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高校生活は異世界人に囲まれて  作者: 出水 彰
第0.5章+10章 恐怖の猛毒蛇!! 深緑の公園に怪蛇ツチノコは実在した!!
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【0.5章 3話】 長い話の容疑者M

 コンビニ店員の三島は相変わらずヘラヘラとしている。


「終わったっすか? 続き、言いますよ」


「待たせてしまってごめんね。では初めからお願い出来るかな」


「いいっすよ。あれは12時ごろっす。夜のっすよ。24時って言ったらいいっすか? 掃除を始める前だから、23時の最後の方っすね。そんな時間は客がいっつも客はいないんすけど、いや1人ぐらいはいるかな。まあ、昨日の夜は誰もいなかったっす。そんな時に急に自動ドアが開いたんすよ。あ、その時俺、レジにいたんすよ。何もすることは無かったっすけどね。そんな時に自動ドアが急に開いたんすよ」


 まったく話が頭に入ってこない。話の方向性や時系列が行ったり来たりして、焦点をぼやけさせる話し方だ。

 三島のタイムリミットまでに終わるのだろうか?

 

 初老の警察官は笑顔で相槌を打ちながら、三島の話を聞いている。さすがだ。


「俺、びっくりして。だって誰もいないんすよ。誰もいないのに開くわけないじゃないっすか。俺、昨日は心霊番組を見たから怖くて、そうだ。アルバイト仲間の酒井はこの近くで幽霊を見たって言ってたんすよ。だからコンビニにも現れたのかと俺、ビビっちゃって。これ彼女には言わないで下さいね。彼女の前では恰好を付けたいんで」


 お前の彼女もお前の心情もどうでもいい。どうせ、猫が入って来たんだろ。


「それで勇気を出して覗き込んだんっすよ。カウンターから身を乗り出して、自動ドアを上から下まで順番に見たんすけど、そしたらそこに猫がいたんっすよ。黒猫っす。俺、こう見えて小動物が好きなんすけど、猫とか犬とかハムスターとか。豚はにがってすけどね、へへへ」


 三島はケラケラと笑っている。初老の警察官は見事な愛想笑いを返した。


「それで猫がいたんすけど、その猫の左肩の辺りに白のハート型の模様が書かれていたんすよ。まさにこんな風だったっす」


 三島が初老の警察官が持つ写真を指差す。そこに写っている猫には、右側の肩の辺りに白いハート型の模様がある。


「逆じゃないかって思ったっしょ。これは自撮り写真っすからね。逆になってるんすよ」


 自慢げな三島の言う通り、写真はどうやら自撮りをしたもののようで、ケイの左手がカメラの方に伸びている。


 ケイの肩越しに木が見える、場所の特定は出来そうにない。後は右上に少しだけ真っ白な棒のような物が見切れているが、ピントが合っていないので何かはわからない。


 それにしてもケイがいい笑顔を見せている。別人ではないかと思えるほどだ。


「まさにこの猫だったんすよ。この猫がコンビニに入ってきたんすけど、可愛いじゃないですか。だから見ていたんすよ。客もいないっすから、追い出すのは勿体無いじゃないっすか。つらいアルバイトの癒しっすよ。あ、そうだ。その時は俺1人だったんすよ。夜なんで従業員は少ないっすよ。店長も俺に任せて、少しだけ外に出ていたんっすよ。それでずっと見ていたんすけど、猫が俺の方に歩いて来たんすよ。チョーカワイイと思って、俺も気が緩んでいたんすよ。あ、その時レジの両替をしていたんすっよ。急に客がいっぱい来ることも考えられるっすから。1000円札が残り少なかったんで、10000円札を1000円札にしようと思ってレジを開けていたんすよ。そしたらその猫がレジに上がって来たんすよ。撫でてやろうと思って手を伸ばしたんっすけど、するりするりと抜けられたんっすよ。猫って人間の思い通りにいかない動物っすよね。そこがカワイイんっすけどね。そしたらその猫が俺の腕を避けて、レジの前に行ったんすよ。それでパクリっす。40000円を咥えて、コンビニを出ちゃったんすよ。これが人間なら俺も黙っていないっすけど、猫っすからね。何が起こったかわからずに見送っちゃったんすよ。不甲斐ないっす。だけど困ったのが、その時は店内の監視カメラが不調で止まっちゃていて、俺の証言が正しいことを示せないんっすよ。本当に不甲斐ないっす」


