【2章 エピローグ】
「工場の修復の方は時間が掛かっているらしいですよ~。でも本格的な戦闘は山でよかったですね~。あっちは何とかなりますから」
鹿島先生は校長室でペットボトルに口をつけた。傾けると口の中に紅茶が流れ込む。
「職員室近くの自販機、別の会社に変えられませんかね。これ、あまり好きじゃないんですよ~」
校長が目線を書類から鹿島先生に移した。
「だったら食堂で買えばいいだろ」
「遠いんですよね~」
「じゃあ我慢しろ。それより報告はそれだけか?」
「リアナさんの弟のダリア君ですが、少し揉めているらしいです。リアナさんは本国に送り返そうとしていたのに、公安のあの人が待ったをかけた。
工場も山も破損させたのに見過ごせない。ここは法治国家だぞ。服役するか賠償金を払えってね」
「委員長は何と言っているんだ?」
「それもそうだと、リアナさんを説得したみたいです」
校長は口元に手を当てて小さく笑うと、テーブルの上のコーヒーを飲む。
「彼には同情するよ。本来の役割の範疇を超えているのに、せざるを得ない。もっとも、彼の行動力がまねいた自業自得とも言えるけど」
「手伝ってあげたらどうですか~。そう思うのなら」
「自主性を重んじるのが、私の教育方針だ。彼がそれを望むのなら、私も手を貸す。まだ提案は来ていない。
それに今回の件は彼だから解決したと考えている。私達が矢面に立つのはもっと先だよ」
「それでは私もしばらくはゆっくり出来ますね~」
鹿島は腕を高く伸ばし背筋のストレッチをしてから立ち上がった。
「私はこれで失礼します。また委員長の周りで進展がありましたら、ご報告させていただきます」
鹿島は頭を上げると校長室の入り口に向かい、ドアノブに手をかける。校長はその背中に向かって言う。
「話が残っているのではないか。委員長では無く、君についての」
鹿島はゆっくりと振り返ると口角を上げて、柔和な表情を校長に向ける。
「何もありませんよ~。私の方は特に何も」
「そうかい」
校長は椅子を回してガラス窓越しに外を見る。
「最近、この街で再開発が盛んになっているようだ。このような時期は気を付けなくちゃならない。人が増えると、人と会えなくなるからね。
君も見落とさないようにね」
「ご忠告、ありがとうございます」
鹿島は今度こそドアノブを回し、校長室を出て行った。




