001 自動ドアにはさまれたい
夕方のコンビニ。
閉まりかけた自動ドアの前で、タイミングを測るみたいに立ち止まった。
ウィーン。
開く。
閉まる。
ウィーン。
また開く。
店員さんが、こっちを見ていた。
「……何してるんですか?」
少し笑いながら、レジの奥から声が飛んでくる。
「どうやったら、はさまれるねん」
店員さんは、吹き出すのを我慢するみたいに下を向いた。
「いや、そこなんですよ」
レジ打ちの手を止めずに続ける。
「最近の自動ドア、優秀すぎて、人類をはさまない方向に進化してるんです」
ウィーン。
またドアが開く。
半歩近づいただけで、先回りみたいに反応した。
「ほら」
「完全に警戒されてる」
店員さんは真顔で言った。
「たぶんもう、“要注意人物”として学習されてます」
「店に入れるのは?仕様か?」
「そうなんですよ。入店は許可されてるんです」
ウィーン。
ドアが静かに開く。
「でも、“はさまれたい人”としては認識されてない」
妙に真面目な口調だった。
「たぶん仕様ですね」
少し間を置いてから、
「防犯より先に、安全対策が優先されてるタイプの世界です」
そう言った。
「平和と行き過ぎた文明の象徴」
ピッ。
商品を通す音だけが響く。
「昔の自動ドアなら、たぶん一回くらいはさまれてたんでしょうね」
ウィーン。
また、先回りみたいに開く。
「でも今は、人を傷つけないことが最優先だから」
少しだけ笑う。
「その結果、自動ドアにはさまれたいっていう、小さな夢まで消えた」
「好き。」
店員さんの手が、一瞬だけ止まった。
「……はさまれるのが?」
「違う、あなたが」
自動ドアが開く。
ウィーン。
ガン。
「あっ」
一瞬だけ、店の空気が止まった。
自動ドアは、なぜか今だけ仕事をサボったみたいに、肩をちゃんとはさんでいた。
静寂。
「……」
「……おめでとうございます?」
店員さんが、困った顔で拍手をした。
『短い文章が好き。』
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
短くて小さな物語を、少しずつ投稿していきます。
笑える話もあれば、ちょっと考える話も。たまには、変な話も。
更新は不定期。
長い時間はいりません。
だいたい1分くらいで読めちゃいます。
「それでは、また」 by MMPP.K




