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Save! Load! Continue?  作者: とっしぃ
最後の戦い
286/300

286 戦いの結末


気が付くといつもの見慣れた光景

自分の家の食卓を囲む風景が飛び込んできた


隣にはマヤが座り、向かいにはシシルが、斜め後ろにはサラが待機している


「・・・・・」


あっけない最後を迎え、もう二度と皆に会えないかもしれないとも考えた

でもちゃんと今、俺の周りには大切な家族が居る


「・・・よかった」

「ん?何?ルシオ」

「何でもない」

「あれ?どうしたのルシオ?なんか雰囲気変わったような?」

「何でもないよ」

「うん?・・・」


薄れていた感情でもはっきりとわかる程俺は今喜んでいる


だがいつまでものんびりはしていられない


(・・・・やっぱりか、SaveもLoadもできなくなってる)


今まで少し意識をするだけで出ていたSave画面とLoad画面

それがどれだけ意識を集中しても出てこない


やはり死神の言うようにこれが最後で

もう二度とオプションの力には頼れないようだ


(いや、それは別にいいんだ。俺が普通の人間に戻っただけ、それはいいんだけど・・・)


オプションの力を失った今の状態でグラシエールにどう立ち向かえばいいのだろうか


(でもやるしか・・・ないんだよな?)


何か方法はないか頭を巡らすが、今まで散々考えることを抑えつけてきた反動か頭がなかなか働かない

それでも結局できることは限られていた


(・・・・そういえば、俺が望むなら国の一つくらいなら見逃してやってもいいとか言ってたような)


「ルシオ?」


(なら母さん達はこの家に連れて来ておいて・・・いや、むしろ大切な人だけローリスに集めた方がいいか?王都みたいな大きな国をグラシエールが見逃すとも思えないし)


「ていっ!」

「ん?」


考え事をしていると隣に座るマヤがデコピンをしてきた


「何?」

「何?って・・・ずっと声かけてたのに」

「ああ、ごめん・・・何?」

「ルシオ、どうしちゃったの?」

「何が?」

「なんか・・・突然人形みたいに表情が無くなったというか・・・」

「ああ・・・」


見回すとマヤだけでなく皆が心配そうに俺を見ている


(これが最後だから、全部説明しておかないといけないのか・・・)


「どうしようか・・・そうだな・・・これから皆は、各々大事な人を連れてローリスに避難してもらいたい。ウィルやリリー達にも声を掛けておいて、あと・・・」

「ちょ、ちょっと待って!急にどういうこと?」

「マヤ達は知ってるけど、俺の『やり直しの力』を使ってもどうしても勝てない相手がいるんだ」

「「「え・・・」」」

「「「???」」」


俺のオプションの力を知っているマヤ達は素直に驚き

マルクやアリスのような何も知らない者は頭に「?」を浮かべている


「どうにかできないかとずっと足掻いてたんだけど、それもどうやら限界みたいで・・・これが最後なんだ」

「最後って・・・」

「俺にはもうやり直す力は無い、そんな状態で今までどうにもできなかった相手をどうにかしないといけないんだ」

「「「・・・・」」」

「だから皆には何処かへ避難していてほしい」

「ルシオはどうするのよ!?」

「できるだけ時間を稼いでみる。でも、多分もう戻って来れないと思うんだ」

「「「!?」」」


グラシエールと交渉するにしても、足止めするために戦うとしても

おそらくもう俺はグラシエールの傍を離れるわけにはいかない

そうなれば皆と会う事も叶わなくなる


「なんでそんな大事な事をそんな淡々と言えるの?」

「・・・・ごめん」

「・・・・・」


もう会えなくなるといった内容を俺が表情も変えずに話すことに違和感を感じたのか

マヤは心配そうな泣きそうな顔で問いかけてくる

だがそれにも理由があると気付いたのか、俺の腕を掴みながら下を向き小さく震えていた


「ごめん・・・でも俺にとっては最後にこうして皆に会えたことだけでも嬉しいんだ」

「最後だなんて言わないでよ」

「そうだな・・・俺も最後にするつもりなんかないよ。でも途方もない回数挑んで、それでも駄目だったんだ。最後だからって上手くいくとは思えない」

「それってルシオが何とかしなくちゃいけない事なの?」

「別に俺じゃなくてもいいんだ、でも多分・・・俺にしかできない」

「・・・・私に何か手伝えることって」

「ない、何処か安全な所で居てくれることが一番助かる」

「・・・・・」

「・・・・・テラ、メリアムに伝言を頼みたい」

「は、はい。なんなりと」

「リオーシスは半壊して転移魔法陣も使えない、陸路を使ってリオーシスを目指し転移魔法陣を繋ぎ直せ。俺はグラシエールを足止めするために単独で行動する。それと同時に全世界に『なるべく一つの国に固まらず小さな集落を造って人を分散させるように』と拡散してくれ。王都に居ればメリアムも危ない・・・と」

