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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
空都編
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刻まれる声

宮殿の前にしつらえられている美しいタイルで飾られた、広い階段を登る。

階段上のアーチ型の入り口をくぐれば、そこには天井の高い空間が広がっていた。同時に、白ドラゴが赤い鱗をまとう。


「あれ、どうしたの?」


説明するときは白、と認識しているフウライが目を丸くする。


「ここに入ると勝手に色をまとうのだ。」


ドラゴは少しだけ忌々し気に、眉根を寄せる。


「そっか。そういう決まりなんだねぇ。」


フウライは少し上に目を向けて、なんとなく納得する。


「それにしても…」


周りを見回すフウライは楽しげだ。


「きれいな柱だねぇ。」


らせん状の溝が刻まれた、ガラスのような色とりどりの柱が林立している。


「これ何なの?」


そのうちの一本に走り寄った後、ドラゴを振り返る。


「触ってみたらよかろう。危険はない。」


説明するのが面倒なのか、赤のドラゴは行動派だ。

フウライは恐る恐る手を伸ばし、そっと黄色のガラス柱に触れる。

その根元からふわりと風が立ちのぼり、らせんの溝を伝って声を奏でる。


「次は何して遊ぼうか?」


力強い声だ。


「今日はもう遅いよ。明日また遊ぼう。」


青年らしき声が、それに答える。


「そっか、明日もまた楽しいんだろうね!」


「アハハ!」


笑いあう二人の力強い声は、明日を夢見ているかのようで聞いているフウライも笑顔になる。


そして、ドラゴを振り返りながら


「これ、会話なんだね。

黄色い柱だから、黄色いドラゴンと人間かな?」


と問いかける。


「そうだな。会話が記録されたということは、それだけ絆が深かったんだろう。」


ドラゴは伏し目がちに答える。

フウライはその答えに満足し、そばにある黒い柱にそっと触れる。


「ここが記録の場?とてもきれいな柱だね――」


優し気な青年らしき声が聞こえる。


「ええ、そうよ。ふふ、私たちの声も刻まれるかもしれないわね…」


耳に届くだけで心が安らぐようなふわりとした声。

フウライは口元に微笑を浮かべる。


「そっか。だとしたら、なんだかすこし恥ずかしいね。」


はにかんだような青年の姿が思い浮かぶかのようだ。


「ふふふ…」


最後は二人の穏やかな笑い声だった。


「ふふ…。

あ、特に重要な会話というわけじゃないんだね。」


思いついた、というようにドラゴを振り返る。


「そうだな。ここへ来た絆を持つ二人の他愛もない会話だ。」


――面白い会話じゃないがな


ドラゴは付け加え、フウライを見やる。


「どうした?」


もじもじとしているフウライを見て、もしかしたら腹が減ったのかと心配する。


「うーん、もしかして僕たちの会話も記録されたりするかなって…」


少し上目づかいになりつつ恐る恐るドラゴを見上げる。

ドラゴは目を見開いてその頭を回転させた。


「どうだろうな。我らはまだ出会ってからの期間も短い。」


実際、出会ってから3か月程度だ。


だが、長さなど関係あるだろうか?


とも思う。


「かなり仲良くなったと思うんだけどなー…」


フウライは口をとがらせて抗議する。


「まぁ、この広間の気が向いたらするだろうよ。」


ドラゴは適当に流し、フウライは肩をすくめると、別の柱の下へ走っていった。


いくつかの柱を再生して満足したのか、飽きたのかまた走って戻ってくると、二人は宮殿を後にしたのだった。


二人がアーチを出た後、静かに赤い柱が生成されたのを、二人は知らなかった。


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