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語られるフウライ

【オークダンプの宿にて】


オークダンプの宿は今日もにぎやかだった。

最近オークと村人が、新しい事業を始めたとオークヘイブンに伝わったのだ。

様子を見ようとちらほら泊まりに来る人が増えている、というわけだ。


村の事業を仕切る、オークダンプの少女がフウライのスプーンで夕食のサラダを取り分けているとき。


バキッ


少女の手の中で、スプーンがはじけるような衝撃があった。

見ると、スプーンは少女の手の中で、縦真っ二つに分かれている。

料理を運んでいた女将と、少女は顔を見合わせる。


「縦に壊れるって、やっぱり…。」


少女は不安と期待の混じった様子で、縦真っ二つになったスプーンを眺める。


「奇跡が起きたのでは!?」


女将は単純に喜びを表し、料理をテーブルに置くと少女に駆け寄る。


「そうだといいんだけど…」


少しだけ目を伏せ、フウライの安否を気遣った。


――おおよそ一週間後


「王都から、急ぎの手紙です。」


宿のスタッフが王都からの伝令から受け取った手紙を持って、少女と女将のもとへやってきた。


少女が目を向けた壁には、壊れたスプーンと、日時が飾られている。

その下の奇跡の内容はまだ空白のままだ。


手紙の裏の差出人を見ると、少女の目は細められ、深くため息をついた。


「なんて書いてあるんだい?」


女将が内容の確認を急かす。

少女は女将にちらりと目をやって微笑むと、手紙に目を落とした。


「命の危機だったみたい。」


少女の眉根が寄せられ、体を固くする。


「危機一髪のところ、助かったと…」


ほっと息をつき、日時を確認したらしい少女が、壁のスプーンに目を向ける。


――同じだ。


満面の笑みを浮かべると、明日からはもっと忙しくなるな、と思うのだった。



【フウライの家では】


その食卓はいつもより静かで、沈んだ雰囲気を漂わせていた。


「どこいったんだろうな。

ちゃんと飯食ってるかな。あの食いしん坊…」


ぽつり、と長男がつぶやく。

フラリと出て行っても、2,3日で帰ってきていたのに、もう3か月近く帰ってきていない。

まだまだ赤ん坊だと思っているのか、長男はフウライに過保護だ。


「いつもより静かで、かなわないな。」


次男がため息とともに、物足りなさを吐き出す。

食卓の場では、だいたいがフウライがメインでしゃべっているからだ。

聞き上手な次男は、いつもフウライの話を楽し気に聞いてくれていた。


「危険な目にあってないといいんだけど。」


長女が顔を上げ、家族を見回す。

フワフワしているフウライの面倒をよく見ていたのは長女だ。階段を踏み外して泣いてるフウライの姿を思い出していた。


「ドラゴンと一緒、ってきいた。」


三女が不満げに長女に目を向ける。

その言葉に、母親が眉根を寄せる。

フウライに面白い話をするのも、怖い話をするのも三女だ。

交友関係が広く、情報ネットワークが広いため、ドラゴンと一緒に旅しているのがフウライだと噂に聞いたのだ。


「村を出てみたいって言ってたしなぁ。

誰かさん、いじめ過ぎたんじゃね?」


三男がその言葉を受け取り、少し楽し気に混ぜ返す。

ふん、と三女は顔をそむける。

年が近いからか、フウライを森や山に遊びにつれていったのは三男だ。


「薬師さんに聞いたんだけど、ドラゴンの森に行ったかもしれないって…。」


心配させると思って黙ってたんだけど、と次女は付け加えた。

フウライの面倒を見る兄弟たちに目を配り、気づきにくい世話をしてたのは次女だ。


「もう成人の儀式は済んでいる。

大人の男を子供のように心配しても、仕方あるまい。」


父親が苦渋の表情を浮かべながらも、フウライを認める。


「元気で過ごしているなら、それでいいよ。」


母親が窓の外をみながら、少しだけ微笑んだ。

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