第3章 その12 密談の夜・2
エルフの里長達も頭を突き合わせての話し合いを持っていた。
会合自体は常の事であるが、今宵は些か様相が異なった。
「皆が揃うには三日は掛かるか」
此処で言う『皆』とは、衆議での議決権を持つ長老や里長の事である。
今現在、この里に集っているのは半数にも満たない。危機的な状況であるが故に、エルフの民を安心させる為にもその場を動けない者がいるのだ。
「使いは既に送っております。が、冒険者共を含めて外部に気取られぬ様にする為にも時間が掛かります」
護衛役を務めていた壮年のエルフが、長老の言葉に応えた。
「しかしリーファンよ、そなたの息子も厄介な余所者を呼び込んだものよ」
「我が愚息の事とはいえ、面目なく」
リーファンと呼ばれたエルフは頭を垂れた。
「そなたが謝る事ではない。むしろ、リッテルはよくやっておる。どのみちあやつらはこの里に現れおったわ」
長老は目を細めつつ顎を撫でた。
「他の者なら、あやつらを刺激して事態を悪化させておったかも知れぬて」
『あやつら』とは無論レオン達一行のことである。
「しかし、あやつらの持ち込んだ情報は儂の手でも些か持て余す」
視線を動かし、彼等以外の里長達に一瞥をくれた。
「はい。まさか冒険者の中に裏切り者が居ようとは」
「まだ『かも知れぬ』という段階だ」
長老は即断を戒めた。
「だが、そういった『不確かな状態』こそが最も心を惑わせ判断を誤らせる」
その声色からは深い憂慮が滲んでいた。
「あやつらも、裏切り者を特定出来ていない。出払っている冒険者達もおるゆえ、調べも進んでおらぬようじゃ」
「では、如何なさいますか」
「とりあえず、当分は『休養』と称して冒険者達のゴブリン討伐は禁じよう」
長老は一つの判断を示した。
「その間は、われらエルフのみで警戒網を敷く」
「やはりそれしか有りませぬか」
リーファンは一つ頷いた。
「今は、無理は出来ぬ。それにな」
長老はまたしても顎に手をやりながら薄っすらと瞳を閉じた。
「あやつらも今頃は方策を練っておろう。明日の朝には何か話を持ってくるじゃろうて」
話はこれまでというように片手を降ると、完全に瞑目に入ってしまった。




