった出来事をゆっくり説明してくれた
買い物はちゃんとできたけど、わんちゃんにお肉を分けてしまった事、そして家までついて来てしまった事
誤魔化そうとせずにあった事をありのまま説明してくれた
「そうか・・・で?その犬をどうしたいんだ?」
「かっちゃだめ?パパ?」
「犬を飼うとなると散歩とかお世話が大変だぞ?」
「ぼくやる、ちゃんとやるから」
俺の答えはとっくに決まっている
だが家主が俺だからといって俺が勝手に決めていい事ではない
「だってさ」
妻たちの方を見た
「アタシはいいわよ?」
「私も構いません」
「異論はありません」
「わんちゃん!」
「シオンも良いみたいですよ旦那様」
シオンも乗り気なようだ
「じゃあ名前を決めないとな。マオがつけてやれよ?」
「うん!」
「その前にちゃんと洗っておかないと、ほらおいで」
「ワンッ」
「ぼくもいく!」
「あら、結構賢いのね。ルシオにももう懐いてるみたいだし」
「ずっと俺の臭いがしてただろうからな」
「パパ?」
「なんでもないお風呂行こう」
「うん!」
我が子もすくすく成長し
新たに家族も増え
これからもっと賑やかになりそうだ




