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ドラゴとフウライ ― 旅の先にあるもの ―  作者: ナナマル
神殿編
50/58

陰りゆく神殿

フウライを乗せたドラゴは、ぽっかりと空いた空を目掛け、翼を羽ばたかせた。

既に慣れっこになっているフウライは、まっすぐに青い空を見る。


赤い矢のように向かってくるドラゴを見て、患者の家に向かっていた薬師は仰天した。


――飛べるとは言っていたが、ここまで鋭く飛んでくるとは…


だが、薬草が速く手に入るのは喜ばしいことだ。

足取りも軽く、ゆっくりと降りてくるドラゴに向かって歩き出した。


「無事でよかったです。」


地面に降り立ったドラゴとフウライに声をかける。

彼らが無事ということは薬草も無事だということに違いない。


「あ、薬師さん。お待たせしました!」


フウライがドラゴがぶら下げたバッグから薬草の袋を取り出し、薬師に差し出す。


「ありがとうございます!これで村人も治療が進むでしょう。」


ほっと息をつきながら、差し出された薬草の袋を受け取る。

それから、ふ、と顔を曇らせる。


「……あの、祟り、などはなかったのでしょうか?」


祟りがあると言われているせいで、薬草を取りに行くことができなかったのだ。

だが、彼らが無事なら、もしかすると――


「祟りなんぞ、あるわけなかろう。」

「馬鹿馬鹿しい。」


ドラゴが吐き捨てるように言葉を投げる。


「祟るのはいつだって人間じゃないのか。」

「我らのせいにするな。」


続いて投げられた言葉に


「確かに小島の時に僕を始末しようとしたの、人間だったしね…」

「恨みつらみは人間が持ってるものだし…」


小島での出来事を思い出したフウライが、ブルっと身を震わせてつぶやいた。


「あ……」


薬師は気まずそうに、何かを考えるかのように目線を下げて黙り込んだ。

やがて視線をドラゴとフウライに向けると、


「ありがとうございました。」

「では、これを元に治療薬を作ります!」


にっこりと微笑み、治療院へ歩き出した。


それから数日、治療薬のおかげで希望を取り戻した村人がちらほらと村に出てくるようになった。


「活気づいてきてよかったねぇ。」


フウライがのんびりと村の活気を喜ぶ。


「お店も開くようになるかな?」


通りを見やってから、白ドラゴに目線を移す。


「そうねぇ。でもほら、ちらほら開いてるじゃない?」


白ドラゴが指さすあたりは食料品店がある。

村に必要な食料品店や鍛冶屋はもう開いているのだ。


「そろそろ新しい服も欲しいしなぁ。」


口をとがらせて衣料品店を求めるが、おそらく開くのは最後のほうだろう。

家を出てからすでに3か月近く経っているが、着替えは途中の宿場町で買った1組だけだ。


「穴開いちゃって。」


ズボンの股のあたり、ドラゴの鱗がこすれるあたりに穴が開いている。

生地も薄くなってきているので、そろそろ買い替え時だろう。


「…あの、ドラゴさん、フウライさん。」


そんなやりとりをしていると、薬師がおずおずと話しかけてくる。


「薬草なのですが、足りそうにないのです……」

「あともうひと袋は必要なのですが、もう一度お願いできませんか。」


祟りがないとわかったとはいえ、疑う村人もいるだろうし、なによりそこまで動けるほど回復はしていない。


――またあそこ歩くんだ……


フウライは凹んだ表情を浮かべるが


「あら、いいわよ。我が木をなぎ倒したから飛んでいけるし。」


という白ドラゴにぱぁっと顔を輝かせる。


「そうだった!飛んでいけるね。」


白ドラゴは赤い鱗をまとい、フウライはいそいそとその背に乗り込んだ。


神殿に到着すると、フウライはあたりを見渡し、首をかしげる。


「ちょっと暗くない?」


以前と比べて、どこかしら違和感を覚えるのだ。

変に薄暗く、うすら寒い。


星がなくなったからだろう――


ドラゴはそんなことを思いながら、周りを見渡す。


「そうか?太陽が陰ってるんだろう。」


フウライに面倒ごとは不要だ。

村人が希望を取り戻せば、神殿もまたいくらか戻るだろうが……

ただ、希望を失ったウツミムシが少し活発になっているのが気になった。


「そう?……じゃあ、早めに摘んで帰ろうか。」


ぬぐえない違和感に戸惑いながらも、薬草を摘むのだった。

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