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奴隷転生〜ここから国を創るまで〜  作者: thread
自由への第一歩
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2/10

新たな生活の始まり



 奴隷商人との取引を終えた女性は、リヒトに視線を向けた。


「立ちなさい。行くわよ」


「……分かりました」


 リヒトは返事をして立ち上がる。


 女性の後を追いながら、彼は周囲を観察していた。


 奴隷市場の建物を出ると、そこには石畳の道が広がっていた。行き交う人々の中には、人間だけでなく、長い耳を持つエルフの姿もある。


 ここがエルフの国であることは、すでに周囲の会話から理解していた。


 しかし、今のリヒトにとって重要なのは国の名前ではない。


 目の前を歩く女性が、自分にとってどのような存在になるのか。それを把握することだった。


「名前は?」


 不意に女性が尋ねてきた。


「リヒトです」


「そう。私はエレナ。エレナ・クロムウェルよ」


「よろしくお願いします」


「別に仲良くする必要はないわ。あなたには荷物持ちとして働いてもらう。それだけよ」


 淡々とした口調だった。


 リヒトは彼女の言葉に特別な感情を抱かなかった。


 むしろ、曖昧な優しさを見せられるよりも分かりやすい。


「分かりました」


「話が早くて助かるわ」


 エレナはそれ以上何も言わず、再び歩き始めた。


 しばらく歩くと、街の一角にある宿へ到着した。


 エレナは受付で手続きを済ませ、二階の部屋へ向かう。


「今日からここで寝泊まりしてもらうわ」


 部屋にはベッドが二つと、小さな机が置かれていた。


「食事は私と一緒に取ること。仕事があるときは指示に従いなさい。勝手な行動はしないこと。何か聞きたいことがあれば、その都度聞けばいいわ」


「分かりました」


「それと、明日から冒険に同行してもらう。荷物を運ぶことが主な仕事になるわ」


「冒険、ですか?」


「そうよ。私は冒険者だから」


 エレナは腰にある剣へ軽く手を添えた。


「一応、Bランクよ。足手まといにならないように気をつけなさい」


 Bランク。


 その言葉の意味を、リヒトはまだ詳しく知らない。


 だが、彼女の実力を判断するには十分な情報だった。


「分かりました。できる限り努力します」


「期待しているわ」


 それだけ言うと、エレナは荷物を机の横に置いた。


 リヒトは部屋を見回す。


 自分専用のベッドがある。食事も与えられる。奴隷市場で想像していた生活よりは、ずっとまともだった。


 しかし、忘れてはいけない。


 自分はまだ奴隷なのだ。


 自由に外を歩くことも、好きな場所へ行くこともできない。


 今は何もできないが、状況を知ることはできる。


 まずはエレナという人物を理解すること。そして、この世界について学ぶこと。


 リヒトは心の中で、そう決めた。


「明日は早いわ。もう休みなさい」


「はい」


 こうして、リヒトとエレナの生活が始まった。

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