過去と、今
焼き立てのパンと玉ねぎのスープ、肉料理がフウライの目の前に置かれた。
白ドラゴの前には新鮮なフルーツの盛り合わせだ。
「もちろん、ここは私のおごりだ。」
賢者が自慢げに二人に目を向ける。
つもる話でもするつもりだったのか、元大魔法使い、現賢者は二人を近くの村の大衆食堂へ誘ったのだ。
そもそも賢者として無料で食堂を使っているので、おごりも何もない。
それでもフウライは目を輝かせる。
「わぁ!そろそろお腹空いてたんだよね。」
フウライはうきうきとスープを口に運ぶ。
白ドラゴは優雅な手つきでフルーツをつまむ。
その様子を、ほほえましい物を見るかのように、賢者が見守っていた。
「まだ生きてるなんてねぇ…」
白ドラゴが感慨深げに賢者に目を向ける。
「ドラゴがつながれたの、300年前なんだっけ。」
フウライが聞いた話を思い出すよう首をかしげる。
「て、ことは300歳以上ってこと…」
そして今思いついたかのように賢者を見つめる。
「帝国には寿命を延ばす方法なんかもあってな…
だが、そろそろ行かねばなるまいよ。
面白い物も見れたし、思い残すことはないな。」
賢者はしみじみと腕を組むと、顎に生えた白いひげを撫でる。
「あの、ドラゴを封印した理由っていうのは…」
フウライはもぞもぞと、聞きづらそうに賢者に問いかける。
賢者は白ドラゴにちらりと目を向けると
「うむ、帝国の近くに住んでおったのだが、
人間に追われたドラゴンが暴れておってな。
そのときに家も焼かれて…」
昔を懐かしむでもなく語りだす。
「そりゃドラゴンを恨んでな。
焼け出された中でも優秀な者は帝国で保護されたから、
その時に図書館でいろいろ学んだのだ。」
ドラゴンを倒す魔法を使えるように、寿命を延ばすようにとな、と付け加える。
「我を倒すなんて、無理に決まってるでしょ。」
白ドラゴはフン、と鼻を鳴らす。
「確かに封印するので精一杯だった。
だが、先に人間が仕掛けたのだというのがわかった。
その時点で倒すことが正しいのか、わからなくなったのだ。」
長い年月をかけて辿り着いた答えなのだろうか、賢者に刻まれた深い皺が物語っているかのようだった。
「うーん…
僕は平和な時代に、平和な村に生まれちゃったから
よくはわからないけど――」
フウライは白ドラゴと賢者と交互に顔を向ける。
「でも、ドラゴに会えたことは本当によかったよ!」
心からそう思っているのだろう、満面の笑みを浮かべる。
白ドラゴと賢者は、目を丸くした後
「アッハハハハ!」
「ふぉっふぉっふぉっ!」
いかにも楽し気な様子で首を振り、笑いあった。
「なっ、何?」
フウライだけが意味が分からないというように、二人を見比べる。
「フフフ…
フウライは、それでいいのよ。」
白ドラゴがそういうと、賢者もうんうん、とうなづくのだった。




