語られはじめた物語
「あら、いいじゃない。」
新しい服に着替えたフウライをみて、白ドラゴが満足そうにうなずく。
帝都から来た、洒落たデザインのシャツをまとうフウライ。
「鎖のせいでシャツは着替えられないのかと思ってたけど…」
白ドラゴがフウライのシャツを鎖部分で外したり、通したりすることで着替えているのだ。
もちろん仕組みは不明である。
「なんでもありだねぇ」
フウライがにぱっと笑う。
「深いことは考えない方が楽しいのよ。」
白ドラゴはさらりと流す。
「お似合いです!都会的ですが、旅にも対応できる最新のデザインなんですよ。」
衣料品店の店長らしき女性も楽しげだ。
助けてくれたお礼に、服は無料でいいという。
「本当にありがとうございました。」
「助かりました。」
「ありがとー!」
店の外に出ると、村人たちから次々と感謝の言葉を投げかけられた。
白ドラゴの周りには子供たちが物珍し気に集まってくる。
「あなたがたが、薬師を助けてくださったのですね。」
芯の強そうな、押し出しの強い女性が進み出る。
「この村の村長をしています。」
「今回の件は、村の存亡に関わることでした。」
少し眉をひそめ、悔しそうな表情を見せる。
「あなた方がいなければ、どうなっていたか…」
「本当にありがとうございました。」
にっこりと笑い、白ドラゴとフウライを見やる。
「祟りを恐れ、神殿を放置したのは私たちの判断ミスでした。」
鋭い光が村長の目に宿る。
「これからは参道を整備し、神殿を直して観光にも力を入れていこうかと思います。」
と言って頭を下げた。
「すごいわねぇ…」
転んでもただでは起きない村長に、白ドラゴは感心する。
祟りがないのなら、美しい神殿やそこからの眺めは観光にうってつけだ。
薬師が薬草から虫よけを作ったことで、ウツミムシもよっては来ないだろう。
「村へは、お好きなだけ泊まって行ってください。」
そういうと、頭を下げて足早に立ち去って行った。
白ドラゴとフウライは、その言葉に甘え、2,3日の滞在を決め込んだのだった。
翌日――
「さぁさぁ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!」
「時は今、厄災と呼ばれたドラゴンと、ドラゴン退治の勇者の熱い熱い友情物語!」
「笑いあり、涙ありのお芝居だよ!」
口上を述べながら、男性がチラシを配って歩いている。
宿場町で出会ったあの一座が、村にやってきたのだ。
「ああ、ドラゴさん、フウライさん!」
「やぁ、奇遇ですなあ!」
前より少し恰幅のよくなった座長が、足早に近づいてくる。
「お芝居の内容を少し変えましてな!」
とチラシを渡してくる。
前に見た時よりドラゴに近くなったドラゴンと、フウライに近くなった勇者が書かれていた。
端のほうには白ドラゴまで書かれ、“ドラゴンの謎”とある。
「相変わらず、ちゃっかりしているというか…」
白ドラゴはあきれたように首を振るが
「あはは!なんかちょっと僕に似てるねぇ。友情だって!」
フウライは楽しそうだ。
「興行用のテントを購入しましてな!」
座長は胸を張る。儲かっているのだろう。
「村はずれでやっております。
よろしければ、見に来てください。
……もちろん、無料ですぞ!」
なにげなく無料を恩着せがましく言うと、それではと宣伝に戻っていった。
「せっかくだから、見てからいこっか!」
フウライは楽しそうだが、白ドラゴは苦笑混じりにため息をついた。




