第3章 その13 策謀・1
エルフの長老が予想した通り、翌朝早くからレオン達からの面会が要請された。
目立たぬように、レオン一人が長老達の集う建物に通された。
「何やら要求がある様だが」
値踏みするように睨めつけながら、護衛役のリーファンが口火を切った。
「いくつかの許可と、それに伴う物資の援助が欲しい」
レオンの方も、悪びれる事なく話を進める。
「うちのパーティーにはドワーフの鍛冶師がいる。まぁ、腕の立つ鍛冶師なので、冒険者たちの武器の整備をさせたい」
「それは問題なかろう」
長老も軽く頷く。
「鍛冶場と、消耗する資材を提供してほしい」
「こちらへの見返りは?」
長老ではなく、護衛役が切り込む。
「剣でも斧でも、材料さえ有れば無償で一つ打って進呈すると言っている」
「では剣鉈を一本。見本は後で用意しよう」
長老は簡単に頷いた。が、これは「どれ程の腕前か見てやろう」という意図の現れだ。
「もう一つは、薬草を提供してほしい。冒険者用の薬をこちらで調薬するのに使いたい」
「そちらも問題なかろう」
長老は微かに頷いた。
「何がどれだけ必要かは、当人たちから聞いてもらって調整してもらいたい」
「何人か、こちらから人を付けよう」
「助かる」
レオンは軽く礼を言う。
「こちらからの頼み事はこれくらいだ。そちらからは何か無いか?」
「こちらはまだ、話がまとまっておらん。村長達には招集を掛けておるが、集まるだけで数日掛かるでな」
長老は感情を隠して言い放つ。
「こちらも、その間に出来るだけ情報を集めておく」
「ほう、どうやってだ?」
護衛役の男が訝しげに問うてきた。
「冒険者達の武器を調べれば、俺達が見つけた『ゴブリンを逃がすような戦い方をした人物』かどうか、高い確度で判断がつく」
リーファンは、あっとばかりに顔色を失った。
高圧的に武器を調べるよりも、タダで手入れをしてやると武器を差し出させた方がはるかに波風を立てない。
また、ドワーフが鍛冶師としての腕前を披露して見せれば武器が命の次に大事な冒険者も喜んで武器を差し出すに違いない。
一見恩を売る形で、巧みに情報を探る手法は彼等では思いつかない事だった。
「薬にしても、同じ冒険者が用意した物の方が受け入れやすいかも知れない。そうなれば、気が緩んで口が軽くなるかも知れない。もっともこっちは、薬を現地調達して費用対効果を安く上げるのが主目的だが」
商家出身者らしい口調で、レオンは話を締めくくった。




