003 アニマル (R〇) 天王寺動物園
久しぶりに 天王寺動物園 に行きました。
はじめて動物園に来るという子と一緒です。
入口を入った瞬間から、その子の挙動が忙しい。
あっちを見て、こっちを見て、止まって、また動く。
気づいたら、少し前を歩いている。
「おっきい」
第一声がそれで、ちょっと安心しました。
ちゃんと、正しい順番で世界を見ている気がします。
自分の中にある動物園の記憶は、もう少し重たいものでした。
コンクリートに囲まれていて、少し湿っていて、独特の匂いがありました。
あの空気、少しだけ覚悟を持って入っていくような場所やった。
だから、今回の園内は、少し拍子抜けするくらいでした。
明るくて、きれいで、においも控えめ。
緑が整えられていて、普通に居心地がいいです。
ベンチに腰を下ろして、そのまま少しくつろぎたくなります。
……いいんですけど、いいのかこれは、とも思います。
自然っぽいです。
でもたぶん、かなり人の手が入っている。
檻(柵?)の中の動物たちは、えらく落ち着いています。
暴れるでもなく、媚びるでもなく、ただ普通に過ごしている。
のびのびしているようにも見えます。
餌はあるし、外敵もいないし、環境も整っている。
福利厚生だけ見たら、けっこうええ職場なんちゃうかな、と思います。
ただし、転職はできません。
それを天国と呼ぶのか、監獄と呼ぶのかは、少し保留です。
ガラス越しに、目が合った気がしました。
こちらが見ているはずなのに、向こうも普通に見ている。
ほんの少しだけ、立ち位置をずらす。
それでも、視線はついてくる気がして、結局こちらが先に目を逸らします。
あれ、どっちが観察しているんでしたっけ。
ふと気づきます。
同じ動物、反対側からも見られる構造になっています。
少し回り込むと、さっきとは逆の位置から同じ姿が見える。
構図は変わるのに、あちらのスタンスは変わらない。
どこから見ても、「別に見られてもいいですけど」みたいな顔をしています。
むしろ落ち着いていないのは、こちらです。
柵に寄って、ガラスに張りついて、スマホを構える。
気づけば自分も、同じ高さまで少し背伸びしていました。
わらわらしているのは、人間のほうです。
動物のほうは、その少し奥で、普通に生活している。
そのさらに奥には、街がみえます。緑の向こうに、あべのハルカス。ぐるっと歩いて、反対側にいくと通天閣。
位置関係はちゃんとしているはずなのに、空間の意味が、少し狂います。
一度立ち止まって、もう一度だけ見直してしまいます。
内側に動物がいて、その外に人間が集まって、さらに外を都会が囲んでいる。
一番内側が、いちばん穏やかそうに見えました。
大阪生まれなので、この景色にそこまで違和感はないはずです。
それでも、立ち止まると、少しだけいびつに見えます。
でも、完全に否定する気にもなりません。
横で、その子が言います。
「かわいい」
とてもシンプルで、でも、それでいい気もします。
その声につられて、こちらも少しだけ口元がゆるむ。
はじめての場所を楽しんでくれているのが、何よりよかった。
こういう場所は、やっぱり必要なんやと思います。
画面越しではなく、実際にそこにいるものを見ること。
大きさや動きや、空気ごと感じること。
それがどんなかたちであれ、「本物」に触れる入口になります。
入場料は、驚くほど安いです。
正直、「ほんまにこれでいいん?」と思うくらいに。
まあ、とりあえず、1回分のプチファンはしておきました。
軽い言い方ですけど、それなりに、いい時間でした。
帰り際、少しだけ振り返ります。
あの中にいたのが、どっちだったのか、少し曖昧になります。
見せていたのは、どっちなんでしょう。
仕事をしていたのは、はたして……。
『短い文章が好き。』
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
短くて小さな物語を、少しずつ投稿していきます。
笑える話もあれば、ちょっと考える話も。たまには、変な話も。
更新は不定期。
長い時間はいりません。
だいたい1分くらいで読めちゃいます。
「それでは、また」 by MMPP.K




