4-15
久しぶりに思いっきり体調を崩しました。
少し前から具合が悪かったのですが、大丈夫だろうと放置したせいでこの有様です。
皆さまもおかしいと感じたら早めに受診いたしましょう。
完治したわけではないので、すぐに更新速度が戻るわけではありませんが、少しずつでも書き進めていくつもりですので、今しばらくは気長にお待ちいただければ幸いです。
何だかよくわからないことになっている文字化けしたリザルト画面を見つめること数十秒。
俺はいつも通りに「さっぱりわからん」という結論を出し、こうなった原因を考えてみる。
明らかに未所持の武装よりも多い行数から、データ上にのみ存在しているNPC専用装備か、或いはナンバリングの壁を越えた可能性が真っ先に頭に思い浮かぶ。
ここまでは良い。
では、仮にナンバリングの壁を越えたとして、それをどうやって確認するのか?
普段から俺が手元に銃を出している時と同じ要領で一つずつ試していくのだ。
「地道な作業になるな」と思いつつ、まずは前作で真っ先に思い浮かぶ強力な武器を試してみるが……これは無反応という結果に終わる。
続いて使用頻度の高い武装を試したところで気が付いた。
(いや、レア武器からやるんじゃなくて低ランク帯から試した方が早いな)
無意識の欲望が勝った結果に俺は思わず苦笑する。
というわけで前作の初期武器を出そうと試みる。
その結果はというと――出た。
「壁を越えちゃったかー」
思わず地で呟いてしまう。
ということはこのバグった画面は五作目と六作目のリザルトが重なった結果ということか?
決めつけるのは早計だが、そう考えるの方が精神衛生上良いのは間違いない。
スコール1は兵士だからね、難しいことを考えるキャラではないんだ。
(ともあれ、だ。前作の武装が解放されたということは、だ……出てくるのか?)
正直武器の性能では最新作を超えるものがあった記憶がない。
何せ前作の相手は地底軍。
舞台が地底であるが故に崩落の危険がある武装は軒並み除外、或いは弱体化されたのがVS地底軍である。
当然支援砲撃や爆撃もなし。
但し、地底ならではのものも存在する。
それが乗り物だ。
巨大ロボットはないが、壁に張り付いたりする多脚型のビークルには何度もお世話になっていた。
問題があるとすれば、そのような乗り物が活躍する場がこのエデンには存在しないことだ。
一応重武装のビークルもあるが、どれも癖の強いものばかりであり、今の俺の武装ラインナップを考慮すれば、実用可能なラインの性能があるのは一つしかない。
それが重装二脚型決戦兵器「ギガンテス」である。
武装は大型ガトリングにロケット砲、近接武器としてパイルバンカーを装備した全長五メートル弱の頭部のない人型ロボットである。
当然ながらギガンテスを出すことはできなかった。
というかこんな狭い個室でそんなデカブツを出そうとするのがそもそも間違いである。
(でもさ、やっぱりロボットはロマンなんだよ)
正に場違いな試行を繰り返す俺は次々と未入手という現実に打ちのめされる。
あれだけ倒したのに前作解放の条件が厳しかったのか、リザルトを見る限りアンロックされた武装は決して多くはない。
次々と乗りたいロボットが未所持と判明する中、虱潰しに総当たりを始めた俺の思考が一瞬止まった。
「え?」
思わず出た声にベッドから立ち上がる。
ロボット枠で反応アリ――その事実が俺を訓練場へと走らせる。
急ぎ足で廊下を進み、誰もいない目的地へと到達した俺は天井の高さを確認し、それを具現化してみせた。
「……マジかー」
出てきたのはギガンテスと同じカテゴリの重装二脚型ロボット。
但しランクは上から数えた方が早い代わりに使い勝手はかなり悪い。
しかしそれはゲームでの話である。
「重装二脚型ロボ『タイタン』……使いこなせるか?」
俺はそう呟きながら「でもタイたんだしなー」と腕を組んで首を傾げる。
この「タイたん」の愛称で知られるこいつは前作の地底軍編で活躍することもある兵器である。
地底という閉所で使うには十分すぎるほどの火力と弾幕を形成できるのは良いのだが、如何せんエネルギー切れが早すぎるという欠点があり、使用する場所が限られる悲しき戦闘ロボットだ。
エモートに対応しており、搭乗時に使用することでこの重厚な見た目と裏腹にタップダンスを披露することからつけられたあだ名――それが「タイたん」である。
ちなみに武装は両腕にレーザーカトリング、両肩に拡散型レーザーキャノン、腰部ミサイルポッドの三種である。
移動と武器のエネルギーが同一であるため、バッテリーが切れると動くことすらできなくなる。
その癖エネルギーをドカ食いする兵装を二種類搭載。
これでは短期決戦以外の使い道があるはずもなく、ならばと瞬間火力に存在価値を求めるのであれば、重力砲やレーザースライサーに勝てるはずもない。
ましてやビークル枠を使用しているのでバトルアーマー状態と比較するのが妥当であり、そうなるとますます評価が微妙なものになってしまう
機体に乗り込んで戦う以上、その動作が隙となることは避けられず、中型のレーザー砲台を知る前ならばともかく、今となっては対小型の手札の一つ、というのが現在の俺の評価である。
では、この評価を覆す何かはあるのか?
