風の主旋律
床に満たされた光と風はゆっくりとらせんを描いて立ちのぼる。
塔のてっぺんまで登るとそのまま溶けて消えていくようだった。
と、同時に光と風は、白ドラゴの声に似た優しい声で歌を奏でる。
フウライは呆然と見ていたが、歌が始まると、はじけるように白ドラゴを振り返る。
赤い鱗をまとったドラゴが、一緒に歌いだしたからだ。
光と風の歌が主旋律だとしたら、ハーモニーだろうか。
古代の言葉なのか、ドラゴンの言葉なのか、フウライに意味はわからなかった。
やがて、歌が終わると光と風はすべて溶けて消えていった。
ドラゴは白い毛皮をまとうと
「自分の色で、強制的に歌わされるのよね。」
と眉を寄せて不機嫌につぶやいた。
それを聞いたのかわからないフウライは、ワンテンポ遅れて大きな拍手を送る。
「すごい!素敵な曲だったよ!
ドラゴ、歌もうまいんだねぇ!」
大絶賛である。
「んん…まぁ、そうね。
…我にできないことなんてあるかしら?」
白ドラゴは胸を反らせる。
「でもあれ、なんの曲なの?
言葉なのかな?僕わかんなかった…」
フウライは歌を思い出すように首をかしげる。
「ドラゴンの言葉で、その歴史の歌ね。
白の主旋律と赤のコーラスってとこかしら。」
白ドラゴ曰く、今のは青のドラゴンの歴史をうたったのだという。
「レバーを少しだけ引いたからね。
もっと引くと違うドラゴンの……
ちょっと!やめなさいよ!」
違うドラゴン、と聞いたフウライが嬉しそうにレバーに手を掛けたのだ。
「えぇー。もっと聞きたい!」
レバーに手を掛けたまま駄々をこねる。
「結構大変なのよ。ここはもうおしまい!」
白ドラゴは歌わされてはかなわないと、慌てて終了宣言する。
フウライは、むぅ、と膨れつつもレバーから離れる。
二人で出口に歩きながら、フウライは疑問を口にする。
「作詞はともかく、作曲は誰がしたんだろ。
素敵な曲だったよね。僕も創作の才能があればなぁ~」
あーあ、と手を頭の後ろで組み、がっかりを隠せないフウライ。
「人間には自分に合った才能があるものよ。」
フウライはそういうのじゃなかっただけ、と白ドラゴが慰める。
そして、少し考えると
「それに、作詞というより、記憶なのよね。
消えていくドラゴンの記憶がここに来たっていうか…」
説明しづらいのだろう、考えながら言葉を選ぶ。
「曲は風が勝手に奏でる感じね。」
即興だから、同じ曲とは限らないのだという。
「じゃあ、今までのドラゴン全員の…?」
フウライは過去のドラゴンたちに思いを馳せる。
「残念ながら、そうでもないわね。
残したい、って思わないドラゴンもいたでしょうから。」
特に、赤なんてないわね。
白ドラゴはそういうと、ふいっと顔を上にあげたが、フウライは足元を見ることしかできない。
そして、ドラゴはどうするんだろう、と考えずにはいられなかった。




