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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
帝都編
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英雄の彫像

「図書館…?」

フウライはところどころ窓はあるが、どこまで続いているかわからない丸みを帯びた壁を見て呆然とつぶやいた。


「帝都は広いですが、図書館もとても広いんです。

図書館、というよりは屋根のついた一大都市といっていいでしょう。

中には宿泊施設や研究施設、レストラン…必要な店なんかもそろっているんですよ。」

青年は少しだけ胸を反らし、ゆるりとフウライに顔を向ける。


「僕の村の小さい図書館とは比べ物にならないな…。」

フウライは村にある木造二階建ての、ささやかな図書館を思い浮かべ、懐かしげに目を細める。


「帝都の図書館も最初は小さかったと言ってただろう。

中心にある円形の閲覧室は、フウライの村にあるのと同じぐらいだったはずだ。

…それに実際我が見た時はもっと小さかったしな。」

ドラゴはその言葉を受け、先のドラゴンが語った知識と自分の中の見聞を合わせて披露する。


「さすがにもう増築はしていませんが、確かに何百年か前までは増築を繰り返していたそうです。」

青年はその言葉にうなずいた。


「わぁ、そうなんだ。確かに全部回ったら何か月もかかりそう……ん?」

そしてふと、図書館入口の前にある彫像に目が釘付けになり、そのままふわふわと彫像に近づいていった。


「えーっと、なになに…?初代皇帝の像…ふーん…立派だねぇ…」

フウライは彫像の台座に彫られた文字を読み上げ、彫像を見上げた。

盾を地面に立てて両手で支え、後ろに撫でつけられた髪の毛は癖が見える。

真っすぐ前を見据えるまなざしを持った顔立ちは、とても精悍だ。


「今は皇帝という地位はないのですが、帝都ができた当初は皇帝がいらっしゃったのです。

彼は紫のドラゴンに守られ、ドラゴンが姿を消した後に一緒に過ごした地に帝都を築いたのだそうです。」

青年は目を輝かせて初代皇帝を見つめ、一気に説明すると、ため息をついた。


「ですが、帝都が安定し始めたころに魔物が帝都を襲い、初代皇帝は民を守ろうと、魔物と戦ってそのまま…」

青年は少し声を震わせ、唇をかみしめて手を握りしめると、地面をにらみつける。


「帝都では英雄として、今でもあがめられているのです。」

そして、握りしめた手をほどいて口元で合わせ、少しだけうるんだ目を彫像に向けた。


「芸術を研究している研究者の間では、歌劇にもなっているんですよ。

お時間があるなら、ぜひ見て行ってください。」

青年は目元を緩め、ほぅと息をついたあと、フウライたちの方へ視線を向けた。


「あぁ…そ、そんなに立派だったんですね…」

フウライは青年と彫像に目線を移しながら、戸惑い気味に言葉を吐き出す。


「裏の顔がどうだったかはわからんだろ。

人間なんぞ、一長一短あるってもんだ。」

ドラゴは立派な人間なんて信用ならない、とばかりに眼光を鋭くとがらせた。


「ドラゴは初代皇帝のことは知らないの?」

フウライは彫像から顔をそらし、ドラゴに向ける。


「うむ、今こやつが言ったように、ドラゴンがいなかったのでな。

先のドラゴンが知らんことは我も知らんのだ。」

ドラゴはいささか残念そうに、眉根を寄せた。


「だが、最後の紫と過ごした人間のことは多少聞いているぞ。

知識だけでなく、武勇にも優れていたというが、少し抜けたところがあるとも言っていたな。」

にやりと笑うと、ドラゴは青年に目を向ける。


「確かに、一長一短ですから、そういうところもあったかもしれませんね。

知らない一面を教えて頂いて、光栄です。」

青年は胸に手を当て、感謝の意を表した。


「うぁ、い、行きましょうか!」

フウライはそんな空気を断ち切るように青年に向かってそう言うと、図書館の入口へ足を進めることにしたのだった。

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