表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生活は異世界人に囲まれて  作者: 出水 彰
第0.5章+10章 恐怖の猛毒蛇!! 深緑の公園に怪蛇ツチノコは実在した!!
17/123

【0.5章 2話】クラスメイトがそこにいた

 テレビで見たアイドルの天坂を思い出しながら、公園に発生した人だかりを眺める。


 事件からすでに半日、深刻な様子はない。むしろ警察官と野次馬が笑顔で話している。真剣さに欠けているようにも見えてしまう。


「相山君は今、大変な事件だと考えているかもしれないけど、そうではないんだよ。

 結論から言うと猫の仕業だったそうだ。そしてその猫の被害にあっていたのは、天坂さんだけではなかった。

 首を折られた石像に、頭から血を流して倒れた女性、レジのお金を盗まれたコンビニ。その全てが1匹の猫の仕業だったらしい」


 大きな新事実である。それならばあの光景にも納得が出来る。猫の悪戯に過ぎないのなら、凶悪犯がのさばっている訳ではないから、警察官も神妙な表情でいる必要が無い。


「だけど逆に興味が湧く」


「どうしてだい?」


「1匹の猫が起こしたいたずらで、これほどの被害が出てしまった。面白いじゃないか」


「そうかな」


「猫が何をしたのか、詳しく教えてくれないか」


「僕がかい? まあ、仕方が無いね。とは言っても、僕も警察官が話した内容を聞いただけだから、そんなに詳しくないよ。

 時系列順に言うと、まずはこの公園の近くにあるコンビニ、そのレジから猫が4万円ほどを咥えて逃げ出した。

 

 その後、公園に隣接している野外イベント会場で天坂さんが所属するユニットの、公開ミニライブを行っていたところ、猫によってぬいぐるみが盗まれた。


 ぬいぐるみを咥えた猫は、あそこにあるベンチの右端に座ると、ぬいぐるみを引き裂いた。別の女性がその猫に驚いて転んだ拍子に頭を打って倒れた。

 そして猫は銅像に登って首を折った。偶然通りかかったサラリーマンが、折れた首と倒れた女性を発見して事件が発覚した」


「右端ってことは、雨井が座っているあたりか」


「そうだね」


「それにしても、ライブをしていたんだな。見に行けばよかった」


「相山君は本当にこの町に住んでいるんだよね。人もいっぱい集まっていたし、話題にもなったと思うんだけど」


「はっはっは、家に引きこもっていたからな」


「聞きづらいんだけど、相山君はもしかして友達がいないの?」


「そんな憐れむような眼で見ないでくれ。友達はいるさ。イベントに興味がある友達がいないだけ」


「それならいいけど……。それじゃあ僕はこの辺りで帰らせてもらうよ」


 立ち上がった雨井の腕を掴む。逃がしはしない。

 俺は面倒くさがりであるが、それは1人の時に限定される。誰かが一緒であるのなら、俺は率先して前に出る性格だ。


 この事件は俺の知的好奇心を刺激するものだから、詳細を知りたい。だけど俺の性格上、1人になったら面倒になって帰ってしまうだろう。


 だから雨井に別れられたら困る。旅は道ずれだ。


「雨井はこれから用事があるのか?」


「いや、無いけど」


 雨井は眉根を寄せる。


「だったらこの事件について、もう少し何が起こったのかを知りたくないか? 雨井も時系列を話せるほどには興味があるのだろ」


「興味は、無くは無いけど。どうして君と行かないといけないんだ」


「袖すり合うも多生の縁というだろ」


「無理やりすり合わせて来たのは相山君だと思うのだけど」


 一向に手を放そうとしない俺に、雨井は観念したようで肩の力を抜いた。


「わかったよ。一緒に行くよ」


「まずはあの人だかりに行ってみよう」


 人だかりは思っていたよりも厚く、背伸びをすることで人の頭越しになんとか事件現場が見える。


 ここから見ていても何もわからない。俺は雨井の腕を掴むと「前に行こう」と言うと、雨井は嫌そうな顔をして「僕はここにいる、というのは聞き入れてくれないよね」と呟いて帽子のツバを触った。


