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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
華都編
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華都のごちそう

二人がとぼとぼと幹線道路に戻ると、華やかな喧騒が戻ってきた。

ところどころにいる大道芸人の周りには人だかりができ、屋台が並ぶ。


「なんだかお腹すいたよ!」

串に刺した肉を見てテンションが上がったらしいフウライが、白ドラゴに満面の笑みを見せた。


「じゃあ食事にしましょうか。

…そうねぇ、レストランに入るのはどうかしら。」

白ドラゴは近くにある、庶民でも入れそうなレストランを指さす。


「うーん…

いいよ!お金はいっぱいあるし。」

フウライは宝石職人にもらったお金を思い出すようにうなずくと、足をレストランに向けた。


――


「ねぇ…これ、なんだかわかる?」

フウライは声をひそめ、白ドラゴのほうに体を乗り出す。


「逆に、わかると思う?」

白ドラゴは、眉根を寄せてメニューに目を落としている。


「だよねぇ…」

フウライはため息をつき、メニューを置いた。

料理の名前からは、それがなんだか想像もつかないのだ。


「"女神の恵み"だけでわかったら大したものよ。」

白ドラゴもため息をついてメニューを置く。


「"湖上の月"だって。なんの料理なんだろ。」

フウライは少しだけ楽しくなってきたのか、メニューを再び取り上げると口角が徐々に上がっていく。


「"勇気の証"、ねぇ。

これ、肉料理じゃない?なんだか勇気って気がするし。」

白ドラゴも再びメニューを取り上げ、料理の名前の部分に指を置いた。


「あ、そうかも!じゃあ、"湖上の月"はスープかな。」

フウライは目を上に向け、少し首を傾ける。口角は相変わらず上がったままだ。


「我は"宝石の夢"にかけてみるわ。」

白ドラゴは背筋を伸ばし、メニューをパタン、と閉じた。


「フルーツにちがいないもの。」

そして、フウライに指を立て、自分をも納得させる。


「じゃあ、僕は"春の訪れ"と、"耕夫の働き"と、"勇気の証"!」

フウライも注文すべく従業員に目配せし、メニューを閉じた。


「何だと思う?」

白ドラゴはフウライが注文したものが何なのか、興味津々だ。


「多分だけど、"春の訪れ"はサラダ、"耕夫の働き"はパンで、"勇気の証"が肉料理。」

フウライも自分の予想に、目を輝かせる。


「フフ、あってるといいわね。」

白ドラゴとフウライは目線を合わせると、互いに笑いあった。


「こちら、銀尾魚(ぎんびぎょ)の香草焼きです。」

しばらくして、ウェイターは持ってきたものを、フウライの前に置く。


「春の訪れ?」

白ドラゴはみずみずしいフルーツを1つつまむと、ウェイターに顔を向ける。


「はい、春になるとこの魚が湖に戻ってくるのです。」

ウェイターは口角を上げ、その顔を白ドラゴに向ける。


「サラダじゃなかった…」

フウライは消えそうな声でつぶやいた。


「サラダでしたら、"女神の恵み"となります。

華都では、野菜は大地の女神がもたらす恵みと言われています。」

ウェイターはその声を聞き逃さず、口角を上げたままフウライに顔を向ける。

そして、パンの盛り合わせとフウライの顔ほどあろうかというステーキを置いた。


「他はあってたじゃない?」

白ドラゴは笑いをこらえながら、つまんだフルーツを口に運んだ。


「わぁ、おいしい。」

口をとがらせながらも魚を口に運んだフウライは、目を丸くして手を止め、魚をまじまじと見つめる。


「いつも焼いただけ、だものねぇ…。

味付けなんて、せいぜい岩塩をふりかけるぐらいで。」

白ドラゴはしみじみと頭を振り、フウライの魚に目を向ける。


「油も高いからあんまり使わないしね。まして、香草なんて。

これが華都の料理なんだ…やっぱり他の街とは違うんだねぇ。」

フウライは満面の笑みを浮かべ、感心したように魚を平らげると、肉に取り掛かった。


「この肉も歯ごたえからして違うよ…。焼き方なのかな。」

フウライは肉をかみしめながら、パンをちぎる。


「普通はよく焼かないと危ないものね。よほど新鮮でないと。

………余裕があるんでしょうねぇ。」

白ドラゴはため息交じりに少しだけ苦々しく言うと、最後のフルーツをつまむ。


「パンの香りといい、柔らかさといい…

僕が食べてきたパンと本当に同じものなのかって思うよ。」

フウライはちぎったパンを見つめながら、今まで食べたパンに思いを馳せた。


「我々は楽しめばいいのよ。」

白ドラゴは少し伸びをすると、パン、と小さく手を打った。


「…それもそうだね。」

フウライは肩をすくめると、最後の肉を口に入れるのだった。

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