回収
ドラゴとフウライが神殿上空に穴をあけた日の夜。
神殿に昇る階段の前に、数人の人影が現れた。
先頭に立って階段の上を見つめるのは、髪の毛を結って後ろにまとめ、鋭いまなざしをもつリーダーらしき女性だ。
ブラウスとくるぶしまでのスカート、ブラウスは鎖のマークのボタンで止められている。
「では、回収を。」
そばにいる体格の良い回収チームの男性二人に、短く命を下す。
軽く頭を下げた彼らは、スルスルと階段を駆け上がる。
す、とドラゴとフウライに仕事を依頼した薬師と同じ治療院で働いていた、女性の薬師が前に進み出る。
「魔物の血は始末しました。
血によって大繁殖したウツミムシも、一度刺せば死ぬ虫です。
今後は増えることもないでしょう。」
リーダーらしき女性は口角を少しだけ持ち上げ
「誰も死ななかったと聞きました。
犠牲がないのに越したことはありませんからね。」
目を伏せて犠牲者が出なかったことを喜ぶが、病を流行らせたことに罪悪感はないようだった。
「あなたは、虫よけを使ったのですよね?」
少し眉をひそめ、心配そうに薬師に目を向ける。
「はい、私は無事です。」
にっこりと微笑み、リーダーの女性に言葉を返す。
病に倒れる村人をよそに、自分だけは希望を失わなかったようだ。
――神殿にて
回収チームは長い階段を音もなく一気に駆け上がり、神殿の奥へ進む。
「こりゃあ…」
「ボロボロだな。」
神殿の様子を見ると、あまりの廃墟ぶりに顔を見合わせる。
「参道もひどいが、神殿もひどいもんだ。」
少しの嘲りを混ぜて一人が笑う。
「捨てられた神殿なんて、そんなもんだろ。」
もう一人が興味なさげに返す。
奥に進むと、入口ががれきでふさがった神殿の前に立った。
「このがれきどかすのかよ。」
うんざりしたように肩を落とす。
「仕方ないだろ。そのための俺らなんだろうし。」
もう一人は腕まくりをして、がれきをどかす。
「あんまりどかすなよ。バレちまう。
知ってる奴はいないだろうが、念のため、な。」
にやりとして顔を見合わせると、中へ入っていった。
中はがれき以外には特にないように見えるが……
「あったぞ。」
打ち捨てられたかのように床に放り出されたそれを拾い上げる。
空の星がそのまま落ちてきたような形と輝きを持つ、黄色いかけら。
それは青や緑のそれと同じ質感を持っていた。
「これ…大丈夫なのか…」
二人はごくりとのどを鳴らす。
「だ、大丈夫って何がだよ。大丈夫だろ。
とにかく持って帰るぞ!」
震える手でかけらをしまうと、神殿を走り出て階段を駆け下りていった。
後にはかけらを失って、輝きをわずかに失った神殿がたたずんでいるだけだった。




