華まつりの輝き
「ぼく…キラキラ、好き、でも、これ、すごい。」
フウライは五色連鎖装を前に、うまく言葉を紡ぐことができなかった。
目の前の手首をかたどった台座は指を下に向け、ゆっくりと回転している。
腕にはまった豪奢な腕輪からつながった繊細な鎖には、オーバルにカットされた宝石が揺れ、人差し指にはまった指輪まで伸びていた。
細い金で編まれた台座に鎮座する宝石を見ても、くすんだ飴玉などという感想は出てはこないだろう。
「さすがだねぇ…」
しばらく見入っていたフウライは大きなため息をつくと、首をゆっくり振りながら五色連鎖装から体を離した。
会場には、絵画や彫刻、服やアクセサリーなどが飾られ、それぞれに人だかりができている。
五色連鎖装の前はことさら大きな人だかりができているため、宝石職人に道を作ってもらったのだ。
「おかげさまで、無事完成させることができました。」
疲れ切っている様子の宝石職人は、それでも満足げに胸を張る。
「大したものねぇ。
宝石を手に入れても失敗する確率も高いのに。」
白ドラゴは、首を傾けて宝石職人に賞賛の言葉を贈った。
「ありがとうございます。」
宝石職人が顔を笑顔で満たし胸に片手を置いたのは、賞賛の言葉に対する返礼だ。
「もうちょっと見ていたいけど、他の人の邪魔になっちゃうし。」
そう言いながら、フウライは会場の出口へ体を向けるが、顔は白ドラゴに向けた。
「そうね、行きましょうか。
もう優勝は決まったようなものだしね。」
白ドラゴは自慢げに話し込んでいる、豪奢な服を身にまとう依頼主に目を向けた後、つい、と視線を出口に向ける。
―――
「うーん…
次はどこへいこうか…。」
フウライは会場を出ると、縮んだように思える体を思い切り上下に伸ばす。
「決まってるでしょ。」
白ドラゴは眉根を寄せ、腕を組み片足をトントンと踏み鳴らした。
「カジノかぁ。もういいんじゃない?」
フウライは楽し気に白ドラゴを覗き込む。
ここ2,3日フウライは大勝していたが、白ドラゴは負け続けているのだ。
プラスマイナスで言えば大きなプラスではあった。
「でも、怖い人に追われなくてよかったよね。
ほら、勝ちすぎると怖い人が来て脅されるとかって…」
フウライは視線を上に向け、首を傾ける。
「この街からしたら、はした金よ!」
白ドラゴはフンと鼻を鳴らすと、イライラとさらに足を踏み鳴らす。
「今度こそ!勝つわよ!」
そして白ドラゴは片手を握りしめ、上につきあげるとカジノへの道を歩き出した。
「あの、すみません。」
意気揚々と歩く二人の前に、マントをまとった学者らしき青年がおずおずと進み出る。
「ちょっと何よ。邪魔よ。」
白ドラゴはカジノへの邪魔をされ、ブスっとした声をかけた。
「あ、す、すみません。ですが、急ぎでもありまして…」
青年はあわあわと手を振りつつ、ぺこぺこと頭を下げる。
「僕たちに、何か御用ですか?
少しだけでも聞いてみようよ。ね?」
フウライは不穏な空気を振り払うように、慌てて会話に割って入った。
もちろん、白ドラゴをなだめることも忘れない。
「私は帝都から来たのですが…
実は探しているものがあるのです。相談に乗っていただきたく…」
青年はかけている眼鏡を直すと、ほぅと小さくため息をついた。
「あのね、我らは探偵じゃないのよ。」
白ドラゴは腕を組み、バッサリと切り捨てる。
「何を探しているんですか?」
もちろんフウライは興味津々だ。帝都と聞いてはなおさらだ。
前のめりに青年の話に食いつくと、白ドラゴを上目遣いで見上げる。
「仕方ないわねぇ…」
白ドラゴはフウライの様子を見てため息をつくと、青年の話を聞くためにレストランへの道を進むのだった。




