↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国家消滅  作者: Dar_3026
PR
14/30

第14話 送信

 告発文を書こうとして、最初の一行で止まった。


 残り十三日。

《政府は五千六百六十万人を見捨てる》では、誰もが知っている。

《国家消滅計画は違法だ》では、現行憲法上は違法ではない。

《すべて陰謀だった》では、嘘になる。


 俺は意見を書くのをやめた。


 七割から十七%までの公開資料。

改定ごとの理由。

保障区域の改善実績。

市内施設の終了予定。

匿名化した住民構成。

そして非継承人口の記録消去手順。


 数字と出典だけを、一つの文書へ並べた。


 表題は《国家機能継承計画・地域影響資料》とした。

告発とも暴露とも書かなかった。


 送信先は、近隣自治体の移行担当、地域医療団体、記者窓口、法律家の公開連絡先。

個人端末から送れる数には制限があったので、公開共有領域へ置き、リンクを送った。


 送信を押したのは午前二時だった。


 何も起きなかった。


 一分後も、十分後も、閲覧数はゼロ。

俺は端末を閉じ、眠れないまま朝を迎えた。


 出勤時には閲覧数が十七になっていた。

昼には二百。

夕方には一万を超えた。


 反応は、俺が期待した形にはならなかった。


《こんなの最初から公開されてる》


《今さら騒ぐ方が混乱を起こす》


《偽造された地域データだ》


《十七%を守るためには当然》


《消されるのは記録だけじゃない》


《投稿者は非継承の役所職員らしい》


 真偽ではなく、どちら側にいるかで評価が分かれた。

保障資格者は秩序を乱すなと言い、非継承者はもっと早く知らせろと言った。


 もっと早く。


 資料自体は八年前から公開されていた。


 午後、荒谷に呼ばれた。


 小会議室の卓上に、俺の作った資料が表示されていた。


「お前だな」

「匿名化しています」

「聞いてない」

「公開資料が中心です。

住民情報は人数と属性だけで、個人は特定できません」

「それも聞いてない」


 荒谷は監査記録を見せた。

制限資料へアクセスした職員番号、作業領域へ保存した時刻、外部共有リンクが作られた時刻。

俺の行動は一本の線になっていた。


「通報しますか」

「中央監査にはもう届いてる」

「処分は」

「まだ命令はない」


 荒谷は資料のページを送った。


「間違いが一つある。

診療所への医薬品供給終了は移行二日前じゃない。

最新通知で三日前になった」

「そこ?」

「事実を出すなら直せ」


 荒谷が何を考えているのか分からなかった。


「止めないんですか」

「もう送ったものを、どう止める」

「削除できます」

「削除すれば複製が増える」


 荒谷は会議室を出た。


 俺は日付を修正し、資料を更新した。


 その夜、最初の自治体声明が出た。


《国家機能移行に関する地域影響が再検証されるまで、当市は移行実務への協力を停止する》


 一時間以内に、十二の自治体が続いた。

深夜には三十九。

俺たちの市役所前にも人が集まり、職員へ協力停止を求め始めた。


 資料の閲覧履歴を確認すると、行政や報道以外の組織名があった。


 北関東地方防衛司令部。


 県警察広域警備本部。


 同じ資料が、武器と指揮権を持つ者たちにも渡っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。