華都への依頼
夕方の食堂は忙し気に店員が立ち働き、食器の鳴る音と冒険者たちで溢れかえっていた。
フウライの前には肉汁も滴るようなステーキと香ばしい香りのするパンが、白ドラゴの前には新鮮なカットフルーツの盛り合わせがおかれている。
「ほ、本当にあったのですか!?」
宝石職人は両手をつき、テーブルに身を乗り出した。
「そうなんです!これを。」
フウライはバッグにしまわれた袋を取り出し、中にある石を1つずつ並べる。
宝石職人はその様子を両手を握りしめ、荒い息に眉を下げて見つめていたが、はっとしたかと思うと自分のカバンからルーペを取り出す。
「た、確かに!確かに聞いていた通りのものです。」
宝石職人は一つ一つ指でつまみ、ルーペで確認すると涙を浮かべてうなづいた。
「よかった!」
フウライはほっとすると同時に、あのルーペで何かわかるんだろうか、と思わずにはいられない。
「あの、それって磨くと光ったりするんでしょうか?」
フウライは肉を切り分けながら、あの飴のような石が宝石になるんだろうか、という問いを宝石職人にぶつけてみた。
「いえ、これは磨いても光りません。
…なので、このまま使いますね。」
宝石職人は一つずつ宝石をしまいながら、こともなげにフウライの期待を振り払った。
「あ、そうなんですね…」
フウライはがっかりしつつも、肉を口に運ぶ。
「ふふ、残念だったわね。」
白ドラゴは優雅にカットフルーツをつまみながらフウライに目を向け、フウライはプゥと頬を膨らませた。
「華都まで、ボディーガードをお願いできませんか。」
宝石職人は少し考え込むと、そんなことを提案する。
「宝石を狙う輩がいないとは限りません。
もちろん、道中の旅費は持ちますし、華都での滞在費もお礼もお渡しします。」
ちらちらとこちらを伺う質の悪そうな冒険者を横目で見つつ、そのような依頼をしたのだった。
「華都ってどんなところだろ?
華都というくらいだから、やっぱり華やかってことなのかな。」
フウライはその名前に首をかしげる。
「ほら、前に王都に立ち寄ったでしょ?
あれをもっと豪華で退廃的にしたような感じね。」
白ドラゴは指を立てると、カジノで使ってる宝石も比べ物にならないでしょうね、と付け加えた。
「ああ、東の王都に行かれたのでしたっけ?
華都には支配者などはいませんが、コネがなければ入れないのは王都と同じです。
それに、比べ物にならないくらい華やかなのです。」
宝石職人は白ドラゴの言葉にうなづきながら、それでも王都との違いを強調する。
「ぼ、僕ついていけるかな…」
王都でも気おくれしがちだったフウライは、少しだけ怖気づいてしまった。
「大丈夫よ!キラキラがいっぱいあるのよ!」
白ドラゴはカジノを思い出しながらもフウライの好きなものを強調するが、自らの欲望のほうが上らしい。
「キラキラ…。カジノ…。」
フウライは王都ですったことを思い出しつつ、もしかすると次は…という気持ちも芽生えてきたようだった。
「そうと決まれば、明日は出発ね。」
白ドラゴが決定すると、宝石職人はほっとしたようにうなづいた。
三人は宝石職人の滞在する宿に泊まり、翌日街をあとにするのだった。




