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4-16

大分具合が良くなってきたので本格的に再開できそうです。

 眠っているデイデアラを見る。

 失ったはずの右腕はしっかりと存在しており、あの短期間で再生したことにエデンの技術力を改めて実感する。


(俺の時も気づけば生えてたんだよなぁ)


 いびきでもかいていそうな人物だが、それに反して静かに眠っており、俺も彼を起こすまいと静かに席に着き食事を始める。

 そうして随分と早い朝食を終え、席を立ったところで声がかけられる。


「声くらいかけろよ、スコール1」


 振り返るとテーブルに突っ伏したまま目を開けているデイデアラ。

 どうやら起きていたようだ。


「起きるにはまだ早いと思ってな」


 それだけ言うと俺はトレーを片づけ、何かあるのだろうと適当な席に着く。


「切り札について聞いたぜ?」


 どうやら滅殺ミサイルという手札を隠していたことについて言いたいことがあるようだ。


「実際に使用されたことがない兵器だったからな」


 期待外れだった場合のことを考えてのことであると伝えるとデイデアラは「そんなもんか」と兵器というカテゴリの難点を理解したように頷く。

 実戦データがあるわけでもなく、理論値で語るには規模が大きい。

 実際に使用してシミュレートと結果が大きく違っていたのだから、これを公表して使用していた場合、味方に甚大な被害が出ていた恐れがあったこともデイデアラに伝える。


「それ、武器としてどうなんだ?」


 もっともな意見に何も言えない。

 黙る俺を見て察したデイデアラもそれ以上の追求はしなかった。


「そういう理由ならしゃーねーか」


 体を起こして頭を掻くデイデアラがぽつぽつと語り出す。

 今回の敵の数を聞いた時は流石に覚悟を決めたらしい。

 しかし実際は主力を俺が一人で抑え、残る第八期が担当した方面も苦戦はしたがどうにかなった。


「わかっていたなら、レイメルを戦場に出さずに済み、誰一人欠ける要素もなく勝っていた可能性もあった」


「足手まといのように言うのはよせ」


 俺がそう窘めるがデイデアラははっきりと「足手まといだ」と言い切った。


「スコール1、お前もわかっているはずだ。あのクソガキが健在、役に立つ状況ならいい。だがそうでないときは?」


「残念だが戦力にならん」と厳しい現実を突きつける。

 これには俺も同意せざるを得ない。

 ケイの防御陣地をリセットする時間稼ぎ――これが戦場で現状彼女にできる唯一と言ってよい仕事であることは否定しようがない。

 今回、そのケイの天敵となる機械型の中型がいたのだ。

 最初から出撃要員から外していた方が良い、という主張には十分な説得力がある。

 戦術としてセットで運用している以上、その柱が機能しないというのであれば、無駄にリスクを負う必要はない。

 しかし今回のような総力戦に近い状態ならば話は別だ。


(デイデアラの言いたいことはわかる。しかしなんだ……普段の言動に似合わず仲間想いなところがあるんだよなぁ、このおっさん)


 ケイの戦術を変えることで対応するにしても、そもそも防壁が簡単に破壊される以上は限界がある。

 デイデアラの言うことにも一理あるので何も言えない。

 なので反論はせず、俺は黙って立ち上がる。


「しばらく戦闘はないって話だ。ゆっくり休めよ、スコール1」


 俺は返事を手を挙げるだけに留めて食堂を後にする。

 これからエデンは橋頭保となる拠点を築くことになる。

 再びデペスが数を揃え、侵攻を始める前に仕上げる必要があるため、現場にはかなりの負担を強いることになるだろう。

 第二都市の再建が達成されれば、この戦いも巻き返しが見えてくると誰かが言っていた。


(確か……橋頭保が完成すれば滅んだ都市跡から資材を引っ張ってこれるかもしれない、だったか?)


 そうなるとますますジョニーの仕事が増えることになる。

 史上初の過労死した英霊にならないか心配である。

 まだ試していないことがあることを思い出した俺は訓練場へと戻る。

 その結果、俺はジョニーを心配できる立場ではなくなった

 出さなければよかった――後悔は後になって悔やむから「後悔」なのだ。

 それは紛れもなく搭乗できるロボットに浮かれ、他の確認を怠った俺のミスであり、エデンに来てからの最大の失敗と言えるものだった。




 時刻は昼を過ぎた辺り。

 ゲート前には大量の資材と完全防護の人員。

 運搬用のドローンも直ぐに到着するとのことであり、今は対デペスの結界装置の到着待ちである。

 何故俺がこんな場所にいるのか?