「・・・・・それは、一体どういう?」

「言葉通りだ、リオーシスは今国の半分が消滅している。ああ、心配しなくてもテラの家族は無事だった」

「え、あの・・・」

「各々準備しておけ。すぐにどうにかなる訳じゃないだろうが、あんまり時間を稼げるとも限らない」


俺がグラシエールと対峙すれば俺がオプションを無くしたこともすぐにばれるだろう

そうすればグラシエールが強行手段に出る可能性もある

そうなれば時間稼ぎも難しいかもしれない


それでも俺にはもう『グラシエールを殺す』という選択しか思い浮かばなかった


「じゃあ俺は行くよ」

「待って!」

「・・・ごめんマヤ、名前考える暇、なかった」

「・・・・・」


マヤくらいの力なら簡単に振り解ける

俺がマヤの手を優しく振り解くと、マヤはもう縋りついてはこなかった


「旦那様・・・」

「・・・・・エルダ、シシルを頼む」

「・・・は、はい」


シシルも何か言いたそうに席を立ったが結局言葉を掛けてくることはなかった


「私もお供いたします」

「・・・・足手まといだ」

「それでも、引けません」

「・・・・」

「死ぬときはルシオ様の御傍で死なせてください」

「・・・・」

「『最後に笑って死ねるような人生を歩め』って言ったのはあなたじゃない!死に場所くらい自分で決めます!」

「・・・・そうだったな、好きにしろ」

「はい」


サラを幸せにするって言いだしたのは俺だ

その責任は取らなければいけないというか、邪魔だけはしたくない


「マルク、アリス。皆を頼んだ」

「「・・・うん」」


マルクとアリスの頭を撫で別れを済ませる

二人とも突然の展開についていけないのかずっとおどおどしていた


「それじゃ・・・」

「ルシオ、大丈夫だよね?」

「・・・・」

「アタシずっと待ってるから」

「・・・・あ」


俺が小さく『あ』と漏らすと皆が俺を見た


「そういえば・・・死神が『今度はきっと大丈夫』って言ってたな・・・」

「死神!?」

「でもあいつクラウスみたいにいい加減なんだよな・・・」

「そ、そう・・死神ってそんななんだ・・・」

「皆も死んだら会うかもな。もし俺が帰って来なかったらその時文句言ってくれ」


そういえば死神がそんなことを言っていた

何が大丈夫なのかさっぱり分からないが

死神が『グラシエールを終わらせてくれ』と頼んできたのだから何か有利な展開を用意してくれているのかもしれない

そう考えるとほんの少しだけ気が楽になった


「それじゃ行ってくる」


サラの手を取り外に瞬間移動する


そして上空へ高く上がり、グラシエールの元へと瞬間移動を繰り返した





あっという間にグラシエールの居る塔へと転移してきた


「・・・・・」

「どうした?」

「い、いえ・・・流石ルシオ様です・・・」


(何がだ?)


千里眼を駆使した長距離の瞬間移動に驚いているのか


「サラはここで待っててくれ」

「いえ、私もお供します」

「・・・好きにしろ」


(どうせサラは結界の中に入ることはできないんだし・・・)


さっさと塔の中へと入ろうとした


「此処は一体何処なのでしょうか?」

「タナトスの北の端だ」

「道理で、少し冷えますね」

「そうか?」

「ええ・・・この上に先ほど話していたグラシエールという者がいるのですか?」

「ああ・・・・・・・・ああ?」

「はい?」


いつまで経ってもサラの声が離れない

もうとっくに塔の中に入っているというのに


「あれ?」

「はい?」

「結界は?」

「何のことでしょう?」

「・・・・・」


結界に阻まれついてこれないと思っていたが

ちゃんとサラは俺の斜め後ろをついて来ている


(外の結界が無くなってる?)


