地図のバツ印
華都への落とし格子の下を、橋を渡り終えた人々がざわめきながら通り過ぎ、吸い込まれていく。
華都には様々な色の石が飾られ、夜にもなればその石からは光が放たれるのだ。
石に負けず劣らず、様々な色や種類の花が至る所に飾られている。
「わぁ、すごいねぇ…。
あれが落ちてきたらと思うと、ちょっと怖い。」
フウライは花が飾られた、それでもいかつい鉄の落とし格子を見上げながら、小さなため息をつく。
「ほら、邪魔になっちゃうわよ。」
白ドラゴはその繊細な手をフウライの肩に乗せ、そっと道の端へ誘導した。
「あ、うん。ごめん。
そういえば、華まつりってなんのお祭りなんですか?」
フウライは慣れない人の多さに戸惑いつつも、邪魔にならないよう端によけて宝石職人に向き直る。
「この都ができた記念と、華やかな技術力を祝うお祭りなんですよ。」
宝石職人は、白ドラゴに滞在費や諸々の費用、ホテルや華まつりの案内を渡しながら、フウライに顔を向けてにっこりと笑った。
その笑顔は少しだけ緊張を持っているかのようだ。
「技術力を競うイベントも開かれます。
私の五色連鎖装も、そのイベントに出されるのです。」
宝石職人はそういうと、その笑顔を消して表情を引き締めた。
「わぁ!頑張ってくださいね。
僕も見に行きたいなぁ。」
フウライは目を輝かせ、どんな技術力なんだろうかと想像力を働かせる。
「装飾品だけでなく、彫刻や織物、時計や食器、様々なものが出品されるんですよ。
一番人気だったものと、作者には栄誉が贈られるんです。」
宝石職人は表情を少しだけ緩め、その口元には微笑みが戻った。
「もちろん、持ち主にもね。」
白ドラゴは、ウインクしながら言葉をつないだ。
「依頼者ってこと?」
フウライは少しだけ首をかしげる。
「まあそうね。技術者には大抵投資するパトロンがいるもの。
そんな技術者を見出したパトロンにも、特別な栄誉があるってわけ。」
白ドラゴは華まつりの案内を片手に持ち、それをひらひらと振る。
ま、大方賭けでもしてるんでしょうよ。と言いながらフン、と鼻を鳴らした。
「そっか。パトロンがいるなら、お金の心配はいらないね!」
白ドラゴの皮肉も通じないのか、あくまでもフウライは能天気である。
「それでは、私はこれで。華都を楽しんでくださいね。」
宝石職人は少し苦い笑顔を二人に向けると、足早に人混みの中へ消えていった。
「僕たちはどうしようか?」
フウライは宝石職人の背中を見送ると、白ドラゴに向き直った。
「そうねぇ。ホテルへ行く道すがら、いろいろ見て回りましょうか。
…屋台も出ているようだし。」
白ドラゴは、串に刺したフルーツの屋台に目を止めて口元をほころばせる。
二人は屋台でフルーツを手に入れると、それをかじりながらホテルへ向かうことにした。
「ドラゴ、道、どんな感じ?」
フウライは手に持った串を、一般橋から時計塔へ延びる大通りに向ける。
「そうねぇ。橋から時計塔へ向かう大通りがあるわね。
それから…時計塔を中心に環状道路が5本…。制限はないみたいね。どの道通ってみたい?」
白ドラゴは地図を広げ、その小さな指を大通りから環状道路になぞった。
「ここ、バッテンかいてあるね。」
フウライは、地図の空白とそこに至る道に書かれたバツ印を指さす。
「バツ印だから入れないみたいだけど、近くまで見に行ってみましょうか。」
白ドラゴも興味をそそられたのか、一般橋と運搬橋の間、一番外の環状道路にあるその区域に目を向ける。
「うん、行ってみよう!」
フウライは街中の喧騒とは無縁そうな、その区域への道に賛同したのだった。




