黒いしずく
「やっぱりこれも飴みたいなんだねぇ。」
フウライは黄色の小さな塊を手のひらで転がすと、目の前にかざして四方から観察する。
「磨けば光るのかもしれんぞ。」
ドラゴはそんなフウライの顔を横から覗き込む。
「はっ…!そうか…磨くと光る石もあるもんね!」
フウライはそういうと、パァっと輝かせた顔と、指に挟んだ宝石をドラゴにむける。
「ははは!よし、次を探すか。」
ドラゴは現金なフウライの様子に思わず笑うと、次の宝石探索に誘った。
そんなドラゴをみてフウライも眉を下げて肩をすくめると、洞窟のある方へ足を進める。
「洞窟…奥が深いみたいだけど、黒い宝石はこの中だと思う?
………なんかぞっとしないな。」
フウライは暗い洞窟の中を覗き込むと、ブルリと身を震わせる。
さらには迷宮のアンデッドたちを思い出したのか、腕が粟立ってもいる。
「その必要はあるまい。」
その横に立ちながら、ドラゴは洞窟の周りを這いまわる黒いツタに顎をしゃくる。
「あ、ツタかぁ!よかったぁ。」
フゥ、とため息をついたフウライは気を取り直し、顔を上げてツタに向ける。
フウライを撫でる風は、太陽に照らされて生温く、洞窟から染み出る水で湿っている。
噴き出る汗をぬぐいながら見て回るが、違うところは見当たらなかった。
「何もないよぉ…」
同じように生温くなった水を口にしながら、フウライはがっくりとうなだれる。
「ふふ。難しいわよねぇ…。とりあえずお昼にしましょうか。
腹が減ってはなんとやら、でしょ。」
ふわりと白をまとった白ドラゴが、いそいそと昼食の準備を始めた。
いつの間に取ったのか、大きな葉の皿に焼き魚や木の実をならべる。
「ふぅ…。あぁおいしぃ…」
フウライは焼き魚にかぶりつき、一息ついた。
おやつの木の実を口に運びながらツタをぼんやりとみていると、何かしら違和感があることに気が付いた。
風に吹かれて揺れるツタの葉、の一部。
「あれ、動いてないよね?」
フウライは目を輝かせて白ドラゴに目を向け、指先をツタの方に向ける。
指先にあるツタは、風など吹いていないかのように素知らぬ顔で葉を下に向けていた。
「ふふ、ご名答!
お腹がいっぱいで余裕が出てきたのねぇ。」
白ドラゴは手を叩き、フウライを称賛すると赤をまとう。
「行ってみようよ!」
フウライはおやつもそこそこに切り上げると、勢いよく立ち上がった。
「がっちり止まってるねぇ…」
フウライは感心したかのように、時が止まったようなツタの葉に顔を近づける。
「さぁ、姿を現す時間だ。」
ドラゴが少し息を吸い込むと、フウライは慌ててツタから身を離した。
ツタの葉の少し上を優し気な炎が通り過ぎる。と、葉の先から黒いしずくが零れ落ちた。
フウライは慌てて手を伸ばすと、その黒いしずくが落ちて固まった石を拾い上げる。
「あと一つだねぇ。」
フウライは黒い石を仕舞いながら、頂上方面に顔を向ける。
「紫はさ、多分頂上にあるんじゃないかと思うんだ!
…根拠はないんだけど。」
フウライはへへ、と頭を掻きながらも自分の予想を披露する。
「その通りだ。」
ドラゴは即座にその予想を肯定する。
「ほんと!?じゃあ、行こうよ!」
フウライは飛び上がって頂上を指さし、今度は体を頂上に向けたのだった。