俺が腕を組んでうんうん唸りながら運用方を考えていると突然声がかけられる。
「スコール1、それは一体何かね?」
振り向くとそこにいたのはローガンだった。
「何故こんな時間にこの場所に?」という疑問の視線にはすぐに答えてくれた。
俺が訓練場に入ったとの報告を受けて急いで駆けつけてきたらしい。
どうやら俺が何かしようとしていると思っての行動のようだ。
息を切らす老人を労わりつつ、俺はまずは目の前のロボットが新たに解放されたビークルであることを告げる。
「これが、か……」
ローガンは首を傾げながらタイタンを見ている。
まあ、気持ちはわかる。
結局のところ、戦争にこのような非効率な二足歩行ロボットは不釣り合いなのだ。
恐らくローガンの疑問は「この兵器はスコール1の世界観に合っていない」に尽きる。
なので俺は辻褄を合わせるように説明する。
「確か……戦闘開始初期に『固定砲台が役に立たないなら移動砲台にすればいい。それならば多少コストはかかっても最低限の回避能力も持たせてみよう』という経緯で開発されたものだった気がする」
実際、このタイタンは拠点防衛を目的として作られた機体だったはずである。
すぐにエネルギー切れを起こす欠点は供給可能な基地に配属することで補っていた、という設定があった記憶がある。
しかし「世界観のすり合わせが必要」というのは盲点だった。
(地底用の多脚型ロボットを出していたら辻褄を合わせるのが大変だったかもしれないな)
ギガンテスくらいの重装甲ならまだ正面から撃ち合えるだろうからどうとでも言えるが、入り組んだ地形と悪路を走破するための多脚型では、どんな戦場を想定して作られたものなのか説明が難しい。
いざとなれば「既存の作業用ロボットを改造したもの」とでも言えば大丈夫だろうが、適当な説明ではいずれどこかでボロが出る。
そちらの方も何か考えておかないとな、と新たな課題が出現したところでローガンへと視線を向ける。
すると一通りタイタンを調べ終わったローガンが残念そうな顔で目の前のロボットを見上げている。
恐らくこちらの戦闘では役に立ちそうになかったからだろう。
主任という立場にある以上、新しいものには目を向ける必要がある。
何せこんなロマン兵器である。
何かある、と思わせるには十分な理由だ。
しかし、このタイタンに見るべき点はなかった。
それは俺も納得のできる結果だ。
なので俺は記憶を頼りにタイタンのフレーバーテキストを要約してローガンに聞かせる。
「正直、出て来るまで思い出すことすらしなかった影の薄い代物だ。確か……エネルギー供給が可能な基地と接続することを前提とし、弾幕を形成して物量を押し止めることには役に立ったと何かで見た記憶がある」
「だから運用次第だろう」と付け加え、試運転をするために俺はタイタンに乗り込もうとする。
脚部にあるパネルをカバーを外して操作するとコックピットハッチが開く。
それに合わせてタイタンは片膝を床に着けて腕をこちらに向けて伸ばす。
その手に乗ってコックピットへと移動して中へと入る。
ポーカーフェイスだが、内心ではワクワクしながらハッチが閉まるのを座席に座って待つ。
ハッチが閉じると同時に周囲のモニターが一斉に起動。
ゲームでは何度も体験したが、この如何にも「ロボットに乗っています」という光景はやはり良いものである。
モニターに映る情報も俺は知るものであり、操作方法も恐らくは同じだろう。
そんなわけで外部スピーカーでローガンに離れるように言ってから一歩足を踏み出す。
それからガシャンガシャンと音を立てながら訓練場を歩き回る。
試運転で訓練場を歩いている間にローガンが的を用意してくれたので、ついでに攻撃力の測定を行う。
その結果は俺が知る攻撃力の十分の一が表示された。
一発一発の攻撃力が低いのでミサイル以外は二桁であり、この結果にはローガンの顔も渋い。
そんな彼を見て「地球の技術だけで作られたものだからな」とコックピットハッチを開き、顔を出して苦笑する俺に首を振るローガン。
「運用方は既に思いついているのだろう?」
ローガンの言葉に俺は黙って頷く。
信頼されているのだろうが、未だどのように使うか悩んでいる俺としてはその信頼が少々重い。
(幾らDPSが高くてもすぐに弾切れになるんじゃ使いどころが撃ち切り武器と被る。その上、戦場で悠長に乗り降りしてる時間があるかどうか……)
こうなると考えつくのは開幕全力でぶっ放すくらいである。
誰かに使わせる、という案もあったが……これを操縦できる者が一人でもいるのか、という話である。
そもそもタイタンに乗っても稼働時間が短いのだ。
(せめてギガンテスとまではいかないまでも「スペクター」や「アトラス」なら可能性はあるんだがなぁ)
実弾兵器がメインなのでこの二機ならば実用に堪え得る。
もっとも、他人に貸し出すくらいなら俺がビークル枠を使った方が効率は良いだろう。
試運転を終えた俺はビークルを解除してタイタンを消す。
一応機体から降りてから消したのだが……乗ったまま解除した場合も試した方が良いだろう。
新兵器を見たローガンはこの件をまとめると言って報告書の作成のため訓練所を後にした。
俺はもう少し訓練場で色々と試すつもりだったのだが、空腹を感じたので少し早いが朝食を摂ってから続きを行うことにした。
廊下を歩く人はまだいない。
こんな朝早くから働いている住人もいるが、廊下を忙しなく移動するような者はこの時間帯はいないようだ。
少し新鮮な気分で食堂へと到着した俺を待っていたのはディストピア飯――ではなく、酔いつぶれて眠っていると思しきデイデアラだった。




