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奴隷転生〜ここから国を創るまで〜  作者: thread
自由への第一歩
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9/10

自由のための取引

翌朝。


 朝食を終えた後、リヒトはエレナに声をかけた。


「エレナさん。少しお話があります」


「何?」


「奴隷から解放していただきたいのです」


 エレナの手が止まった。


「……突然ね」


「前から考えていました」


「今の生活に不満があるの?」


「いいえ。食事も寝床も用意していただいていますし、魔法まで教えてもらっています。不満があるわけではありません」


「それなら、なぜ?」


 リヒトは一度息を吸った。


「自分の人生を、自分で決めたいからです」


 エレナは黙ってリヒトを見た。


「私は奴隷です。今の生活がどれだけ恵まれていても、エレナさんの所有物であることに変わりはありません。この先、何をするにもエレナさんの許可が必要になります」


「それが嫌なのね」


「はい」


 エレナは腕を組んだ。


「あなたを解放すれば、私は荷物持ちを失うことになるわ。新しい人間を雇うにも時間とお金が必要になる」


「それは理解しています」


「それに、あなたを買うために支払ったお金もある」


「その点についても、話し合いたいと思っています」


 リヒトは落ち着いた声で続けた。


「三年間、私は荷物持ちとして働いてきました。冒険の知識も身につけ、魔法についても学ばせていただきました。また、私が提供した情報の中には、エレナさんの役に立ったものもあったはずです」


「そうね。実際に役立ったものもあるわ」


「それらを考慮して、解放していただけないでしょうか」


 エレナはすぐには答えなかった。


 リヒトの言い分は理解できる。


 彼は三年間、指示された仕事をこなし、提供した情報にも価値があった。魔法を教えるという取引も成立している。


 しかし、解放するかどうかは別の問題だった。


「あなたが自由になった後、どうするつもり?」


「冒険者として活動するつもりです」


「一人で?」


「今のところは」


「この世界で生きていくのは簡単ではないわよ」


「分かっています。それでも、自分で選んだ道を進みたいのです」


 エレナは窓の外へ視線を向けた。


 彼女自身、かつては自分の人生を他人に決められることに反発し、家を飛び出した。


 だからといって、リヒトの要求を感情だけで受け入れるつもりはない。


 彼を解放することが、自分にとってどのような意味を持つのか。


 それを考える必要があった。


「少し時間をちょうだい」


「分かりました」


「明日、返事をするわ」


 リヒトは静かに頭を下げた。


「ありがとうございます」


 その日の夜、二人の間にいつもと違う沈黙が流れた。


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