 三島の口が止まった。やっと話が終わったようだ。

 どうでも良い話をダラダラと続けやがって。


「なるほど。24時少し前、お客さが誰もいないコンビニに猫が入って、1万円札4枚を窃盗した。店員は三島君の1人だけ。監視カメラも故障で止まっていた。この認識で間違いないかな?」


「そうっす。間違いないっす」


 初老の警察官がたった数秒で説明できた内容を、よくも長々と話せたものである。

 三島には彼女がいるとか、豚が苦手とか無駄な知識を得た。


「ありがとう。参考になったよ。相山君は聞きたいことがあるかい?」


 俺に話を振らないでくれ。三島が一瞬だけ俺を睨み付けた。そんな顔されても困るんだけど。まあ、振られたのなら何かしら答えないといけない。


「昨日は大雨が降っていましたので、地面がぬかるんでいたと思いますが、猫の足跡は残っていますか?」


 三島は眉間にしわを寄せた。


「残っているわけ無いだろ。知らないだろうけど、ちょくちょく掃除をしないといけないんだ。それとも俺を疑っているのか?」


 三島が急に高圧的な口調になった。三島みたいな不良に近い相手に凄まれるの、すごく怖いんだけど。やだなあ。


「そういう訳ではありません。猫の足跡が残っていたら、ケイの猫の物と照合が出来ると思いまして。猫は人間と同じように指紋がありますから。肉球にですけど」


「そうか」と三島は言うと納得したように、初老の警察官の方に顔を向けた。よかった。

 というか助けてくれよ。俺は一般人なんだぞ。雨井は遠くを眺めて、知らない振りをしているし。


「それでは三島君、今日はありがとう。改めて聞かせてもらうことがあるかもしれないから、その時は協力をしてくれるとありがたい」


「わかったっす。それじゃあ俺はアルバイトに行きます」


 三島はそう言うと、初老の警察官に一礼をして去っていった。

 人には二面性があり、相手によって態度を変えることは往々にしてあることだ。だけど三島のようにハッキリとした形で見せたら心証が悪くなると、考えないのだろうか。


「三島君に話を聞いたし、次はケイさんだね。ケイさんの元に行く前に、彼女の状況を教えておいた方が良いだろうね。歩きながらでも構わないかい?」


「はい。お願いします」


「ではこちらだ」


 初老の警察官は歩き始めたので、俺と雨井はその後を追った。


「ケイさんはこの公園内に仮設した部屋で事情聴取をしているのだけど、この写真を提出してもらって以降、口すら開いてくれなくて困っているんだ。


 動物の占有者はその動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。だけど現状は被害者の誰も賠償を望んでいない。


 だから僕としては話さえ聞ければ解放する予定なのだけど、ここまで固辞されるとそれも出来ない。だから相山君には、彼女の説得をしてほしいんだ。お願いできるかな?」


「構いませんが、俺とケイは仲が良いとは言えません。期待はしないでください」


「君は出来ることをしてくれたらいい。たとえ前進しなくてもね。この方法では前進しないとわかるからね。ところで彼女、名前は何だったか」


 初老の警察官は雨井を見ると、雨井は頭を下げる。


「雨井悟です。彼とは先程会いました。どういうわけか付き合わされています」


「ははは、それは災難だったね。となれば雨井君とケイさんは面識が無いのだね」


「はい。ケイさんとは会ったことがありません」


「そうかい。では本題に入ろうか」


 目の前には2台のユニットハウスが設置されていた。ユニットハウスは簡素な作りだ。壁は白色で簡易的なガラス窓があり、室外機が取り付けられている。

 2台ともカーテンが掛かっているので中の様子を見ることは出来ない。


「さあ、こちらに来てくれ」


 初老の警察官が扉をノックして「私だ」と言うと扉が中から開かれ、背の高い警察官が顔を出した。


「どうなさいましたか?」


「ケイさんのクラスメイトを連れて来た。話をさせてやってくれ」


 背の高い警察官は射貫くような目線で俺を見て来る。三島とはまた別の怖さがある。


「ではこちらに」


 背の高い警察官に部屋に促されるままに中に入ると、そこには道端に落ちている腐った生ごみを見るような、嫌悪感を前面に出した表情で俺を見るケイがいた。

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