002 やっぱぼやけてるんかな
「やっぱぼやけてるんかな」
そう思いながら、今日も書類に顔を近づける。
近づけても、見えにくくなるだけだ。
遠くは見える。健康診断でも問題ない。
ただ、手元だけが少しずつ、もやっとなってきていた。
文字がにじむ。枠が小さい。書いているのに、ちゃんと書けているのか不安になる。
それでも「老眼」という言葉だけは、なぜか遠ざけていた。
認めたら終わりな気がしていたからだ。
ついに、モニターの文字がもやってきた。
同僚が笑いながら言った。
「それ、老眼やで」
冗談のように差し出されたメガネを、半信半疑でかける。
世界が、すっと切り替わる。
さっきまでぼやけていた文字が、そこにちゃんと存在していた。
あまりに簡単。
「……まじか?、今までの時間……」
次の日、100均で同じ度数のリーディンググラスを買った。
書類仕事のときだけ、それをかける。机の上の世界がくっきりと広がる。今度は、その外側がもやっとする。
「まだ大丈夫」と言い続けていた時間。
「あれ、ほんと無駄」
「白米……なんか白いもやっとしたもん口に運んでた」
メガネひとつで、世界は変わる。
そう。
必要なのは、認めるタイミングだけだった。
「みんな、そろそろかけてみたらいいんだよ!」
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『短い文章が好き。』
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
短くて小さな物語を、少しずつ投稿していきます。
笑える話もあれば、ちょっと考える話も。たまには、変な話も。
更新は不定期。
長い時間はいりません。
だいたい1分くらいで読めちゃいます。
「それでは、また」 by MMPP.K




