007 メルヘンメンヘラメランコリ
福山雅治の「想望」。
ちょっと男臭い曲だなと思った。
もちろん嫌いではない。
でも、思った。
そこまで積極的になれるのか?選ぶ自由、選ばない自由。
自分で選ぶ……正解も責任も全ては自分の中。
自由なのに。
「苦しい」
好きなんだ、君を。
ただ好きなんだ。
それだけなのに、どうしてこんなに難しいんだろう。
君を見かけると、少しだけうれしい。
だから、見ない。
見てしまうと、目が合うかもしれない。
目が合ったら、気づかれる。
気づかれたら、きっと迷惑だ。
そんなことを考えているうちに、君はもういなくなっている。
今日も、何もなかった。
夜、夢を見た。
君がいた。
少し先を歩いていた。
僕は、その後ろを歩いていた。
近づかない。
もちろん、話しかけない。
目も合わせない。
ただ、同じ道を歩いている。
それだけだった。
なのに、夢の中の街は不思議だった。
信号は、僕たちが近づくと青になった。
街灯には小さな花が咲いていた。
空には月が二つあった。
君の足元から、淡い光がこぼれていた。
僕は少し離れて歩いた。
それ以上近づくのは、おこがましい気がした。
君が振り返った。
ような気がした。
僕は慌てて目を伏せた。
見てはいけない。
そう思った。
でも、うれしかった。
それだけで十分だった。
朝、目が覚めた。
夢を思い出そうとした。
月が二つあった。
花が咲いていた。
君がいた。
……それだけしか思い出せない。
君と何を話したのか。
そもそも、話したのか。
一緒に歩いたのか。
僕が勝手についていったのか。
それすら、もう曖昧だった。
昼、君を見かけた。
僕は立ち止まった。
君は僕に気づかない。
当然だ。
僕は声をかけたことがない。
名前を呼んだこともない。
好きだと言ったこともない。
それなのに、胸の奥が、きゅっと縮んだ。
君が僕を嫌っているような気がした。
何もされていないのに。
何も言われていないのに。
勝手に傷ついた。
ポケットの中で、手を握った。
そして、ゆっくり開いた。
君が遠ざかっていく。
僕は追わなかった。
追ってはいけないと思った。
ただ、見えなくなるまで、その場にいた。
「好きなんだ、君を。ただ好きなんだ」
夜。
また眠る。
もし夢を見たら。
また君がいたら。
今度も、少し離れて歩こう。
触れなくていい。
話さなくていい。
目も合わなくていい。
ただ同じ夢の中にいられたら、それでいい。
そう思って目を閉じた。
明日もきっと、何も起きない。
それでいい。
それでも、少しだけ。
明日が来るのが楽しみだった。
作品、読んでくれてありがとうございます。
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