14/123
【1章 0話】隠されたもの
私たちが住む町を出て、車を走らせること20分。街灯の一切無い山道を登っている。
私が彼女を探していると、同僚から場所を指示された。彼女ならそこにいる筈だと。だから私はこの誰も通らない山道を車で走っている。
しばらくすると路肩に止められている車を発見した。彼女は今日もあの丘で街を見下ろしているのだろう。
その車の後ろに私の車も止めて、懐中電灯を片手に山道を歩いていくと、彼女の姿が確認できた。
私は彼女の横に立って街を見下ろした。
煌々と光る円形の街。外周に隙間なく建てられた塀より外には、街の残骸があるだけで光は無い。私たちはあの中だけで生活を送っている。
「ねえ、この場所が好きなの?」
「あの街が嫌いなの。他人を信じられなくなった末路。科学の発展を閉じ込めた城塞都市にずっといると、息が詰まって逃げ出したくなる」
「嫌いな街なら見ない方が良いんじゃない?」
「目に焼き付けているの。嫌いでも私を生んだ街だから」
私も彼女も明日には世界を渡る。もしかすると帰って来られないかもしれない。私もこの街が嫌いだけど、離れるのが寂しいという気持ちはある。
「あなたに付き合うわ。あなたの気持ちが収まるまで」




