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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
帝都編
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帝都の巡回の器

噴水を回り込み、ちょうど入り口の正面あたりに薄い桃色の石が1つ、ポツンと敷かれている。

青年がそこに立つと、すい、と帝都の乗り物が3人の前に止まった。

横2列、縦3列に椅子が並び、前後に荷物を置くであろう場所が大きく空いている。

屋根はなくそのまま乗り込むタイプのようだ。


「ええ!?なにこれ?これも石の力で…?」

フウライはその様子に目を白黒させ、きょろきょろと青年とドラゴに視線を移す。


「ええ、そうです。

これの底には石が貼ってあって、敷いてある石と対になってるんです。

石には進む方向も刻まれているので、乗り込んで石でできた進むボタンを押せば、勝手に進みます。

正式名称は"巡回の器"というのですが、巡車(じゅんしゃ)と呼んでいますね。」

青年は、笑顔を顔に張り付けてその乗り物に乗るべく、手をかけた。


「へぇ…華都の貴賓橋とはちょっと違う…あぁっ!ちょっと浮いてる!」

ドラゴに目を止めると、フウライは嬉しそうに石の隙間を指さす。


「我のほうが高く飛べるがな。」

ドラゴは苦虫を噛み潰したような顔で、ぼそりとつぶやいた。


「それはそうだけど…。」

フウライはちょっと鼻白んだのか、姿勢を正して首をかしげる。


「それに自由にどこへでも行ける。」

ドラゴはフウライから目をそらして不満を漏らしつつも、椅子に乗り込めるのかと自分の体を測っていた。


「あ、ドラゴさんは後ろでないと、乗れないと思います。」

青年は眉尻を下げつつ、申し訳なさそうに後ろの荷物入れを指さす。


「我が!荷物だとでも!言うのか!」

不満が爆発したらしいドラゴは、それをそのまま口にした。


「ドラゴ、落ち着いて!僕も後ろに…」

フウライは慌ててドラゴをなだめ、同じところに乗ろうとするがそこまでの空間ではない。


「ドラゴが乗って、その上に僕が座るのは!?」

フウライはいいことを思いついた、というように指を立て、満面の笑みをドラゴに向けた。


「…何を言ってるんだ。フウライは前に座っておけ。」

そんな様子のフウライにドラゴは毒気を抜かれたのか、のろのろと荷物入れに乗り込む。

フウライもいい考えだと思ったのに、とかなんとか言いながら、むぅ、と口をとがらせつつドラゴの前の椅子に座り込んだ。


「す、すみません。椅子の大きさについては、考慮の余地があるようです…」

青年は小さくなりつつ、椅子の大きさを確かめるように見回す。

全員が席に着くと、青年はそっとボタンに触れ、巡車は静かに動き出した。


「帝都の建物はみんな円形なんですね!」

フウライは建物を眺めると、視線を前に座る青年に移し、少しだけ身を乗り出した。


「ええ、そうなんですよ。

巡車は直角に曲がれないし、すべての道が緩やかなカーブになるので建物も角がないほうが効率がいいんです。」

青年は振り返ると、口元に穏やかな微笑みを浮かべる。

四角い建物がないわけではないのですよ、とも付け加えた。


「さっきの広場、灰色の石とは別にいろんな色の石がありましたよね。

あれに乗ると巡車が来るんですか?」

フウライは広場の地面を思い出しながら、疑問点を青年に投げかける。


「ええ、そうなんですよ。色によって行き先が決まってるんです。

図書館へ行くには、桃色の石に乗るんです。道中には停留所もあって、降りたい場所の手前でボタンを押すんですよ。」

青年はそう言いながら、椅子の横に並んだボタンを指さした。


「少し光ってるボタンが、次のて…てい…停…留所?ですか?」

フウライは聞きなれない単語を思い出すように考えながら、言葉をつなぐ。


「よくわかりましたね!

停留所に止まらなければ20分くらいで着きますよ。

途中で乗ることもできますが、今回は誰も乗せない設定にしています。」

青年は停留所を通り過ぎる際に、地面にある桃色の石を指さした。


「ふわぁ…さすが帝都だねぇ…」

フウライはため息をつき、首を振る。

やがて、巡車は図書館前の広場にすべりこんだ。

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