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 サラの幸せ 其の二


-サラ-


マヤ様とルシオ様の衝撃発言から早三ヵ月が経った


あの日を境に私とルシオ様の距離が少しずつ変わっている

と言っても劇的な変化はなく、小さな変化が少しずつ増えて行った程度だ


どうやらルシオ様も手探り状態な様子

「やり直せないからどうしても慎重になっちゃうんだ」と本人である私に笑いながら話していた


そういう点がまず一つ目の変化

なんでも私に話してくれるようになった


ルシオ様は基本私だけでなく家族に弱みを見せない

ルシオ様に弱みなどあるのかという疑問もあるが、ルシオ様とて一人の人間だ

悩みや苦手な事もあるだろう

辛い時、誰かに寄り添いたくなることもあるだろう

だがそれを見せない

それは親友であるウィルフレッド君相手でも滅多に見せないそうだ


そんなルシオ様の弱い所を見ることができるのは妻であるマヤ様とシシル様だけの特権だった

それを私にも少しずつだが見せてくれるようになってきている

今までは主人という立場だったため私の前では弱音を吐くつもりはなかったそうだ


とは言えグラシエールの一件以来世界はとても平和で

ルシオ様のこぼす弱音はただの愚痴のようなものでしかないのだけど

でも私にとっては、何でも一人で解決できると思っていたルシオ様が些細なことでも相談してくれることが嬉しかった


今まで主人と従者という関係だった故にあった二人の間の見えない壁

それが無くなっていくことが寂しくもあり、嬉しくもある

ルシオ様との距離が近くなった気がするからだ



そして近くなったのは心の距離だけではない

物理的な距離も近くなった


今まで私の立ち位置はルシオ様の斜め後ろだった

基本主人の前には立たず、あくまでルシオ様の邪魔にならない位置で

それでいていつでもお守りできるよう離れすぎない位置が私の立ち位置だ


それは何年も続けてきた距離感で、最早癖のようなもの

だがその距離感をルシオ様が縮めてくる


私がルシオ様を拒絶する訳にはいかず、徐々に距離は近くなり、今では隣に立つことが多くなっていた

まだ慣れないが、決して嫌なわけではない

寧ろルシオ様との距離が近くなったことを喜んでいる自分がいる




でも私なんかではルシオ様に釣り合わない

ルシオ様が私なんかを妻にするのはあってはならないことだ

だからいくら嬉しくてもルシオ様の思いは拒絶しなければならない


それなのにルシオ様は宣言通り私との距離を詰めてくる

少しずつでも確実に、心と体の距離が近くなる


ルシオ様の弱い所を見つける度

ルシオ様に触れられる度

私の心は昔のように高鳴っていた


その度に抑え込んでいる感情が溢れそうになる




(やっぱりちゃんと断らなければ、はっきりと・・・例えルシオ様にお仕えできなくなるとしても)


このままでは私が私でいられなくなる

そんな気がして


私は汚れている、だからルシオ様の気持ちに応える訳にはいかない


「ルシオ様、お話が御座います」

「・・・・わかった」


自分の部屋でルシオ様と二人きり

ルシオ様の寝室ではマヤ様もいるので私の部屋で話をすることになった


「お気持ちはとても嬉しいのですが・・・やはり私はルシオ様と結婚する訳にはいきません」

「・・・理由を聞かせてもらえるか?」

「・・・・・・怖いんです。何度も申し上げているように私は今がとても幸せです、ルシオ様に仕えルシオ様の為に生きている今が。初めは恩返しの為にお仕えしたのに、恩を返すどころか相変わらずルシオ様は私に色々な物を与えてくれて・・・それが嬉しくて、ルシオ様の為に何かをしているはずが、それが同時に自分の為にもなっていることに気が付いて・・・私は今の生活が大好きなのです、今の生活が壊れるのが恐ろしいのです・・・」

「その壊れた先にある生活が今より幸せかもしれなくてもか?」

「私は臆病なので、変わることが恐ろしいのです。それに・・・」

「・・・・それに?」

「ルシオ様も御存じの通り・・・私はセルドロに汚されています、何度も何度も。そんな女がルシオ様と釣り合うわけも御座いません。傷物はルシオ様にはふさわしくありません」

「・・・・」


言葉に偽りはない

私は今の生活が心底気に入っている

ルシオ様にお仕えするようになってから毎日が楽しくてしょうがない

だからそれを壊したくなかった

例え壊した先の未来が今より幸せだったとしても

私には今以上の幸せなんて想像ができなかった

だってそれくらい今の生活が幸せだから


それにセルドロに汚されたことも

ルシオ様には天真爛漫なマヤ様や清廉潔白なシシル様のような方達がふさわしい


でもそれを口にした途端ルシオ様の表情は険しい物に変わった


「・・・確かサラがセルドロをぶん殴った日に言った気がするんだけど」

「・・・・」


勿論覚えている

あの日ルシオ様は私に『汚れてなんていない』と仰ってくれ

そして優しく手を握ってくれた

それだけでどれだけ救われたか


でも事実、私は何度もセルドロに抱かれてしまっている


「当然覚えております。ルシオ様の言葉で救われました。ですが私が汚れてしまったことは事実・・」

「ならさ・・・その汚れてしまっているサラを好きになった俺は何なんだ?汚い物を俺は好きになってしまったのか?間違っているのは俺の方なのか?」

「あ・・・いえ・・・」

「俺だって怖いよ、今の俺にはやり直すことはできないし・・・俺とサラの関係が壊れたら元に戻す事なんてできないかもしれない、そうなったらサラはまた俺の前から居なくなってしまうかもしれない・・・そしたら今度はもう、やり直して先回りすることもできない・・・・・・もし結婚してくれたとしても、サラのトラウマを抉ってしまうことになるかもしれない・・・」

