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白と黒のライアー  作者: 井上笑子


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第7話

 その日の昼食後、図書室へ向かっていた私は、洗い場の女中たちの騒ぎ声を聞いて、足を止めた。

 彼女たちは、ちょうど今朝の騒動のことを話していて、その噂話に私も興味を惹かれた。


「本当なの?それ」

「本当だって話よ。私も驚いたわ、あのお嬢様がねえ」

「そうよね、今朝はいつもの癇癪をしないで、淡々と叱責したなんて信じられないわ」

「怒られた侍女様たちは、今も罰則を受けてるんですって」

「さすがに死にかけてる時に油売られたら、誰でも怒るわよ」

「でもさ、あのお嬢様もしっかりしていらしたみたいで嬉しかったわよね?」

「確かに。怠けてるやつをキッパリ叱責してくれるのは、スカッとするわよね」

「あはは、お嬢様もさすがお貴族さまなのねえ」


 ん?

 何だか、記憶の中で見た陰口の様子と違うような…。

 てっきり、「そこまで怒ることでもないわよね」とか、「死にかけてるなんて、大袈裟な」とか、悪い方に言われていると思ったのに。

 …アンネちゃんのときと違う気がするのは、気のせい?

 まあ、アンネちゃんは癇癪を起こしてばかりで、うまく叱責することはできなかったから、そのせいよね。

 私は噂話に知らぬふりをして、東棟の図書室に向かった。


 子どもが、うまく叱るなんて出来るはずない。

 そんな当たり前のことを考えない、アンネちゃんの周りに呆れながら。

 

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