 雨井の許可も下りたところで、野次馬を掻き分けて前へ進む。足を踏まれたり、肘で顔を押されたりされたけど、なんとか最前列に到着した。そこには黒文字で立ち入り禁止と書かれた黄色のバリケードテープが張られているので、ここからが規制線であるとわかる。

 

 振り返ると、雨井も帽子を押さえながら付いて来ている。


 規制線の向こう側には制服を着用した警察官いる中で、唯一私服の若者の姿がある。その若者は茶髪にダメージジーンズを履き、耳にピアスを着けている。明らかに事件の関係者である。


 となれば誰か。あの格好が許されるのは、芸能関係者かコンビニ店員だろう。そんなことを考えていると、ショルダーバックを肩に掛ける初老の警察官が、笑顔を見せながら若者に近づいて来た。


「【三島(みしま) 海斗(かいと)】君で間違いないね」


「そうっす。三島っす」


 三島と呼ばれた若者はニヤニヤとしながら、キツツキのように何度も小さく頭を下げた。


「わざわざ来てくれてありがとうね」


「大丈夫です。丁度これからアルバイトっすから。あ、アルバイトが1時間後なんすよ。入るのは10分前だから50分前っすね。50分で終わるっすよね。遅刻したらうちの店長怖いんすよ。唾飛ばしながら怒るんで汚ねえし。あ、これは内緒にして下さいね。ばれたら怖いんで」


 どうやら【アルバイト店員】のようだ。そうなると、4万円を盗まれた事件か。


 初老の警察官はニコニコとした表情で相槌を打ちながら、三島の捉えどころのない話を聞いている。

 頭に入ってこない三島の話が続いた後、初老の警察官はショルダーバックからA4サイズの紙を取り出した。


「この写真なんだけど、君が見た猫はこの猫で間違いが無いかな」


 初老の警察官はコピー用紙に印刷した写真を見せているようだ。だけど俺の位置からでは、三島の背中が邪魔をして写真が見えないので、他の野次馬に怪訝な顔を向けられながらも右に移動していく。

雨井は「すみません」と言いながら、俺に付いて来た。

 こういう気遣いは大切だ。俺も見習わなければならないな。


 それはそうと写真である。場所を移動したおかげで、遠巻きではあるがなんとか写真に何が書かれているか見える。

 その写真は飼い主と猫のツーショットのようだ。

 猫は黒猫で白色の模様があり、飼い主は笑顔の女性で……。


「ケ、ケイだ!」


 驚きのあまり、つい大声で言ってしまった。

 写真の女性は間違いようも無く、クラスメイトのケイだ。いつも不機嫌な顔をして俺を罵って来るケイが笑っている。


ケイも笑えたのか。


 俺の声を聞いた初老の警察官は俺を見ると目を細める。そしてゆっくりとこちらに歩いて来た。


 これはマズイ! 巻き込まれる。


 後ろに下がろうとするが、人の体にぶつかって下がれなかった。振り向くと、そこにはガタイの良い警察官が俺を見降ろしていた。


 この人、すごく目つきが怖い。

 絶対に逃がさない、そう目が語っている。


 そうしている間に、初老の警察官が目の前に立っていた。


「少し話を聞かせてもらっても良いかな? 彼女との関係を教えてもらえないかい」


 さすがに警察官に嘘をつくわけにはいかない。俺はこの世界の住民だから、国家権力に逆らっていい事は何も無い。


 これはしくじったな。


「俺はケイのクラスメイトで、委員長です」


「ほう、クラスメイトね」


 初老の警察官は目を細めた。


「えっと、ケイがどうしたんですか?」


「君のクラスメイトのケイさんが困ったことになっていてね。協力してもらえるのならありがたい。どうだい?」


 今日はお休みとはいえクラスメイトが困っているのなら、委員長としては助けざるを得ない。

 この件で学校に来なくなれば、校長に言われた全員揃っての卒業が叶わなくなる。


「俺は大丈夫ですけど、友人と一緒でして」


 雨井の肩を軽く叩くと、初老の警察官は雨井の顔をじっくりと見る。


「構わないよ。それでは入ってくれ」


 俺と雨井はバリケードテープを乗り越えて、規制線の内側に入る。


 気分転換の為に多田篠公園に来たはずなのだが、事件に巻き込まれてしまった。今の俺は面倒な事件で無いことを祈るしか出来ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