「ルシオ様・・・」


私のトラウマをルシオ様もちゃんと考えてくれている

結婚するという事はルシオ様と“そういう事”をするということ

セルドロに無理矢理されたことを

当然ルシオ様はセルドロのように乱暴にはしないだろう

だが行為自体は同じものだ


「でもこれだけはハッキリ言っておく。サラは汚れてなんかいない。何度だって言うぞ」


私の手を取り、真っ直ぐ私を見つめながらルシオ様はそう言う


ルシオ様に見つめられると

触れられると胸が高鳴る


私なんかでもいいのかと期待してしまう


「やめてください・・・」

「やめない。サラは・・」

「私だって我慢しているんです!」

「汚れてなんて・・・へ?」


ルシオ様に触れられ見つめられ

ドキドキしてつい本音を零してしまった


「あ・・・」

「我慢?」

「いえ・・その・・・」


するとルシオ様は悪戯を思いついた子供のように笑みを浮かべた


顔が熱い

きっと今私の顔は真っ赤になっているだろう

恥ずかしすぎてルシオ様の方を向けない


「我慢なんてしなくていいんだぞ?」

「い、今のは・・・その」

「サラ、こっち見て」

「無理です!」


ルシオ様の手を振りほどこうともがいても、ルシオ様は手を離してくれない

でも決して私が痛がるほどの力は入れてない

私が本気で振りほどこうとしていないからだ

きっとルシオ様にもバレている


「俺はサラが好きだ。サラが欲しい。サラを抱きたい。サラとの子供が欲しい・・・これからもずっと俺の傍に居て欲しい・・・・・・でもそれ以上に、サラに幸せになってほしい」

「・・・・」

「どうするのがサラは一番幸せになれる?教えてくれ」


この数ヵ月で忠誠心だと思っていた感情に自分でも疑問を持つようになっていた

いや、もうハッキリ認めよう


私はルシオ様の事が好きだ

勿論好きなのはずっと好きだった

ただ忠誠心だと偽り抑えつけていた感情に素直になろう

勿論忠誠心もあるけれど

私のルシオ様に対する感情は色々な物が混ざっている

ただハッキリしていることは私はルシオ様が大好きだということ

それだけは出会ってからずっと変わっていない


「私は・・・」


相変わらず顔は熱く、真っ赤だが

ちゃんと私の気持ちを伝えよう、正直な私の気持ちを


意を決してルシオ様を見た


その瞬間ルシオ様に唇を塞がれた


ビックリして体が硬直したが、それも一瞬

すぐにルシオ様に体を委ねられた


「・・・・教えて?どうしたらもっとサラを幸せにできる?」


長い長い口づけを交わし終わる頃には私の頭は蕩けてしまったのかもう何も考えられない状態だった

だからだろうか

私の口からは本心が素直に出てきてくれた


「私もルシオ様が好きです、愛しています」

「うん」

「だからもっと私を幸せにしてください」

「うん」


もう一度長い口づけが始まった


そして口づけを交わしたままルシオ様に抱っこされベッドへと運ばれる




信じられない

夢を見ているようだ


でもルシオ様に服を脱がされ始めた時に一気に正気に戻り

怖くなって目を閉じた


「サラ、俺を見ろ」

「ルシオ様?」


目を開き、言われるがままルシオ様を見る


「今目の前に居るのは俺だ、他の誰でもない。ちゃんと俺を見てくれ。そんで・・・本当に嫌だったら言ってくれ?」


ルシオ様は優しくそう仰ってくれる

それだけで安心できた


「いえ、もう大丈夫です」

「そうか?」

「あ、いえ、その・・・」

「ん?」

「もう一度・・・キスしてください」

「わかった」


ルシオ様が恐ろしいのではない

ただトラウマだから反射的に恐ろしいと感じてしまうだけ

相手がルシオ様ならきっと大丈夫


ルシオ様に身を委ね

幸せな夜が始まった


____

__

_



「ね~ね~、どうだった?サラ?」

「お前な!シシルの時もそうだったけど少しは遠慮しろよ!」

「い~じゃん気になるんだもの」

「悪いサラ・・・マヤのことは無視していいから」

「ふふっ。いえ、構いません。少しだけでしたら後でお話しいたしますマヤ様」


朝目覚めると真横にルシオ様が居るという幸せな経験をした後

二人で食堂へ降りると早速マヤ様が声を掛けて来た


「もう『様』はいらないわよサラ。あなたもルシオの妻なんだから」

「私の事もこれからは『シシル』とお呼びくださいね、サラ」

「う・・・・精進いたします」

「な~に、すぐ慣れるわよ」

「呼べるようになるまで何度でも練習してもらいますからね」

「は、はい・・・」


マヤ様とシシル様は邪魔者であるはずの私を歓迎してくれる

本当にこの二人は凄い、心から尊敬できる



変わることがあれだけ怖かったのに

喉元を過ぎれば熱さを忘れるというが

知ってしまえば今度は手放すことが怖くなる



マヤ様は凄い

これを失う恐怖を味わっておきながら、シシル様を受け入れ、そして私まで受け入れてくれる


「マヤ様は凄いですね・・・」

「な~に?」

「ね?凄いですよねマヤは」

「はい」


シシル様だけが私の気持ちを分かってくれた






人間という生き物は本当に欲張りだ


知ってしまえばもう元には戻れない


今までも十分幸せだった

それは本当だ


でもまだまだルシオ様は私を幸せにしてくれる

それはきっと今よりももっともっと


私の幸せのピークはまだ先の話だろう


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