不思議に思い塔の上の方の魔力を探っても何も感じない


(グラシエールの魔力を感じない?)


俺の魔力探知の腕が鈍ったのか

それとも


「サラ、急ぐぞ!」

「はい!」


サラを連れ駆け足で最上階を目指した



____

__

_




最上階の扉の前

この先にグラシエールはいる


(やっぱり、ここまできても魔力を感じない?)


扉を開けるとグラシエールが居た

だがいつものように椅子に座り頬杖をついた体勢ではなく

苦しそうに床に這いつくばっていた


「・・・・」

「・・・う・・・ぐぅ」

「・・・・なんで?」

「き・・さま・・・・何を・・した?」

「俺は何にもしてねえよ・・・・・俺の心を読めばそれくらいわかるだろ?」

「はぁ・・・あぁ・・・」

「おい、自慢の魔力はどうした?強化魔法も使えなくなったのか?」

「・・・・ぐ、ぐる・・じ・・い」

「お前・・・お前もオプションの力を失ったのか?」


グラシエールは俺と同じ転生者で

俺と同じで三つのオプションを死神から受け取っている


俺がオプションを失ったように

グラシエールもまたオプションを失ったのだろうか?


だから俺の心を読むこともできず

魔力を使って強化魔法を施せなくなり、体を動かすこともできなくなったというのか

見た目相応に、年相応に貧弱な体は

生命維持する力も残っていなさそうだった


「憐れだな、グラシエール・・・魔力が無ければ動くこともできないか?それだけ長い時を生きていながら、自分自身の魔力はこれっぽっちも無かったっていうのか?」

「・・あ・・・・たす・・け」

「1300年も生きておいて、オプションが無くなったら何にもできないのかよ?」

「かえ・・せ・・・・わ・・だしの・・・ちか・・ら」

「・・・・怨むなら死神を怨めよ、俺は何もしてねえよ」

「あ・・ああ・・・」

「俺は結局お前に何もできなかったんだよ!傷一つ付ける事すら、お前に触れる事すらできなかったんだ!それだっていうのに・・・」

「まだ・・・しに・・だく・ない・・・」

「・・・・わかった」

「い・・やだ・・・」

「もう十分生きただろう・・・」

「・・わた・・じは・まだ・・・」

「俺が終わらせてやるよ」

「せかい・・に・・・ふくしゅう・・を・・」

「・・・・さようなら、グラシエール」


俺が使ったのはこれまでグラシエールに散々使ってきたような強力な魔法ではない

初級の火魔法『ファイヤーボール』だ

それもほとんど魔力を籠める必要もない


小さな火球は枯れた老人を瞬く間に焼き尽くし

殆ど骨も残さなかった




「・・・ルシオ様?」

「・・・なんだ?」

「大丈夫ですか?」

「・・・・・ああ、あっけない最後に気が抜けただけだ」

「そう・・ですか」


目の前で灰になったグラシエールを

その現実を未だに信じられない


あれだけ辛い思いをして頭を悩ませ、人間性すら捨てる覚悟で立ち向かった

そんな苦労をさせられた相手が

最終的には殆ど自滅で終わる事になった


(結局、最後まで死神に振り回されただけだったな・・・)


「サラ」

「なんでしょう?」

「・・・・帰ろう」

「はい」


ここに居る理由はもうない



____

__

_



別れを済ませたすぐ後に何事もなかったように帰って来た俺を見て

それでもマヤ達は俺の帰りを喜んでくれた


普通なら『さっきのは何だったのよ!?』とキレられてもおかしくないのに




幸い帰りが早かったので避難の準備は何もできていなかった


グラシエールを殺せた安心からかさっきからもの凄く眠い


テラにはリオーシスの事のみ伝言を頼み、避難の件は無かったことにしてもらった


マヤ達が説明して欲しそうにしているが

とにかく眠い




皆への説明はまた明日にするとしてひとまず眠りたい

それだけ告げて俺はベッドに飛び込んだ


グラシエールと出会ってからは一睡もしていない


グラシエールと出会ってからの正確な時間は分からないが

かなりの時が経っているはずだ


俺は数年ぶりに眠りにつくことができた


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