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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
迷宮編
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幸運の花と、赦しの灰

三人は、大きな通りに面した重厚な壁にしつらえられた、アーチ型の扉の前に立っていた。

扉の前では兵士が二人、入り口を守っている。


「うわぁ、難攻不落、って感じ。」

フウライは、額に手をかざし感嘆の言葉を漏らす。


「魔物がいつ襲ってくるかもわかりませんから。」

執事は、少しだけ胸を張る。


「石は燃えにくいのよねぇ…」

ま、燃やせないこともないんだけど、と白ドラゴも胸を張る。

執事はぎょっとして白ドラゴを見たが、何も言わなかった。


「石って燃えるんだ…」

フウライが考え込むように首をかしげる。


「我にかかればドロドロよ!」

白ドラゴはフン!とばかりにさらに胸を張る。


「あっ、マグマ的な?」

ポン、と手を打ってドラゴに目を向ける。


「ま、そんな感じね。」

白ドラゴは口に手を当て、フフと笑う。


「こちらへ。」

執事に目配せを受けた兵士が扉を開けると、中へ進んでいった。


バタバタと使用人が立ち働く中、中央の階段を上がる。

廊下を抜けると、沈痛な面持ちの兵士が扉の前にたたずんでいた。


執事がうなずくと、兵士が扉を開ける。

漏れ出した薬品の匂いに、フウライは少しだけ顔をしかめた。

3つのベッドに領主夫妻、そして幼い娘が眠っている。

傍らにはメモを取る医師が控えていた。


「呪いのせいで、眠っておられます。

…このままでは命もあぶないと。」

執事は眉根を寄せ、うつむく。


「ドラゴぉ、この子、助けられるかな…?」

幼い娘に目を向けたフウライは、見つめたまま白ドラゴに問いかける。


「もちろんよ。」

白ドラゴは、少しだけ胸を張って答える。


「よかったぁ。」

フウライはぱぁっと満面の笑みを浮かべる。


「”赦しの灰”をご存じでしたか。」

執事もほっとしたかのように顔を緩め、胸を抑える。


「赦しの灰って?」

フウライは白ドラゴに顔を向けて問いかける。


「少し話が長くなりそうです。応接室へ。」

執事と二人は寝室を辞し、応接室へ移動した。


「この街の近くに迷宮があるのですが、

その迷宮に”赦しの灰”があるのだとか。」

執事が赦しの灰について、フウライの疑問を引き取って続ける。


「冒険者を募ったのですが、この街にいると同じ呪いにかかるという、

根も葉もないうわさが流れたのです。」

「皆、この街から皆出て行ってしまいました。」

そういうと、がっくりと肩を落とす。


「実際はどうやって…?」

どうやって呪われたのか、フウライには想像もつかない。

そもそも呪いなんて、本当にあるんだろうか。

使用人の入れてくれた香りのいいお茶をすすりながら、首をかしげる。


「もう二週間も前になるでしょうか。

子供が贈り物だと言って、幸運の花を持ってきたのです。」

執事は手を前に組み、足元に目線を落とす。


「幸運の花?」

フウライの知識にそんな花は存在しなかった。


「まき散らした花粉を浴びると、少しだけ運がよくなるのよ。」

「誰かのために花に幸運を祈ると、そんな力が宿るの。」

でも自分には効かないのよね。と、その問いは白ドラゴが受け取る。


「…なんか、ウツミムシの花バージョンだねぇ…」

あれは希望を失ったけれど…とフウライは顎に手を当てる。


「そうね。でも花は黒が作ったのよ。」

「みんなを少しでも幸せにしたい、って考えてたんじゃないかしら。」

白ドラゴはしみじみと語る。


「そんな花がどうして?」

フウライは幸運の花と呪いの関係に首をかしげる。


「そんな花に、誰かが命を懸けて呪うのよ。

そうすると、呪いの花になるってわけ。」

白ドラゴは少しだけ脅すようにフウライを見つめる。


「えぇ…なんでそんなことを?」

命をかけてまで誰か呪うなんてと、フウライは肩をすくめた。


「幸運の花をもらった領主さまは、

家族にも少しの幸運を、と考えたのでしょう。」

執事は幸運の花の説明を待つと、話を続ける。


「皆さんがそろっているときに、幸運の花を振ったのです。」

「ですが、その花には幸運ではなく呪いが込められていたのです。

…そうして、領主様ご一家は眠りについてしまいました…」

肩を落とした執事が、さらに肩を丸める。


「恨みを買うような方ではありません。呪いだなんて、本当になぜ…。」

「この街の言い伝えでは、呪われたなら迷宮に行き、赦しの灰を手に入れよ、と…」

執事はすがるように白ドラゴに顔を向ける。


「街に残った豪胆な冒険者に依頼もしたのです。

ですが、だれも帰ってきませんでした。」

「もう、ドラゴン様しか頼れる者がおらず…。」

そして、両手を握りしめる。


「迷宮はもともと行くつもりだったし、行ってみましょうか。」

白ドラゴは何でもないことのようにいい、フウライに顔を向ける。


「ドラゴが行くっていうなら、行くよ!」

だれも帰ってこないとはいえ、ドラゴが一緒なら、とフウライは元気に答えるのだった。

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