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高校生活は異世界人に囲まれて  作者: 出水 彰
第2章 スターテトラコルド
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【2章 最終話】 リアナは少年に恋をした

 どうやらリアナ様はあの少年に好意を持っているようだ。

 これは面白いことになったわ。


 私が運転しているその助手席で、リアナ様が鼻歌交じりに手のひらを眺めている。


 私の仕事の1つに、リアナ様をたぶらかす輩の排除も含まれているのだけど、これはこれで面白いから様子を見ていてやろう。


 そもそも、私の勝手な妄想の線も捨てきれないし、好意の深度が分からない。直接聞いても答えないだろうから、探りを入れてみるか。


「本日の騒動、相山様には大きな借りが出来ましたね。何をもって返されるおつもりで?」


「テェンツァルス王国としては、リアナ近衛騎士の称号という名誉を与えるわ。正式な手続きは国に帰ってからになるけれど、王国での自由が保障される」


「それは何よりも名誉です。それで、どこまで取り込まれるおつもりですか?」


「取り込むなんて嫌な言い方ね。でも正しい言い方でもあるわ。今後、委員長は必ず確保しておく必要がある。


 なぜならフューレ様をこちら陣営に留めて置く為の鎖になるわ。いや、委員長にしかフューレ様の鎖になりえない」


「そうですね。私も陰ながら見ておりましたが、フューレ様の言動を見るに、相山様を前提にしておられるようです。


相山様以外ではフューレ様を動かせない。そう考えておくのが賢明でしょう。

リアナ様は心当たりがおありでしょうか」


「わたくしにも検討が付かないわ。何かフューレ様の琴線に触れる部分があったのでしょう。2人は常に一緒にいる。羨ましい限りね」


「そのようです。ちなみにその羨ましいとは、どちらの側に立ってのお言葉ですか?」


「決まっているじゃない。いえ、決まっていないわ。まったく、何を言わせるの」


「申し訳ございません」


 くそ、惜しかったわ。急ぎ過ぎた。

 攻める方向を変えてみるか。


「ところで相山様には驚かされました。普通の人にもかかわらず、あれ程までに堂々と指揮を執っておられました。よほど精神が強靭なのか、何も考えていないのか」


「ミリアナ、委員長に対して失礼よ。あの方は一生懸命なのです。自分を犠牲にしてでもクラスを大切にして、そして自分よりも遥かに格上の相手にも臆さずに寄り添い、共に歩こうとする。

 簡単に出来ることでは無いわ」


「リアナ様も寄り添ってもらいたいですか」


「そうね。席が離れすぎているのよね。フューレ様が羨ましいわ、って何を言わせるの」


 なんだか相山様のことになると、リアナ様はちょろいわ。何を聞いても帰ってきそう。

 今も顔を赤くして、親指をこすり合わせてもじもじしている。こんなリアナ様を見るのは初めてだ。

本国ならば、絶対に他人に思いを察知されないように振る舞う。


 そんなリアナ様なのだけど、今のリアナ様は無礼ではありますが、なんだか可愛らしい。もっと見たい。


 それにしても完全にのぼせ切っているな。


「分かっているわよ。ミリアナはのぼせ切りやがって、これだから恋を知らないうぶな女はと考えているのでしょう」


 ついに恋って言ったわ。


「そうは思っていません」


「嘘ね。顔に出ているわ。何年の付き合いだと思っているの。認めるわよ。だって初めてなのよ。同年代で普通に接してくる男の子は。それに、私の手を握って引っ張ってくれた」


 リアナ様は周囲を引っ張る存在だ。だからこそ相山様というナチュラルな男の子相手に、どうしようもなく惹かれてしまうのだろう。

 

 これが邪な相手なら、国家転覆の危機に繋がりかねない。

 でも相山様はあまり深く考えて無さそうなのよね。それがよりリアナ様を刺激するのだろうけど。


「そうですか。それは宜しいことで」


「何よその反応は。わたくしの侍女なのですから、相山様と仲を深める為の、アドバイスはくれても良いのではなくて」


「そうですね。不躾ながら献言させて頂きます。仲を深めたいのなら、接点を増やせばいい。少しでも意識する時間を増やすのです。ただし、良い接点でなくては逆効果ですが」


「接点か。難しいわね。本国の状況を逐一説明されても、面倒でしょうし。担任の教員様にお願いして、隣同士の席に……。

 違うわね。どうしたら良いのよ」


 リアナ様が頭を抱えて悩んでおられる。面白いから見ていたいけど、お可哀そうだから助言をするか。


「ではまず直近のお会いする機会、感謝の言葉と共に名誉と地位を送るようですが、相山様はそれを貰って嬉しいのでしょうか」


「そうよね。委員長は喜ばないでしょうね。だって委員長様が持つ自由とは異なるもの」


「では、いかがいたしましょうか」


「わたくしからの個人的な贈り物を用意するわ」


「承知いたしました。明日にでも私が買い出しに行って参ります」


「その必要はない。わたくしが選ぶわ。委員長への贈り物なのよ。他人に選ばせるような女だとは思われたくないもの」


「では、どのような贈り物を?」


「そうね。高価な物は止めましょう。重い女だとは思われたくはありませんから。日常的に使ってもらえるものが良いわね。それならばわたくしも同じものを使えるものね。素敵だと思わない?」


 これは重症かもしれないわ。

 好意を向けた相手と、同じ物を使う。ストーカーになる前には、止める必要があるわね。


「受け手によります」


「そう。難しいわね。ミリアナはわたくしが委員長様との関係を深めるのをどう思う?」


「個人的には応援をしたいところですが、リアナ様をお守りする立場から言わせてもらうと反対です。

 相山様とリアナ様では、家の格が違い過ぎます。親密すぎるのも問題かと」


 それに相山様の本音の部分を知らない。いざ親密なって心が引き返せなくなった時、薄暗い世界の人との繋がりや、人間性や道徳心の欠如が発見されたとしても、リアナ様の心を引き離すのは難しい。


「理解しているわ。これは実らない恋だってんえ。それでも恋する心は許さるのではなくて? だってわたくしは学生なのだもの。青春に興じる権利はあるわ。


 3年間限定の恋。

 わたくしは国を治める者として、自由を盾にするわけにはいかない。私は国民に生かされている。その責任は果たさなければならない」


「理解しているのでしたら、私からは何も申しません」


 電灯の光が等間隔に薄暗い車内を照らす。


 ガラスに映ったリアナ様の表情は、先程までの緩み切ったものではなく、引き締まり何者をも見通すような鋭い眼光に戻っていた。


 リアナ様は何があってもその気高い精神をもって、責任から逃げ出さない。

 その美しさこそが私がお仕えし、敬愛するリアナ様だ。だからこそ私を含めた国民から支持を受け、愛されている。

 

 私とリアナ様の出会いから既に10年が経過している。10年間、リアナ様の苦悩と葛藤を間近で見ていたからこそ、敬愛するリアナ様の選択を私では口を挟めない。


 リアナ様はこれからも正しくあろうとするだろう。たとえ親族と敵対して、したくない決断に迫られても、自分を押し殺してでも正道を歩こうとするお方だ。


 これから先、国に帰った後、リアナ様はより辛い目にあわれるだろう。


 だからこそ私は思う。今ぐらいは楽しんでほしいと。

 3年間であったとしても、楽しい思い出があればリアナ様を強くなれる。


 その為にも、私は相山様という人間を見極めなくてはならない。彼がリアナ様の思い出に足る人物なのか。

 もしくはその先も……。


 それではリアナ様。私も一肌脱いで差し上げましょう。

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