 彼らの護衛ではない。

 俺は今、建設作業員の一人としてこの場所にいる。

「どうしてこうなった?」という疑問の答えはただ一つ。

 俺が運搬用だけでなく、土木作業に適したビークルも所持しているからだ。

 あれから訓練場に戻った俺は他にも解放された武装はないかの確認作業の続きを行っていた。

 そこで出てきたのが「土木作業用のワーカーを改造した急ごしらえの拠点防衛ロボット」である。

 如何にもランクが低そうなこの前作に出てくるロボット。

 実際にランクは一番下であり、作業用の掘削ドリルがメイン武器の二足歩行型ロボットである。

 人が乗り込み、他の規格で製造された銃器を利用できる手を持っていたことでその役割を持つに至ったロボットなのだが、どういう偶然かこっちの工作機械も使用可能だった。

 当然人手不足、エネルギー不足のエデンがこれを見逃すはずもなく、俺は土木作業員としてこの中に混ざることとなった。

 その姿を見た現地での浄化作業員であるジョニーは親指を立て、温かい目で迎え入れてくれた。


「ようこそ、こちら側へ」


 その眼が語る雄弁な言葉に中指を立ててやりたいところだが、俺はただただ大きな溜息を吐くに留めた。

 それもそのはず、何せ俺の目的にも適うことと言われてはやるしかない。

 地球への帰還――それも俺が呼び出された時間軸から僅かにずらしてのもの。

 その要求を満たすためにはより多くのエネルギーを必要とする可能性がある。

 ならば都市の数を増やし、捻出できるエネルギーの総量を増やすことは決して無駄にはならない。

 そう説得されれば俺が動かない理由はない。

 いいように使われている感は否めないが、目的のためとなればスコール1としては拒否できない。

 それもこれもスコール1を演じてしまったが故の弊害である。


(今更だが、最初に全部ぶちまけていれば……いや、その場合は戦うことすらできなかったかもしれないな)


 そんなことを考えながら苦笑したところで結界装置が到着する。

 それを見て思わず俺は首を傾げる。

 予想以上に小さいのだ。

 魔法技術の産物なのだろうか?

 人の手で持ち運びが可能な正方形のそれを見て「本当に大丈夫なのか?」と疑いの目を向けてしまう。

 隣に来たジョニーも初めて見るものらしく、俺の表情から察したのか知っていることを話してくれる。


「何でも、人類が全盛期に作った今でも通用するデペス用の結界らしい。完成した時にはエデンだけになっていた、ってのが話のオチ」


 寄生体には通用しないが、微小サイズのデペス本体は通さない。

 その実績は千年であり、これを信用しなくてはそもそも今後の戦略が成り立たないそうだ。

 作るためには希少な素材を大量に必要とし、現在のエデンでは同じものを作ろうとすると都市の運営に支障を来す。

 なので新たな資材の確保先を手に入れる必要があったので、そのための橋頭保をまず作る必要があったのだと言う。

 ちなみにエデンの周囲が何もない荒野なのは既に再利用できそうなものを取りつくしたから、だそうだ。

 だが、ここで俺は思い出す。

 空から見た光景には都市跡と言えど、そのようなものは見当たらなかったはずである。

 その理由にもジョニーは答えてくれる。


「ああ、地上部分はデペスが踏み荒らすから荒野とほとんど変わんない。重要なのは地下だとさ」


 土木作業員スコール1、延々と敵地で穴を掘る未来を想像する。

 そんな俺の肩に黙って手を置くジョニー。

 仲間が増えたのがそんなに嬉しいのか、やつれ気味とは思えないほどいい笑顔をしている。

 全ての準備が整い、簡易拠点設営のための完全防備の部隊がゲート前に集まった。

 すると演説を始めるお偉いさんが登場して今回の目的を語る。

 それを要約するとこんな感じだ。

 最初に除染されたデペスの侵入を防ぐ拠点を作って資材を運び入れる。

 そこから徐々に拡張しつつ、防衛拠点へと作り変える。

 その後は内部を改装して北と東から資材を運び入れることを可能とする。

 なので重要なのは地下。

 時間の許す限り地下空間を切り取る、と熱く語りこのチームを鼓舞をする。

 沸き立つエデンの作業員を前に修羅場が確定した俺とジョニーは能面のような顔でゲートを潜る彼らを見る。

 時間の許す限り切り取る――その宣言はつまり普通の人間ならば過労死レベルの作業量を意味する。

 だがここに普通の人間とは一線を画す英霊という存在が少なくとも二人いる。


「これでもまだ、マシなんだぜ……?」


 そうポツリと呟いたジョニーの肩に俺はポンと優しく手を置く。

 ジョニー、お前がナンバー1だ。

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― 新着の感想 ―
 前話で出てきたエネルギー馬鹿食いの補給拠点セットの奴、セットなら装備の一部として拠点が出たりすれば資材の無限化は無理でもエネルギーの無限化は・・・できないですよね。
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