起動する風
二人は宮殿前の広場を抜け、風の塔へまっすぐ伸びた道に足を踏み入れた。
「なんかこれだけ広いのに誰もいないって、怖いんだね…」
フウライは両腕で体を抱えると、ぶるっと身震いする。
「我はうじゃうじゃいるほうが嫌だけどねぇ…」
宮殿を出て白ドラゴに変わりなおしながら、まとわりつく小さい人間を思い出しながら苦笑する。
道のわきには小さい人間が遊ぶためなのか、遊具がしつらえられている。
「僕がもうちょっと小さかったら、あれに乗ってると思う。」
フウライが指さしたのは、前後に揺れて楽しむ、馬の形をした遊具だ。
「本物にも乗ったことないんだよね。
島に馬はいなかったからなぁ。」
魔物はいたのに、と口をとがらせる。
「旅をしていればそのうち乗れるでしょ。
何より我の背中に乗ってるくせに、贅沢じゃない?」
白ドラゴはそう言いながらつん、と上を向く。
「そういえばそっか。
ドラゴンの背中に乗ったなんて、僕ぐらいだよねぇ」
フウライはそういうと、満面の笑みを浮かべて白ドラゴを見上げる。
そんな話をしながら進めば、風の塔はもう目の前だ。
「目の前にあるとでっかいねぇ~」
額に手をかざし、目を丸くしながら風の塔を見上げる。
「んん?これ入り口は?裏かな。」
見渡す部分に入り口は見当たらない。
フウライは走り出すと、ぐるりと風の塔の周りをまわる。
「はぁ、はぁ、これ、いりぐち、ない。」
まわり終わったらしきフウライが、息を切らして白ドラゴに報告する。
「入り口はドラゴンが作るから…」
白ドラゴは笑いをこらえながら答えた。
「えぇ、最初から言ってよ…」
フウライはそれを聞くと、がっくりと肩を落とす。
「フフ、だって、いきなり走り出すんだもの。」
とうとうこらえきれなくなった白ドラゴは肩を震わせた。
そしてゆっくり風の塔に近づくと、体の割に小さな手をかざす。
手をかざされた部分がぽぅ、と白く光ったかと思うと、ぽっかりと入り口が姿を現した。
「扉とかはないんだね。」
フウライは開いた入口から、恐る恐る風の塔に足を踏み入れる。
内部は外側の白からは想像もつかない、緑と青の中間色のガラス質で覆われていた。
さらに、窓からさす光が、より一層静謐な空間を作り上げている。
「なんだろ、これ。」
その中央に、この場に似つかわしくない、木でできたレバーが床から生えているのだ。フウライの興味をひかないはずがない。
「あ、、気を付けて、、、」
白ドラゴが注意する間もなく、フウライはレバーを少しだけ引く。
ふわり、と光の粒子と風が床を満たす。
「あ、あ、僕何かやっちゃった?」
慌ててレバーを離すが、すでに何かを“起動”してしまったようだった。




