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第11話 【聖女セレナ・アストレア追放後の異常気象とその後の経過報告】


 報告者:追放代行団リザードテイル情報解析担当 ユリウス・メトリカ

 

【聖女セレナ・アストレア追放後の異常気象とその後の経過報告】


一、異常気象の発生について


 聖女セレナ・アストレア追放の翌日を境に、王国全域で大規模な雷雨が発生した。


 雷雨は三日三晩にわたり途切れることなく続き、空は昼夜を問わず暗く、雷鳴は絶えず響き続けた。王都では街路に水が溢れ、一部では排水が追いつかず、石畳の隙間から水が噴き出すほどの状態となった。


 被害は時間の経過とともに各地へ広がった。


 山間部では地盤が緩み、大規模な土砂崩れが発生。押し流された土砂は集落を呑み込み、甚大な被害をもたらした。


 この国において、この規模の災害が発生することは長年なかった。


 そして、その理由を多くの人々は「女神の加護を受ける聖女によって、この国は守られているから」と理解していた。


 だが、その前提を支えていた聖女セレナ・アストレアは、すでにこの国にはいなかった。


 この雷雨は、三日目の夜明けとともに、唐突に止んだ。


 その後、この雷雨を指し、王都では早くも“女神の裁き”と呼ばれるようになった。



二、雷雨終息後に確認された異変について


 雷雨の終息直後、各地からほぼ同時に異常報告が上がり始めた。

 内容は一貫している。


 王国内への魔物侵入の確認である。


 本来であれば結界によって守られているはずの領域にまで、魔物が入り込んでいた。

 特に危険度の高い獣型魔物の出現が目立ち、各地のギルド支部には討伐依頼と救助要請が相次いだ。


 現場の冒険者たちの証言も概ね一致している。

 具体的には、下記の通りだ。


「あいつらは今まで、この国を避けるように動いていた。それが今回は堂々と入り込んで来る」


 導き出される結論は一つである。


 王国を守っていた何らかの防壁が、すでに機能していない。


 民衆の認識においては、これら一連の異変は聖女追放の直後に発生した、女神の加護の喪失による結果として受け止められ始めていた。



三、王国内の混乱拡大について


 異常気象と魔物侵入の発生により、王国内の混乱は急速に拡大した。


 各地で避難誘導、救助、討伐、物流確保、被害区域の封鎖、復旧作業が同時進行で必要となり、冒険者ギルドの処理能力は限界に近づいた。


 その為、当団体リザードテイルも複数の現場対応要請に応えた。


 王都を中心に再編された指揮系統は、不完全ながらも機能した。各地から上がる報告は順次整理され、必要な場所へ人員と資源が振り分けられていった。


 その結果、魔物の出現頻度は徐々に低下し、避難所の運営も安定し始めている。

 王国内には、わずかながら日常が戻りつつある。



四、王宮の対応について


 国王アレックスが病に伏しているため、事実上の国の最高責任者はエドガー第一王子であった。

 しかし、この一連の事態に対して、第一王子から明確な声明は出されなかった。原因の説明も、対応方針も、民への呼びかけも確認されていない。


 事態を収拾するため、最初に行動を示したのはセドリック第二王子であった。


 セドリック第二王子は命令を発し、冒険者ギルドに対して討伐任務および救助任務への優先対応を要請した。

 これを受け、王宮とギルドの連携体制が再構築され、副ギルドマスター、グレン・ハルフォードの指揮のもと、各地への人員再配置が進められた。


 また、セドリック第二王子本人も被災地へ足を運んでいる。


 被害状況の確認、冒険者への直接依頼、避難民対応の視察を繰り返し、少なくとも民衆の目には、今この状況で実際に動いている唯一の王族として映ることになった。



五、民衆の認識変化について


 この過程において、国民のあいだでは二つの認識が急速に形を取り始めた。


 第一に、

「この混乱の中で、実際に動いていたのはセドリック第二王子である」

 という認識。


 第二に、

「聖女追放こそが、この一連の混乱の起点である」

 という認識である。


 すなわち、

「エドガー第一王子の判断が、この惨事を招いた」

 という理解に繋がる。


 これらの認識は静かに、しかし確実に広がっている。



六、噂の拡散と第一王子への不信について


 こうした状況に追い打ちをかけるように、別の噂も広がり始めた。


「国がこのような状況にあるにもかかわらず、エドガー第一王子は元聖女付き侍女ミレイ・ベルノアと共に何一つ責任を果たさぬまま、安穏と過ごしている」


 この情報の真偽は未確認である。

 しかし、この噂は、人々にとってあまりにも自然に受け入れられてしまっている。


 その結果、王宮に仕える者たちの第一王子への態度は目に見えて硬化し、街の人々もまた、二人の王子を並べて語るようになった。


 第一王子エドガーに向けられるのは不信と失望、第二王子セドリックに向けられるのは評価と期待である。



七、総括


 以上を踏まえるに、王国の秩序はすでに大きな転換点に入っている。


 聖女追放を起点とする一連の事態は、もはや単独の事件ではなく、王国全体の統治構造そのものを揺るがす問題として認識されつつある。


 また、民衆の声を観測する限り、エドガー第一王子に対する評価は急速に悪化している。


 特に、異常気象と魔物侵入が聖女追放と結びつけて理解されている現状において、その責任は第一王子個人の判断へと収束しつつある。


 今後、エドガー第一王子がこの事態に対して、いかなる説明と対応を示すかによって、民衆の認識はさらに決定的なものとなるだろう。

 

 最悪の場合、エドガー第一王子に対して、なんらかの処罰が与えらえる可能性が高い。




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