第3章 その11 密談の夜・1
エルフの里長達とは、当面内部の情報を収集しつつお互いに連絡を密にして策を練ることで合意した。
とりあえず、レオン達に与えられた小屋に移り、村を回っているリッテルとファーレンが戻ってくるのを待つことにした。
「なんか、イヤな感じぃ・・・」
マリーが不機嫌さを隠さずに文句を言い立てる。
「しばらくは此処が拠点だ。さっさと小屋を確認する」
レオンは荷解きをしつつ軽くあしらう。
「一廻して、一番安全そうな部屋を使うといい」
最悪他人との雑魚寝になる雑居部屋でも構わない男性だけの冒険者パーティーとは違う、男女混成パーティーならではの配慮でもある。
「イーだ」
マリーがふくれっ面で居間兼食堂となる部屋から消えている間に、レオンは質の悪い紙切れを取り出し、サラサラと必要な事を書きつける。
「簡単な調理場以外は、部屋は二つしか無いわ。奥側を私とバランで使わせてもらうわね」
「了解だ」
レオンは人差し指を口の前で立てつつ、小さな紙切れをマリーに手渡す。
紙切れには以下の文面が書かれていた。
『黙読。小屋での会話は全て聞き耳を立てられていると思うこと。取り繕う必要は無いが、秘密の会話は文字盤を使う』
視線を上げたマリーに共通言語のアルファベットと数字が書かれた即席の文字盤が示されていた。
「そっちに荷物を運んでおく」
用意周到。
レオンの手際の良さに呆れつつ、マリーは荷物を担いですごすごとしばらく使うであろう部屋に引っ込んでいった。
ファーレンとバランが戻って来たのは、結局夕食の準備が整ってからしばらく経ってからだった。
「冒険者連中の様子はどうだった」
レオンは早速情報の確認を始める。
「軽傷者ばかりだったので、治療は一通り済ませました。ただ、皆さん疲労が蓄積していますね」
「あれでは早晩、大きな事故を起こしかねないぞ」
二人はそれぞれに見立てを述べた。
「今、討伐に出ている冒険者パーティーは屈強なのが揃っているらしいが、直接見ないことには実力は計りかねる」
ファーレンが、戦士らしい見解を述べた。
「その辺りは、おいおい調べるしかないな」
深皿に、簡単に作ったごった煮を手ずから盛り付けたレオンが床板に座る皆の前に配っていく。
「それで、この村の住民の様子はどうだったのかしら」
硬い黒パンを切り出しているマリーが会話に加わってくる。
「やはり、隔意を感じますね。元々が排他的な種族なのでしょうが、追い詰められた状況がそれに拍車を掛けているかと」
バランが冷静な意見を述べる。
「今さらだけれど、私はこの仕事受けなかった方がよかったと思うのよねぇー」
「それこそ、今さらな話だぞ」
食事をかき込みながら、レオンはマリーを嗜めた。




